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女装剤(ある女騎士の事情)  作者: 嬉々ゆう


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69/80

第58話 (コンフィの章)聖騎士リリーの事情 ――閉ざされた聖域

今回は、聖騎士リリーの視点のお話となります。


魔王討伐を前にして、本来ならば最前線に立つべき存在――聖騎士。

しかし、その力は今、とある“国”によって閉ざされていました。


狂信、傲慢、そして歪んだ正義。

その中で、彼女は何を思い、何を選ぶのか。


少し重めの回ですが、物語の核心に関わる重要な一話となります。


    ••✼••休暇残り3日••✼••


 ・⋯━☞バリヤージュ邸自室☜━⋯・



 シャ! シャーー!

 (カーテンを開ける音)


「アンビショーネお嬢様、朝ですよ!

 いつまで寝ているのですか!?」


「ふぅんむぅ~んもぉ~ディア?

 休みの最後の週は、

 ゆっくりするって言ったよね?」


「はい、確かにそう聞きました」


「じゃあ、なぜ起こすのぉ~~?」


「ですが、もう一の鐘から

 御着替4つは過ぎましたよ」


「そんなに?!」

 ガバッ! パタパタパタッ!……



 コンフィは、慌てて布団から飛び出した!

 ディアの言う「御着替」とは、約30分である。

 元々は、メーべがコンフィの行動パターンから、

 要する時間を基準にした「暗号」だったが、

 いつの間にか広く使われるようになっていた。


 この世界では、

 「一の鐘(日の出)、二の鐘(昼)、三の鐘(日の入り)」

 の、3つしか時間を報せる手段がなく、

 ギルドや學園などで使われる時計では、

 2時間に一目盛りの記しの時計が主流で、

 かなりアバウトな物だった。

 

 今現在ではメーべが作った、

 時を報せる魔導具「時具ときぐ」で、かなり時間に

 細かな活動ができるようになっていた。



「はい! アンビジョーネお嬢様」

 (コンフィにある魔導具を渡すディア)


「ありがとう ディア」

 パチン! キラキラキラ……



 今、コンフィが使用した魔導具とは、

 「美具びぐ」と呼ばれる浄化用魔導具で、

 メーべとヴェティーンとで、

 共同開発されたもの。

 見た目は、「二枚貝」の殻を使用したもので、

 殻の間に、

 「浄化魔法を込めた粘魔力」

 が入っており、

 貝殻をパチン!と閉じると、

 半径2m範囲内のものに、

 浄化してくれる、とても便利な魔導具である。


 そして、この魔導具の売上の1部が、

 ヴェティーンの口座に

 入るようになっていた。


 「メーべよ、あんた利用されてないかい?」


 と、問いたくなるが、

 お金に興味のないメーべにとって、

 そんな事などに、まったく関心がない。

 本人がそれで良いのならと、

 コンフィも黙っていた。



「ほんっとに、便利な魔導具ですわね?」


「そうなのよねぇ~?

 メーべってば、リーファー……

 ではなくて、ヴェティーンさんに、

 利用されている気がするのだけど……」


「アンビジョーネお嬢様、

 それは言わない約束では?」


「そーなんだけどぉーー!

 はあ……あの

 この先大丈夫なのでしょうか?」


「大丈夫とは?」


「ええ……。

 魔導具科︎︎の教官が飛び上がるほどの発明を、

 次々とするのは良いのですが、

 王家が囲んでなければ、

 今頃は悪徳貴族の餌食でしたわよ?」


「はぁ……まったくですわね?

 アンビジョーネお嬢様も、お目を掛けてあげて

 くださいませね?」


「もちろんですわ! あのはもう、

 我がアザミ女騎士団の庇護下にありますわ!」


「アンビジョーネお嬢様? あまり、

 ︎︎︎︎︎︎゛︎︎あの︎︎︎︎︎︎゛︎︎という表現はよろしくありませんわ

 なぜならアンビジョーネお嬢様も、一応は、

 メーべ様たちと同い歳という体なのですから」


「あはっ そうでしたわね……つい(汗)」



 そう。

 ついつい、メーべたちを子供扱いしてしまう。

 つい先日、49歳になったせいもあるだろう。

 なので、コンフィは今は16歳。

 だという設定を、忘れてしまうのだ。

 學園では、そうでもないのだが……

 

 とにかく、魔王との決戦にまでに、

 もっともっと強くなるため、

 これまで以上に精進しなければならない。

 なので今くらいは、

 つかの間の穏やかな一時を大切にしたい。

 もう、こんな日は来ないかもしれないから……


 そうこうしている内に、またもや王宮からの、

 緊急の信書が届いた。

 ――嫌な予感しかしない。



「アンビショーネお嬢様!

