第57話 (コンフィの章)魔王イランジェ誕生
今回は少しだけ視点が変わります。
この世界のどこかで、
静かに、そしてとんでもない存在が
生まれていました。
まだ誰も知らない、
もう一人の「魔王」の物語です。
・⋯━☞バリヤージュ邸門前☜━⋯・
「じゃあ、今日はこれで帰ることにするよ」
「はい……今回は、とても重要な事でしたので、
致し方ありませんわ」
「ありませんわ」
「そうだね でもまだ猶予はある……
それまでに僕たちがする事は一つ。
今よりも、もっと強くなること……」
「……そうですわね 頑張りましょう!」
「うん 君なら、そう言うと思っていたよ
じゃあ、また學園でね!」
「はい では、お気をつけて……」
「うん ありがとう」
トン…トン……カタカタ……パタン!
ガコン!……ガタガタ……
シェンブリィ王子は、振り向かずに
獣車に乗り込んだ。
そして、窓からコンフィをじっと見つめる。
「……」
(口をパクパクさせるシェンブリィ王子)
「…………?」
「…………(笑)」
(ニッコリ微笑むシェンブリィ王子)
「…………はぁ また、意味深な
演出するんだから、この人は……」
シェンブリィ王子が前を向き、
窓から身を引っ込めて見えなくなると、
獣車は王宮へと向かって走り出した。
ガラガラガラガラ……
「なんだか、静かな訪問の割には、
とてつもなく騒がしい内容でしたわね」
「そうですね お母様……」
「そうですね……」
「「…………」」
(複雑な表情のリアとメーべ)
今回の「魔王降臨」の騒動が、
まさかメーべの何の気ない発言が、盛大な
フラグになっていたとは、
この時は、誰にも予想できるはずがなかった。
(第39-10話参照)
・⋯━☞高次元☜━⋯・
「うふふふ さあさあ!
地球という星から、魔王になる魂を、
このアストランティアに落としてあげたわ!
猶予は3年よ! 精々頑張ってみなさいな?」
この世界の創造神「出鱈女神」が、
ほくそ笑んでいたのは、誰も知る由もない。
実は、この世界、
出鱈女神が創造した剣と魔法の世界、
「アストランティア」
とは、出鱈女神の暇つぶし
から創られた剣と魔法の世界である。
「アストラ」
とは、(星/天)を意味し、
「ティア」
とは、(断/層/列)を意味する。
つまりこの世界とは、
「困難を乗り越え、星を目指そう!」
という意味を込めた世界である。
人の子供が、水槽の中に土を詰め蟻を入れて、
蟻たちがどんな巣を作るのか?を観て、
楽しんでいるようなもの。
そしてそこへ、「別の蟻」を入れたり、
ときには、「角砂糖」を入れたりして、
蟻の巣や蟻たちが、どんな変化を起こすか?
それを観るのが、出鱈女神の楽しみである。
だが、ただ俯瞰するだけの出鱈女神だったが、
見るだけでは面白くない。
そこで、「魔王」という世界のバランスを
少しだけ崩す存在を投入することで、
この世界の人々がどのような動きをするのか?
それを観て楽しむのが、この世界の創造神、
出鱈女神自身の、
「娯楽」であることを、知るものは居ない。
••✼••数ヶ月前••✼••
・⋯━☞世界の辺境の地☜━⋯・
「ねえ、あなた、
この世界で、︎︎゛魔王︎︎゛をやってみない?」
「え? なになに?! なにここどこ?!」
「落ち着きなさい!
あなたは、地球という星のある世界から、
この世界、剣と魔法のアストランティアへ
私が、連れてきました~~~!
はい! 拍手ぅ~~~!」
パチパチパチパチパチッ!
「はぃいぃっ?! 嘘!!
どーゆーことぉ! 意味わかんない!!」
「はいはい! まったく地球の精神体は、
ほんっと煩いヤツばかりなのね?」
「はぁい? それ、どういう意味?
って、声からして、あなたは女の人?
声しか聞こえないけど、なんなの?
姿を見せなさいよ!」
「ふぅん……そうねぇ?
ある地球の精神体からは、
出鱈女神と呼ばれたわ!
だから私のことは、出鱈女神 と呼んでね!」
「えと、私の話し聞いてる?
デタラメガミ︎︎……って、えっと、つまり、
デタラメな女神様ってこと?」
「うふふ 名前なんて、どうでもいいのよ!
ただ、呼ぶときに便利なだけよ」
「!……はぁ、そうですか
で、私は、どうしてここに居るの?
地球から私を連れてきたって言ったわよね?
じゃあ、地球の私は……死んだの?」
「はい! 死にましたぁー!」
「うええええええ~~~!!」
「家庭用ゲームだっけ?
それの、や・り・す・ぎ・ね!」
「はぁい?! マジぃ!!
