第49話 (コンフィの章)チビコンフィの涙のわけ
今回のお話は、チビコンフィのちょっとおかしな日常……
かと思いきや、少しだけ昔のお話も出てきます。
どうしてコンフィがコンフィになったのか。
どうしてディアが、あそこまでコンフィを大切にするのか。
そんなことが、少しだけ分かるお話です。
……とはいえ、やっぱりチビコンフィはチビコンフィ。
今日もどこかで、威厳を落としていることでしょう。
第49話
「チビコンフィの涙のわけ」
どうぞ、なのです。
・⋯━☞アザミ女騎士団施設☜━⋯・
・⋯━☞コンフィの部屋☜━⋯・
シャー! シャシャーー!
(いつものように、カーテンが開かれる)
「うっ!……眩しい……」
窓のカーテンを開けられ、窓から日差しが
差し込み、チビコンフィの顔を照らす。
「おはようございます アンビジョーネお嬢様」
「おはよう ディア」
この、コンフィ専属の侍女、
カルディア・アミ・スティアン
(心 友 支え)
コンフィがまだ子供のドゥークの頃からの、
専属の侍女であり、友であり、心の支え、
でもあった。
しかも、隔世遺伝の「魔女がえり」であり、
御歳100歳を超えていた。
なのに見た目年齢は、十代半ばの悪役令嬢。
今のコンフィと、変わらなかった。
とはいえ、今のコンフィは、チビコンフィ。
そんな二人の客観的なビジュアルは、
悪役令嬢と悪役幼女な二人だった。
しかし、なぜこのアザミ女騎士団施設に、
侍女のディアが居るのか?
今のチビコンフィは、騎士としての、
力や技は問題はなくても、身の回りの世話は、
どうしてもやりたいとのディアからの提案だ。
その訳は、コンフィがチビコンフィになって、
子供になったせいか、とにかく眠気が酷い。
夜には、日本時間で9時頃にはなると、
急激に眠気に襲われ、ほっぺをつねろうが、
お尻を叩こうが、もう目は覚めない。
そして朝も、日が登らなければ、
どうやっても起きない。
起きたとしても、うつらうつら……。
顔を拭き拭きされても、うつらうつら……。
着替えさせられても、うつらうつら……。
こうして今も、ベッドの上で髪を櫛で
とかれながらも、うつらうつら……。
時々、髪が櫛に引っかかり、首がグキッ!
ってなって、一瞬目がパッ!と開くも、
やっぱり、うつらうつら……。
ああ……あの威厳たるコンフィの姿は何処へ?
「はい! アンビジョーネお嬢様!
御髪は整えましたよ。」
「えう……はぅ……すん……ふん……」
パン!!(手を叩く音)
「アンビジョーネお嬢様あっ!!」
「みゃい!!」
「シャキッとしたくださいませ!
こんな調子で、女騎士団長が務まりますか!」
「はぁぃやい!!」
「さ! 食堂へ行きましょうか」
「はぅ……ふぅん……むん…………」
(やっぱり、うつらうつら……)
「はぁ……もぉ……よっこいしょ!」
フワッ……
どうやっても起きないチビコンフィ。
ディアは、仕方なくチビコンフィを、
お姫様抱っこで抱え、食堂へ向かう。
それでもチビコンフィは、
まるで操り糸の切れたマリオネットのように
ディアの腕の上で、ダラ~~~リ……
・⋯━☞食堂☜━⋯・
「「「「ザワザワ……」」」」
パタパタパタッ!
「皆様、遅れて申し訳ありません(汗)」
「「「「クスクスクス……♪」」」」
「……今朝も、チビデレ萌女神幼女アン様は
まだお眠なのー?」
「お眠なのー」
「んねぇ~~~?
メーべでさえ、起きてるのにねぇ~?」
「それ、どーゆー意味なのですなの?!」
「ですなの?!」
「うそうそ! ごめんごめん!」
「ぶぅ~~~」
「ぶぅ~ぶぅ~~~」
カタカタッ!……ストン!
チビコンフィは、他のメンバーたちとは別の、
特別に拵えられた背の高い椅子に座らされる。
普通の椅子だと、背が届かないからだった。
お子ちゃまだから。
「さっ! アンビジョーネお嬢様、
朝食のご用意はできていますわよ?」
「はぁう……ふぅん…………」
(うつらうつら……)
「「「「クスクスクスクスッw」」」」
クラッ!……ガクン!びちゃ!!