 王宮から緊急の信書が届きました!」


「「またぁ?!」」



 また? そう、まただよおぉい!

 どうせまた、あのナルキザ王子からの……

 

 いや、先日は魔王出現の報せだった。

 まさか今回も、何かヤバい事でも……



「緊急との事なので、お急ぎください!」


「あ、うん わかりましたわ」

 カサカサ……ピラッ


「なんと書かれておられるのですか?」


「……はぁ?! バカじゃねぇーのあの国!!」


「「はぁい?」」


「あ、えっと……ごめんなさい(汗)」



 思わず、ドゥークの素が出てしまった……(汗)

 今回もシェンブリィ王子からの手紙なのだが、

 内容が思わず叫んでしまうような内容だった。



「アンビショーネお嬢さま?」


「あ、うん! シェンブリィ王子が、

 アイヨス聖国に対して、

 魔王討伐に控えて聖騎士リリーと共に

 合同訓練を行おうと

 打診したそうなのですが…」


「「……はい」」


「我がアイヨス聖国の聖騎士リリーは、

 魔王討伐には出さない……と」


「「はぁ?! ばっかじゃねーのぉ?!」」


「お二人とも……(汗)」


「「失礼したしました……(汗)」」



 ディアともう1人の侍女ですらも、

 コンフィと同じようなことを

 叫んでしまうほど、アイヨス聖国は、

 どうやらアホなようだ。

 聖騎士リリーさえ居れば、

 アイヨス聖国だけは、助かる……

 と、思っているのかも?


 アイヨスのアッポケナスカボチャ共は、

 魔王と勇者の昔話を知らないのだろうか?


 「魔王と勇者の昔話」


 とは、魔王が現れたなら、必ず、

 「勇者か聖騎士」

 が現れ、その後には、必ず、

 「聖女」

 が現れるという。

 そして最後に最強の魔術師が、選ばれる。

 

 と、昔話では語り継がれている。

 なので、彼らが揃わなければ魔王は倒せない。


 たとえ歴代最強聖騎士といわれるリリーでも、

 たった1人では魔王に勝てるはずがないのだ。



「シェンブリィ王子は、もう一度アイヨス聖国に

 魔王討伐隊に、聖騎士リリーを加えるよう

 交渉してみるって!」


「「…………(汗)」」 


「そんな、無駄無駄~みたいな顔しないで(汗)」


 


 ・⋯━☞アイヨス大聖堂☜━⋯・


  ・⋯━☞王子の部屋☜━⋯・


「なぜ、わかってくれないのだ!」


「貴女こそ、なぜわからない?

 貴女は、聖騎士なのです

 聖騎士が居れば、国は守れる!」


「だから、私一人では無理だと言っている!

 貴方は、゛魔王と勇者の物語゛を、

 知らないはずはないだろう!」


「もちろん、知っていますよ?

 初代魔王と、初代勇者のお話……

 の、作り話ですね!」


「はあ? 何を言っているのだ!

 初代様の伝説を疑うという事は、

 創造神出鱈女神様自体を疑う事!

 なぜ、それがわからない?!」


「あーなーたーこーそ!

 なーぜーわーかーらーなーい!?

 出鱈女神などというふざけな名前の神など、

 この世に存在する訳がない!

 女神サンディエス様こそが!

 我らアイヨス聖国の民を選び、守り、尊び、

 そして導く、真の神なりー!!

 ふはは……はははははははっ!!」


「サンディエスなんて聞いたことも無い!

 そんなものは、貴方のお父上が勝手に

 風潮しているだけに過ぎない!

 なぜ、わかってくれないのだ!」


「わかっていないのは貴女ですよ!

 貴女は、我がアイヨス聖国さえ守ればよし!

 そして、我が子を産む!

 それ以外に存在価値などありはしないのだ!

 さあ、跪け! 詫びろ! 崇めよ!