ああ……なるほど……
心当たりが、ありすぎるわぁ~~~(汗)」
地球から連れてこられた精神体とは、
地球の日本で、何日も寝ずにゲームのし過ぎで
死んでしまった、哀れなJKの魂だった。
ちょうど夏休みだった彼女は、
親からお小遣いを前借りして買った、
キャラメイクフリー、ジョブフリーの、
人生シミュレーションRPG、
「出鱈女神の駒となって、
あなたが主役よ!アストランティア!」
という名の、素っ頓狂なふざけたゲームだ。
「はぃっ?! ちょっと待ってよ!
ジョブフリーなのに、魔王?!」
「そっ! 魔王!
めちゃくちゃ強くなるように設定したからさ、
お願い! 最強魔王やって! ね?」
「はぁ~~~? 冗談でしょ?
初めて会うなり、魔王やれ? バカなの?
ヒロインとか、勇者とかならわかるけど、
なんで魔王? 敵役ってか、悪役じゃない!」
「あっ! この世界には、敵とか味方とか、
あと~~善とか悪とかは無いから!」
「はぁい?」
「それと、精霊にいつでも監視されてるから、
魔法で悪い事はできないからね!
精霊に悪い魔法は消されるからそのつもりで」
「はあい?! 益々意味わかんない!!」
「ま、そーゆーことで! じゃあ、頑張ってね!
あ、そうそう!
勝っても負けても、最後には必ず、
︎︎゛永久平和条約締結︎︎゛は、絶対だからね!」
「はっ?!……えいきゅーじょーだん?」
「永久に平和にしましょうってことよ!」
「へえ~~~もっと意味わかんないんだけど
魔王なら、世界征服しないのぉ?」
「だから、悪い事はしないって!
って、あなた、世界征服したいの?」
「え? うう~~~~~~ん…………別に?」
「でしょ? だから、あなたを選んだんだから!
あ、そうだ! あなたのお名前は、
︎︎゛イランジェ・レイ・デモニオ︎︎゛だからね!
という訳だから、じゃあねぇ~~~ん♡」
ぽひゅん!
「あ︎︎゛っ! ちょっと! ねぇ!
こらぁーーー!! デタラメガミめぇー!!
いらんじぇ? その後はなんなのー!
一度聞いただけじゃ、
覚えられないってばぁーーー!!」
と、自称「出鱈女神」という名の、
この世界の創造神らしいアホ女神に、
無理やり連れてこられたのだ。
地球での名前は、覚えていない。
ただ、出鱈女神に言われて、
ゲームのし過ぎで死んだ日本人JKらしい。
・⋯━☞どこかの森の中☜━⋯・
イランジェは、いつの間にか森の中にいた。
「ええええ~~~ここどこよぉ?
森の中? ぜぇーんぶ、木、木、木ぃ~!
なん~にも無いんだけどぉーー!
おーーい! デタラメガミ~~~!」
しぃ~~~~~~~~~ん……
「なんなのよもぉ! ケチぃ!!
神様のくせに、待遇悪いわねっ!
持ち物も何も無いみたいだし……
ふぇえぇえぇ~~~ん!
いったい、どうしろと言うのよぉ~~~(泣)」
イランジェは、とにかく歩き始めた。
持ち物は本当に何も無かった。
普通ゲームなら、とある国の王様に会い、
棒切れと薬草をくれるものだけど、
それすら無い、優しくないクソムリゲー!
「こんな、森の中で一人だなんて、
もし魔物とかエンカウントしたら、
一発アウトだわ!……ん?」
そうブツブツ言いながらも、思いついた!
「そうか! もし、ここが、
本当に剣と魔法の異世界なら、私にだって、
魔法が使えるはず!
しかも、魔王って言ってたわよね?
ってことでぇ~~~ここはテンプレの~~」
イランジェは、手を広げて前に突き出した。
そして、こう唱えてみた。
「……ステータス!」
フォン!……
「きゃあ! でたぁ! ホントにでたぁ!!」
イランジェの、「ステータス」の呪文で、
目の前にAR表示された、
ステータス画面が現れた!
「おおおっ! 触れる……けど、感触は無い
でも、操作はできるみたいね?
あれ? 考えるだけでも動かせるみたい!
なにこれ、超便利なんだけど!!」
ステータス画面は、手でも考えるだけでも、
ちゃんと操作できるようだ。
だが、よく見て驚いた!
「うええっ?!
まだレベル1なのに、基本ステ高あっ!!」
イランジェのステータス、まさにアホだった!
HP9999! MP9999!
から始まって、他全てが99!!
もう、カンストしてんじゃないの?
と、思うステータスだった。
そして、魔法欄には、
「創造魔法Lv10」とあった。
「なんなのよこれ?! あの阿呆女神!
これ、いくらなんでも、やり過ぎでしょ!