「ぶっ!!」
「「「「あ”あ”っ!!」」」」
チビコンフィは、結局目が覚めきれずに、
テーブルの上のスープの入った皿に、
顔を思い切り突っ込む!!
もう、見てられない、チビコンフィ。
女騎士団長としての威厳はダダ下がり。
でも、愛でる悪役幼女としての好感度は
なぜだか爆上がり。
「あらあらもぉもぉ!
シッカリしてくださいまし! お嬢様っ!」
(チビコンフィの顔を拭き拭き)
「えぶぇ…えぶぇ…えぶぇえぶぇ(汗)」
「「「「(;゜;ж;゜;);゜;ж;゜;);゜;ж;゜;);゜;ж;゜;)ぶっ!!」」」」
まったく、悪役令嬢なコンフィは何処へやら。
今ここに居るのはチビコンフィ。
独りじゃ何もできない悪役幼女。
フリージアとメーべは、
新しい何かに目覚めたらしい。
絶対的な愛でる推しに!
しかし、精神というのか思想というものは、
体に影響されるものなのか、チビコンフィは、
見た目通りの言動を期待通りにとるという。
見た目まんまの、悪役幼女である。
・⋯━☞訓練場☜━⋯・
「整列っ!」
ババッ!!
「「「「!!……」」」」
「アザミ女騎士団心得の条!」
「「「「我らは、アザミ女騎士団!
目指すは国一の女騎士団!
コンフィ団長と共に!!」」」」
「うん! 素晴らし……はっ!」
「「「「?!……」」」」
ヒラヒラヒラ~~~
(訓練場に入ってきた一匹のモンシロチョウ)
「ちょおちょさぁ~~~ん♪」
パタパタパタパタッ!
ズルズルズルズル~~~!
「「「「コンフィ団長ぉおおおーーー!!」」」」
ドタバタドタバタッ!
「アンビジョーネお嬢様ぁーーー!!」
ドタバタドタバタッ!
「ま、なぁ~にをやってんだアイツは?」
(いつの間にか居たリーファー教官)
「今日のチビデレ萌女神幼女アン様は、
ちょうちょを追って、訓練場を、
背中に背負った大剣を引きずりながら、
飛び出してしまったなの……まる」
「まるーなのー」
チビコンフィは、訓練場へたまたま
飛んできたモンシロチョウを追って、
訓練場を飛び出してしまった……。
そんなチビコンフィを見ていたメーべは、
メモ盤に、シッカリと記録しましたとさ。
後に、ディアに後ろ襟首を掴まれて、
親猫に後ろ首を噛まれて運ばれる仔猫のように
訓練場まで戻って来たとか。
そして、そんなチビコンフィの様子も、
メーべにシッカリと、メモ盤に、
書き残されたとか。
アザミ女騎士団施設では、
団員たちの訓練場のはずが、誰が見ても、
チビコンフィの、保育所と化していたとか?
訓練では、リーファー教官とフリージアで
問題なくこなせてはいる。
では、何が問題なのか?
