第42話 (コンフィの章)暴走令嬢コンフィ
今回は闘技場での練習試合……のはずが、
コンフィの騎士魂に火がついてしまいます。
久しぶりの実戦に近い対戦にテンション爆上がり。
ついには「仇討ち」だの「決闘」だのと言い出して大暴走。
果たしてこの試合、まともに始まるのでしょうか?
・⋯━☞闘技場☜━⋯・
《実は、女騎士学部のリーファー教官からの
提案で、あのバリヤージュ嬢が、
スピアー騎士生徒と対戦!
と、することとなりましたー!》
・⋯━☞闘技場観客席☜━⋯・
「うええええええ~~~?!」
『うそー! きいてねーー!!』
「?!……なんですってぇ~~~?!」
「「「「うおおおおおおおーーー!!」」」」
「うそっ! やだやだやだっ!
こんなに持ち上げられたら………………
やるしか、ないじゃない? ふふん♪」
「……アンお姉様ん?」
リーファー教官とは、コンフィたちのクラス
女騎士学部の担任の先生である。
もちろん、教官をするだけあって、
在学の生徒の誰より強い。
男子騎士学部で優勝した、
マイデン・ピエス・スピアーよりも強い。
「アンお姉様!」
「うふふふふ……
面白くなってきましたわぁ~」
(もう完全に騎士モードのコンフィ)
「……アンお姉様?」
「「「「ザワザワ……」」」」
コンフィの騎士魂に火がついた。
やる気満々で、身体の奥からウズウズと
闘志が湧き上がってくる。
コンフィはやる気満々でウズウズしていた。
彼女は、男だったドゥークの頃――
バジリスク戦で戦死扱いとなり、
それ以来まともな実戦経験は無い。
なので、女の子になってしまい、パワーも
かなり低くなってしまってはいるが、
技術的には男の頃よりも上がっている。
そう、実感していた。
若い体。
軽い体。
スイスイ動ける体。
女騎士としては最高クラスなうえに、
今の自分の力と技を試したくて仕方がない。
なので、突然の指名だったので驚きはしたが、
またとないチャンスではある。
しかも、相手は今年上半期の優勝者。
力試しの相手としては、申し分ない。
いや、胸を借りると言うべきか。
単純に、女の力では男には勝てない。
だが、今の女の子の体で覚えた、
スピードと精度がものをいう、
自画自賛の「真空斬り」を試したい。
もう、わくわくが止まらない。
今のコンフィは、普段は見せることのない
「騎士の顔」になっていた。
「ふふふ……では、行ってきますわ」
「アンお姉様? 別に無理に行かなくても…」
「いえ、そうはまいりません!
挑戦されたら女騎士学部の代表の名をかけて、
わたくし引くわけにはいかないのです!
これも騎士としての心得のひとつ!」
(なにか違う気がする……)
「……はぁ そうなの……ですか?」
「ええ、もちろん!
でももし! このわたくしを女と見て侮り、
わたくしの顔を立てて、最後に負ける……
なんてことをするようであるのならば、
絶対に、容赦はいたしませんわっ!」
(それ、道場破りの心得ですから)
「…………はあ」
『アンお姉様の目付きが変わられた?』
と、そこへ魔術師学部のブースから、
メーべが駆けつけた!
タッタッタッタッタッタッ!
「ツンデレ萌女神令嬢アン様っ!」
「あら、メーべさん! どうなさいました?」
「今、あの、”ま教官”が言ってましたなの!
男子騎士学部の優勝者と対戦するなのと!」
「対戦するなのとー!」
「ええ、そのようですわね」
「アンお姉様? なにを他人事のように……」
「とになく、挑戦されたら受けてたつ!
ただ、それだけですわ!」
(我が技の力試しのための、ご都合主義)
「「!!……」」
『『挑戦された訳ではないのでは?』なの?』
「では、行ってまいりますわ!
おほほほほほほほほ!」
「「………………(汗)」」
『『キャラが変わってる?』なの?』
「ほほほほほほ……」
コツッ…コツッ…コツッ…コツッ………
「…………ほほ……」
『『行ってしまわれた』なの』
結局、フリージアはコンフィを
止めることを忘れ、そしてメーべは、
状況確認で納得する事ができないまま、
コンフィは、悪役令嬢になりきり、
闘技場へと向かってしまった……。
・⋯━☞闘技場への地下通路☜━⋯・
カッコカン! カッコカン!
カッコカン! カッコカン!