ん? でもこれ、どういう意味かなぁ?」
ステータス画面の一番下には、
注意書きみたいなのがある。
そこには……
「ええと?……
この世界では、基本なんでもできますが、
精霊によって監視されているため、
魔法で悪い事はできませ……んんん?
どゆこと?」
イランジェは、理解できなかった。
ちと、足りない娘かもしれない?
「ふん! なんだっていいわ!
とにかく、何かやってみよっと!
んんんん~~~何しよっかな?」
取り敢えず、足元の石っころを拾い、
ギュ!と握ってみる。
バキッ!!
「にゃ?! すんごぉい握力ぅ!!」
パラパラ……
手にした石っころは、ギュッ!と握っただけで
土団子のように粉々になってしまった。
まったく、アホげな力である。
そして今度は、右手人差し指を、
森の中へ向けて、こう唱えてみた。
「爆ぜろ!」
シュン!……スゥウゥウゥ~~~
「えっ?! なになに? 何が始まるの?!」
すると、突然頭の中に声が響いた!
『「殲滅魔法(爆ぜろ)」を創造しました!』
「はあい?!」
イランジェの右手人差し指の先から、
小さな光の玉が現れた!
そして……
ポン!……
「……えっ?」
ブォン!……ドン!(光の玉が飛ぶ!)
「きゃあ!!」
ギュウウゥゥーーーーン……
ドオオオオオオオオーーーン!!!
「きゃあああ~~~!!」
ドバァーン! ドスーン!
ドガーン! ドバッ!ズバッ!ズシン!
ドドドドドドドド……
バラバラバラバラバラ……
「…………………………………………へ?」
なんと!
イランジェは、ただ、「爆ぜろ」と、
言っただけなのに、森が一直線に消え、
遠くの山に巨大な穴が開いていた。
そして、
森の中の木々や岩などが、根こそぎ払われ、
粉々に飛び散った木々や岩などが、
バラバラと空から降ってきたのだった。
イランジェの頭の上に落ちてくる落ちてくる!
バラバラバラバラバラ……
「あててててっ! 痛いっ痛いっ!
っつぁ?! なぁん~~~じゃこれぇ?!」
バスケットボール大から、拳大の岩などが、
たくさん頭に直撃したが、痛みはあっても、
怪我などは、一切無かった。
「はは……はははは……
力も魔法も半端ない破壊力ぅ!
なんか、体も丈夫みたいなのね?」
イランジェは、驚いたのと同時に、
ワクワクしてきた!
そして、もう一度「爆ぜろ」を唱えたが……
「……もう一度……爆ぜろ!」
ピコン!
『精霊の判断で、︎︎゛悪い魔法︎︎゛と認識され、
今回の︎︎゛爆ぜろ︎︎゛は、キャンセルされました!
また、この魔法は危険なため封印します!』
「はえっ?! うそうそっ!
キャンセル? 封印? なんで!?」
精霊の判断で、︎︎「悪い魔法」と認識された?
ということは、出鱈女神が言ってた、
「魔法で悪い事はできない」
というのは、こういう事なのか……と。
なので、最初の「爆ぜろ」で、その魔法は、
「悪い魔法」と認識されたということ。
確かに! 大量破壊魔法だものね。悪いよね。
そう、イランジェは思った。
「この世界、面白いわね!
なんでも思い通りになるじゃん!
でも、悪い事は魔法でもできないみたいね?
それはそれで、なんかいいわね!
もしかして私って、この世界のチート?」
この世界に、新たな魔王誕生である。
この少女、名前を、ステータスでは、
「イランジェ・ロイ・ジャワーニア」
というらしい。
おそらく、出鱈女神が付けたのだろう。
「イランジェ」
とは、︎︎゛娯楽︎︎゛を意味し、
「ロイ」
とは、︎︎゛役︎︎゛を意味し、そして、
「ジャワーニア」
とは、︎︎゛行動︎︎゛を意味する。
つまりは、彼女イランジェとは、
「娯楽のために投入された駒」
と、いうことになる。
イランジェとは、この世界の魔王アルモニア
とは、まったく無関係の魔王なのだ。
ただ、日本での名前は、
思い出せなくなってしまったようだ。
でも、特に何も思わなかった。
だがしかし、既にこの世界には、
魔族領を統治する王、
「アルモニア・レイ・デモニオ」
が既に存在する。
彼女、イランジェとは、この世界にとって、
どんな魔王になるのだろうか?
第57話を読んでいただきありがとうございます。
ついに登場しました、新たな魔王イランジェ。
出鱈女神に振り回されながら、
とんでもないチート能力を持って
この世界に放り出された少女です。
そしてこの世界には、
既にもう一人の魔王アルモニアが存在しています。
二人の魔王が、この世界でどう関わっていくのか。
そして、コンフィたちの運命はどうなるのか。
物語はまだまだ続きます。
次回もよろしくお願いします。