チビコンフィは、今では精神がほぼ完全に、
「幼児化」してしまっていたので、
「元に戻る」という気持ちが湧かないのが、
大問題なのである。
時々思い出したかのように、普段のコンフィの
精神が戻るのだが、チビコンフィ化した時の
記憶がほとんど無いのもまた大問題である。
だが、コンフィには、もうすぐ49歳になる。
そんな歳になっても、未だに心に刺さる
ある想い出があった。
••✼••今から45年前••✼••
・⋯━☞バリヤージュ侯爵家☜━⋯・
「んぎゃあ! んぎゃあ!」
「赤ちゃん! 男の子? 男の子?」
「うむ……またか」
コツッ…コツッ…コツッ…コツッ………
「あ、あなた……ああ……うううっ……」
「奥様?!……」
「……?」
生まれたばかりの赤ちゃんを見てはしゃぐ
この少年は、まだ幼い頃のドゥーク少年。
丁度、チビコンフィと同じくらいの頃。
この日、バリヤージュ侯爵家に、
また新しい命が誕生した。
元気な男の子だった。
だが、この父親、
ゴヴェルノ・アグア・バリヤージュ侯爵は、
王家へ嫁がせるために、女の子を望んでいた。
また、ドゥークの母親、
ビゼット・アン・バリヤージュ侯爵夫人も、
女の子を望んでいた。
父親のゴヴェルノは、政治的な目的。
母親のビゼットは、愛する娘を。
結局、バリヤージュ家では、4人の男子しか
生まれなかったそうな。
そんな両親の気持ちになど知る由もない
次男のドゥーク。
ドゥーク少年は、元聖騎士だった父親に憧れ、
自分も聖騎士になりたいと夢見ることになる。
そんなある日なこと……
••✼••ある日の昼下がり••✼••
「母上ー! 赤ちゃんが笑ったよ!」
「……そう 良かったわねぇ ふふふ」
椅子に腰掛け刺繍を縫う母ビゼット。
その刺繍の模様は青のアザミであった。
「青のアザミ」とは、人に安らぎを与える。
その青いアザミ模様を縫う母ビゼットには、
「安らぎ」が必要だった。
だが、アザミには他に別の色があり、
また違う意味があるという。
紫色のアザミには、「厳格、気品」。
ドゥークが将来女騎士となって、
紫色のアザミをモチーフにした団章を
掲げることになるとは、誰が予想など
できたであろうか。
「僕、大きくなったら、きっと聖騎士になって、
赤ちゃんと、母上を守るからね!」
「!……騎士、騎士、騎士……
本当に男って、どうしてそんな野蛮な……」
「……………え?」
「お前は、どうして……
女の子に生まれてこなかったの?
そうよ! ドゥークも!
お前も、女の子だったら良かったのに……」
「!?………………………………え?」
「……はっ! ごめんなさいね?
今のは、違うのよ!」
「っ!……」
タッタッタッタッ……!
「あっ! ドゥーク! わたくしは……
違うのよ! ドゥークう!!」
・⋯━☞ドゥークの部屋☜━⋯・
その夜、ドゥークは眠れなかった。
なぜ、母上があのような事を言ったのか?
そんな理由など、わかるはずもない。
でも、自分は望まれていない気がした。
父上も母上も、露骨に女の子を欲しがる。
特に母上は、自分を女の子だったら
良かったのに……とハッキリと言った。
そんなドゥークを、いつも何も言わずに、
慰めてくれる存在がいた。
カルディア・アミ・スティアン
通称ディア。
ドゥークの専属の侍女だった。
ディアは、ドゥークを抱きしめ、
やさしく頭を撫でながら鼻歌で、
子守唄を歌ってくれた。
癒された。
母上も、もう二度とあのことを言わなくなり、
ドゥークの記憶からも、ずっと奥底へと
し舞い込むことができた。
思い出すことも、なくなった。
••✼••現在••✼••
・⋯━☞コンフィの部屋☜━⋯・
「アンビジョーネお嬢様?」
「すん……すん………」
「どうされました?(焦)」
「ぅえふっ! ふぇえぇえぇああん!」
「ほらほら 大丈夫ですよ?」
(チビコンフィを優しく抱きしめるディア)
「ふぅん……グスン!」
「んん~~~ふぅ~~~ん♪
ふぅ~~~んん~~~ん♪」
「!……その子守唄……懐かしい」
「そうですか? ふふふ
んん~~~ふぅ~~~ん♪」
「…………ディア……大好き」
「ありがとうございます
私も、アンビジョーネお嬢様が、
大好きですよ?」
「…………ふふ ディア」
「なんですか?
ふぅ~~~んん~~~んん♪」
………………
…………
……
「……すぅ……すぅ……」
「……クスッ おやすみなさい
アンビジョーネお嬢様」
今日も、チビコンフィは、
ぐっすり眠れそう。
••✼••翌朝••✼••
・⋯━☞コンフィの部屋☜━⋯・
シャー! シャシャー!
(いつものように、カーテンが開かれる)
「おはようございます アンビジョーネお嬢様」
「おはよう……ディア……あれぇ?」
「どうなさいましまか?」
「………………何これ?」
朝、目が覚めて、一番に違和感を感じた。
……おパンツに。
チビコンフィは、掛け布団をめくってみた。
そして、スカートも、めくってみた。
なんだか、ゴワゴワしたから……
バサッ!……ピラッ
「!………………何これ?」
「ああ、それはメーべ様からお譲りいただいた
”空間拡張型オムツ”に御座います」
「は?……お、おむ……オムツ?