「「「「あははははっ! あははははっ!」」」」
「久々に実戦に近い対戦ができる!」
と、闘技場へ続く地下通路には、嬉々として、
スキップで舞走するコンフィの姿があった。
また、コンフィの狂気にも似た笑い声が、
地下通路の壁に反響して………不気味だった。
そして、しばらく経って……
・⋯━☞闘技場☜━⋯・
コツッ…コツッ…コツッ…コツッ…
《おおーっ! ついにっ!
アンビジョーネ嬢のおでましだぁー!!》
「「「「うおおおおおーー!!」」」」
「アンビジョーネ嬢だ!」
「女子騎士学部の天才令嬢!」
「男子優勝者とやり合う気か?!」
「「「「おおおおおおーーー!!」」」」
闘技場内にコンフィの姿が現れると、
また観客席は一斉に歓声を上げる。
「アンビジョーネ嬢!」
「あ、シェンブリィ王子
この度は残念でございました
仇討ちは、わたくしが必ず!」
(ですから武士の仇討ちではありません!)
《ぉおーっとぉ! ここでアンビジョーネ嬢、
なにやら意味不明な事を言い出したぁー!》
「「「「ワイワイザワザワ~~~」」」」
「え? ああ、いや、あの……仇?」
「…………?」
《ん? あの……もしもし?》
「では、スピアー先輩!
その胸、お借りいたしますわ!
いざ! この仇討ち、お受けくださいませ!」
「「うええええっ?!」」
すっぴょーーん!
シェンブリィ王子とスピアー先輩は、
コンフィの発言に驚愕し飛び跳ねた!
なにを勘違いしているのか、
コンフィは「仇討ち」と発言する。
シェンブリィ王子とスピアー先輩は、
ただ學園内の練習試合での勝負判定であり、
貴族同士のいざこざを治めるための、
勝てば存続、負ければ断絶。
のような、仇討ちではない。
と、言うか、コンフィはもう、
久々の実戦に近い対戦ができることで、
舞い上がってしまって我を忘れていた。
すると実況も、実況をやめて、
マイクで声を拾い始める。
「お、落ち着いてくれアンビジョーネ嬢!
これは、決闘でも仇討ちでもないから!」
「そそそっ、そうですよ!
私たちは、あくまでも練習試合を……」
シャイィイィ~~~ン……
《あっとぉ! ここでアンビジョーネ嬢は抜刀!
って、それ木剣じゃなく本物ですから!
誰だこの人に真剣持たせたのわーーっ!?》
(実況者もパニくる!)
「さあ! スピアー先輩! いざっ!」
(問答無用で大剣を構えるコンフィ)
「「∑( ̄□ ̄∑( ̄□ ̄Ⅲ)!!……(焦)」」
(コンフィ、マジヤバで危機感MAXな二人)
「さあ! さあさあさあさあっ!!」
(遠足前の小学生の顔のコンフィ)
「「落ち着いてくれ~~~!!」」
「さあっ! さあさあさあ……さあ!」
しぃ~~~ん……
カァーーーーン!
「ぎゃん!」
「「?!……」」
「「「「ザワッ……」」」」
(瞬時に静まり返る観客席)
バタッ!……
「「?!……(汗)」」
(一瞬、何が起きたのか理解できない二人)
シェンブリィ王子とスピアー先輩が見ると、
そこには、木剣を肩に担いだ、
鬼の形相のリーファー教官の姿があった。
木剣を肩に抱えての仁王立ち!
流石のシェンブリィ王子とスピアー先輩も、
縮こまるのだった。
「まっ! こら! ま、アンビジョーネ嬢!
お前はバカなのか? ま、バカだよな?!
ま、バカはバカでも、ま、いい加減にしろ!」
「頭、痛いですぅわぁ~~~(泣)」
ピクピク……
(頭を抑え、猫が獲物を狙う姿勢のコンフィ)
「「これは痛い…………(汗)」」
《うう~~~ん! 確かにこれは痛いっ!
アンビジョーネ嬢、痛恨の一撃を食らう!》
「「「「ザワザワザワザワ……」」」」
コンフィの暴走があまりにも目につくので、
見るに見かねた、リーファー教官に、
頭を木剣でこずかれたコンフィ。
だが、このお陰でコンフィの暴走は沈静化。
シェンブリィ王子とスピアー先輩は、
リーファー教官にだけは、逆らわない……
と、この時、本気で誓ったのだった。
「「「「ザワザワザワザワ~~~」」」」
「ああ、アンビジョーネ様ぁ!」
「なんて、お労しやぁ……」
「アンお姉様を、あんな哀れもないお姿に!」
「「これは、アンビジョーネ嬢が悪いと思う…」」
(ボソッと呟くシェンブリィ王子とスピアー先輩)
「ま、これに懲りて、ま、真面目にするように」
「すみませんでした……(汗)」
(正気に戻ったコンフィ)
「ま、ほれっ!」
ヒョイ!