 足の甲にキスをし、抱いてくださいと言え!」

 (両腕をあげて、腰を動かしながら迫ってくる)


「?!…………狂ってる」



 この、カリフラワーみたいな変な帽子を被り、

 前後に派手な模様の描かれた服装を、

 まるで、

 「チンドン屋のサンドイッチマン」

 みたいに着こなす、アッポチンな男。

 名前を、

 「ウエィスト・リー・カトベロス」

 という。

 一応は、このアイヨス聖国の王子……

 らしい。

 

 だが、変な国である。

 王として、

 プロミコス・ウダ・カトベロスがいて、

 王妃として、

 リクタトリア・アラゾリア・カトベロスがいて、

 王子として、

 ウエィスト・リー・カトベロスがいる。


 だが、国政を担う、宰相、摂政、執政官、

 これらの普通国を支えるはずである役職

 の者たちの姿がない。

 いや、元々居ないのかもしれない?


 マイーヤが、アイヨス聖国を、

 国として正式に認めていないのも納得だ。


 だからなのか、とにかく変な格好をしている。

 思わず、クスッ!と笑ってしまうような。

 

 なにせ、王子にしかあまり顔は合わせないが、

 もう、容姿といい、言動といい、

 ほんっとに、頭がおかしいとしか思えない。



「私は、魔導大国マイーヤの親善大使として来た

 貴方や、貴方の国のオモチャになるために

 来たのではない!!」


「そんな事など、どーでもいいー!!」


「……は?」


「お前は人ではない。

 我が血を残すための器だ!

 神に選ばれし我と聖騎士の血を引く我が子は、

 さぞかし高貴で尊い存在となろうぞ~!」

 (自分に酔いしれヨダレを垂らす)


「脳みそにカビでも生えてるんじゃないの?

 そんな事をしても、魔王には勝てない!」


「魔王? そんなものに構う必要などない」


「はあ? 何を言っているの?」


「だから、構う必要などないと言ったのだ!

 いや、むしろ構わない方がいい。

 さすれば魔王が、下衆な他の者たちを、

 下衆な国たちを、滅ぼしてくれるであろうぞ~

 そう、魔族と共生するようなマイーヤもな?」


「正気ですか? 下衆はどっちですか!

 私の故郷を見下す事は許さない!」


「ぬはははははっ! 威勢がいいな、うぅん?

 流石は下衆な国出身だけの事はある。

 お前なんぞ、聖騎士である事以外に、

 子を産む事しか脳のない下衆者が!」


「おのれ……おのれおのれおのれぇーー!!」


「ほほぉ? 剣を抜くか? 抜くがいい!

 だがその瞬間、お前の家族の首が即飛ぶぞ!」


「んぐぐ……卑怯者め……」



 実は、聖騎士リリーは、政略結婚として、

 アイヨス聖国に身一つで来た訳ではなかった。

 家族も一緒にアイヨス聖国に来ていたのだ。

 来ていたと言うよりも、

 無理やり連れて来られたと言うべきか。

 

 この様な事が起きれば、家族を人質にと、

 初めから企んでの事だったのだろう。

 腐りきっている。



「お前の家族だけでも助けて欲しいのなら、

 大人しく我の言うことを聞くことだな?」


「おのれぇ……どこまで汚い男なの?

 見るだけでも吐き気がするわ!」


「ぬははははっ! なんとでも言うがいい!

 お前は我に逆らう事などできないのだからな」


「ふん! どのみち、この国はお終いよ!

 どうせ私一人では魔王には勝てないのだから」


「まだ、そんな事を言っているのか?

 魔王になど構う必要などないと言うに!」


「この国に魔王が攻めて来たなら、

 戦うしかないではないか!

 何を、意味の分からない事をいうのだ!!」


「我がアイヨス聖国には、強力な魔導結界が

 張られている!

 たとえ魔王でも、破ることは不可能だ」


「あれは、危険だ!

 今すぐやめさせなければ、術者たちは、

 みな魔力を枯らして死んでしまうわ!」


「構わん!」


「……は?」


「構わんと言ったのだ!

 術者? あんなのは、ただの道具だ!

 代わりなら幾らでもいる!」


「腐れ外道め! 人の命をなんだと思って……」


「人ぉ? 人などいない。

 あ奴らは、ただの道具だと言うに~」


「お前、いつか刺されるわよ! きっと!」


「そんな事になどなりはせんわ!

 我には聖騎士が居るではないか? うぅん?」

 (ニヤリと笑い、リリーを指差す)


「私は、守るべき者を守る!