今、オムツって言ったのかしら?」
「はい そう、ハッキリ!と、
《《オムツ》》と、言いました」
「おむっ………つ………なんで?」
「なんで、と申されましても……」
(気まずそうに目をそらすディア)
「あ、あの……でぃ、ディア?
わたくし、もしかして……お…お……」
「はい! シッカリお(ピー!)しておりました」
(されど、ハッキリ言うディア)
「∑(Ⅲ ̄□ ̄)……!!」
「でも、ご安心ください!
わたくしが、ちゃんと処理しましたので」
「ぎゃあああああああああ~~~!!
嘘ぉおおおおおお~~~!!
嘘と言ってぇえええええ~~~!!
シッカリって、なにぃいぃいぃ~~~?!」
なんと!
チビコンフィは、オムツを履かされていた。
それは、何を意味しているのか?
そんな事など聞かなくても嫌でもわかる。
『この、わたくしが、お(ピー!)してた? 』
チビコンフィは、朝一番に発狂した!
もうすぐ49歳中年オジサン見た目は悪役幼女。
この歳になって、お(ピー!)してしまうとは…
これほど、死にたくなるほどの羞恥心への、
配慮も気遣いもなく、ディアはサラッと言う。
ところが、そんなチビコンフィの声に、
他のメンバーたちが、コンフィの部屋へと、
ゾロゾロと集まって来る!
バタバタバタバタバタバタッ!
バタバタバタバタバタバタッ!
「なになに?! どうしたのですか?!」
「「「「アンお姉様?!」」」」
ガバッ!(慌てて布団を被る!)
「きゃあああああああ~~~!!
なんでもない! なんでもなぁーい!
なんでも、御座いませんわぁーーっ!!」
「「「「……はぁい?」」」」
(絶対にそんな訳ないだろって顔)
「ね! なんて事ないのよね! ディア?」
「はい! なんて事は、御座いません
ただ、今しがたお目覚めになられた
アンビジョーネお嬢様が、初めてオムツに、
お気づきになられただけで御座います!」
「ぎゃあああああああああーーー!!
それ、言っちゃだめぇえーーー!!
これ以上言ったら、もたないから~~~!!」
「アンビジョーネお嬢様!
ご心配なさらなくても、大丈夫でしたよ?」
「ディア? 助けてっ……(汗)」
(両手を擦り合わせて拝み倒すチビコンフィ)
「ふふふ ご安心くださいませ!
横漏れなどは、一切御座いませんでした!」
「そうじゃなぁああああーーーい!!」
「あー! それは、大丈夫ですなのー!
心配は、要らないですなのー!」
「ですなのー!」
「心配ないって、なにがっ?!」
「空間拡張型なので、最大馬車一台分の
(ピー!)を溜め込むことができますなのー!」
「できますなのー!」
「そこじゃなああああああ~~~い!!
馬車一台分って、なにっ?!
そんなに出るわけないでしょおー!!
ドラゴンじゃあるまいし!」
「(;゜;ж;゜;)ぶふぅっ! ドラゴンって……」
ついに吹き出すディア。
クールなディアを笑わせる事ができるのは、
コンフィだけだろう。
「「「「あははははははははっ!」」」」
「くっ!……殺してぇえぇえぇえぇ~~~!!」
はい!
49歳になる中身オジサン……オムツ使用。
もう、死ぬまでぐっすりと眠りたい……
そう、思ったチビコンフィでした。
第49話を読んでいただき、ありがとうございました。
今回は、チビコンフィのドタバタ日常回……に見えて、
実はドゥーク少年時代の、ちょっとだけ重たい過去のお話でした。
「女の子に生まれてきてほしかった」
その一言が、ずっと心の奥に残っていて、
そして今のコンフィという存在に、どこか繋がっているのかもしれません。
そして、そんなコンフィをずっと支えてきたのがディア。
主従であり、友であり、母のようでもあり、
この二人の関係は、物語の中でもとても大切なものだったりします。
……なお、そんな感動話の翌朝に
オムツで発狂する49歳元おじさん団長。
威厳とは一体。
次回も、アザミ女騎士団は平和です。