「きゃあ!」
ストン!
「「「!!…………(焦)」」」
《でたぁー! リーファー教官の秘技っ!
アンビジョーネ嬢、クレーン起こしっ!!》
(今、考えた)
そして、リーファー教官は、
右腕で肘を伸びしたまんまで、
コンフィの後ろ襟首を掴むと、
まるで親猫が子猫の後ろ首を噛むように、
コンフィをクレーンのブームのように、
ヒョイ!と持ち上げ立たせた。
「なんて力だ!!…… 」
誰もが、そう思った。
そして……
「ま、続きをやってくれ!」
「「「(*゜Д゜)*゜Д゜)*゜Д゜)) 。_。)。_。)。_。))コクコクコクコク…」」」
リーファー教官のその言葉に、
シェンブリィ王子、スピアー先輩、
そしてコンフィもが、青ざめた顔をして、
激しく高速で何度も頷いた。
「……えっと、あの……
シェンブリィ王子と、スピアー先輩?」
「「……う、うん」」
「とりみだしてしまい、
申し訳御座いませんでした……」
「「いえいえ……(汗)」」
コンフィは、手を組み深々と頭を下げた。
コンフィの長くフワフワの縦ロールが、
フワッと、振り乱れる。
その瞬間、コンフィの甘い香りが、
シェンブリィ王子とスピアー先輩の
鼻をくすぐる。
シェンブリィ王子と、スピアー先輩は、
コンフィの甘い香りをお腹いっぱい吸い込む!
そして、トイレを我慢していた人が、
ギリギリ間に合った時のような表情になり、
天にも登るような気分で並んで脱力人形。
そして、はっ!と、
我に返ったシェンブリィ王子は、
なぜかスピアー先輩に向かってトバッチリ!
「この匂いは僕だけのものだからっ!
アンビジョーネ嬢は、僕の婚約者だからね!
スピアー先輩は嗅いだらダメだから!!」
「?!……わ、分かってますよ……(汗)」
(王子の異様ぶりにビビるスピアー先輩)
「……はぁい?」
(王子の発言の意味が理解できないコンフィ)
流石に実況も……
《何を言うんだこの人は……脳みそ沸いたか?》
と、言ってしまった!
すると今度は、シェンブリィ王子、
この不特定多数の面前で、
恥ずかしげもなく叫びやかった!
「アンビジョーネ嬢は、僕の婚約者だぁーー!
アンの香りは何人たりとも嗅ぐわせなーい!
何人たりとも嗅ぐわせなーい!
とも嗅ぐわせなーい
なーい」(こだま)
「………………(硬)」
(もう完全にフリーズのスピアー先輩)
「なぁーん言うちょんかぁ~~~?!」
(なぜか大分弁のコンフィ)
《うわぁーとぉ! シェンブリィ王子!
アンビジョーネ嬢への猛烈な独占欲に、
ついに、頭がぶっ壊れたかぁー?!》
(興奮のあまり不敬罪極まりない発言)
しかも、そんなシェンブリィ王子の声は、
実況マイクを通して闘技場全体に大音声!
堪らず、コンフィも……
「ぅぅううううう~~~んもぉ~~~!!
シェンブリィ王子のバカぁーーーー!!
王子のバカぁーーーー!!
バカぁーーー!!
カぁー」(こだま2回目)
……と、このコンフィの悲痛な叫びもまた、
実況のマイクを通して、こだました。
それと同時に、一部始終を見て聞いていた
観客席の大半の生徒たちのからの、
シェンブリィ王子への好感度が、
若干下がったのは、言うまでもない。
だがしかし、マニアックな生徒たちからの、
シェンブリィ王子への好感度が爆上がり!
そんなシェンブリィ王子宛に、
「自分にも自信が持てました!」
と、感謝の信書が山ほど届いたとか?
それもこの學園の七不思議でもある。
コンフィ、完全に戦闘モードでした。
久々の実戦に近い対戦ということで、
テンションが振り切れてしまったようです。
そして安定のリーファー教官。
この人だけは、誰も逆らえません。
さらに、なぜか壊れるシェンブリィ王子。
闘技場はカオスですが、
次回、いよいよ本当に試合が始まります。