 お前のような腐れ外道など誰が守るものか!」


「なら、好きにすればいい。

 だが、その前にやるべき事はやってもらう」


「んなっ?! なら、私は必要ないのでは?

 こんな国など、守る気などはない……」


「何を言う? お前には我の子を産む役目が

 あるではないか?

 お前には、その価値しか無いと言うに……

 恨むなら己が聖騎士である事を恨むのだな」


「くっ!……殺せ」


「ぬははははっ!」



 なんか本当にムカつくコイツ!


 やはり、このアッポケ王子は、リリーを

 魔王討伐に国から出す気がないようだ。

 しかし、国には魔導結界が張られている?

 魔王がどれほどの力を持つのか分からないが、

 もし、魔王にアイヨス聖国以外の全ての国が

 滅ぼされたとしたら、どうするつもりなのか?



「ほんっとにアホね?」


「うむ?」


「もし、魔王がアイヨス聖国を残して、

 他の全ての国を滅ぼしたらどうするの?」


「なぬ? ぬははははっ!

 それこそ、成るべくして成る事!

 むしろ、魔王に感謝するべきところでは?」


「はぁ……ほんっ────とに、アホね!」


「貴様! 下衆の生まれのくせに生意気な!」


「はんっ! 何度も言うけど、

 私、お前たちのようなクズたちを、

 守るつもりはないから!」


「なんだと?!

 そんな事をしてみろ! お前の家族も……」


「同じことよ!

 もし私の家族に何かあったなら、

 私だって生きてはいられない……

 失う物を無くした者の強さを知るがいいわ!」


「ぐうう……」


「それに、聖騎士、聖騎士って言うけど、

 私が聖騎士になったのは、

 もう10年以上も前の話よ!

 今ではもう、とっくにピークを過ぎていて、

 次世代の聖騎士の方が私なんかよりも

 ずっと強いんじゃないかしら?」


「はあ? なん……だとお?」


「当たり前だろう!

 こんなキラキラした部屋に一日中何もさせず

 何年も何年も閉じ込めてばかりで、

 鍛錬も何一つされてくれないのに、

 私の剣術なんて廃れる一方だわ!」


「ぐぬぬぬ……貴様、それをわかってて……」


「あ、でも心配は要らないわ!

 お前たちを一掃するくらいなら、

 私一人で十分よ!」

 

「だが、万が一魔王がアイヨスに攻めてきたら、

 お前には魔王と戦ってもらう」


「そうね! 一応、私は聖騎士。

 聖騎士としての私の役目でもある訳だし?」



 その時、王子を呼ぶ侍従が部屋に来る。



 コンコンコン!


「なんだ!」


《マイーヤの第一王子が、ウエィスト様に

 緊急の面会希望とのことです》


「わかった! すぐに行く!」


《は!》


「ふん……いいだろう」

 トットットッ……パタン!


「っ……はぁ~~~胃が痛いわ

 おぅえっ……気持ち悪い……(汗)

 もう、二度と見たくない顔ね。」



 リリーは、政略結婚でアイヨス聖国の王子と

 結婚はしたが、契りはずっと拒んでいた。

 自分が聖騎士である以上は、いつかは魔王が

 現れることがわかっていたからだ。

 これは、

 「魔王と勇者の物語」

 にも、また文献でも記されてことである。


 だが、なぜか今回はかなりズレがある。


 魔王と勇者の物語や文献などでは、

 聖騎士か勇者が現れたなら、数年で魔王が

 現れるはずだった。


 なのに、自分が聖騎士に認定されてから、

 魔王が現れるまで、もう12年にもなる。


 何かがおかしい……

 ――まるで、誰かが“時を見送った”かのように。

 何もかもがズレている。


 リリーは、漠然と底知れない

 不安に苛まれるのだった。

 

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!


ついに登場、聖騎士リリーです。

……が、なかなかに過酷な状況です(汗)


そして今回、さりげなくですが、

「魔王と勇者の物語」にズレがあることが示されました。


本来ならば、もっと早く訪れていたはずの“その時”。

なぜ、12年もの空白が生まれたのか――


その裏側では、ある存在が“様子見”をしていたり、いなかったり……?


少しずつですが、世界の仕組みや歪みも見えてくると思いますので、

今後の展開も楽しんでいただけたら嬉しいです!


次回もお楽しみにですなのー!

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