第40話 (コンフィの章)愛されすぎる悪役令嬢
今回は、アン様争奪戦回です。
フリージアとメーべ。
二人の推し愛が、ついに激突します。
しかし、当のアン様本人はというと――
相変わらず自分がどれほど愛されているのか、
まったく気づいていないのでした。
今日もアン様は、みんなに振り回されます。
・⋯━☞女騎士学部寮☜━⋯・
・⋯━☞コンフィの部屋☜━⋯・
「そうでしたわ……
わたくし、忘れていましたわ……(汗)」
「ぅゔゔゔゔゔゔゔ~~~…(睨)」
「うんにんにんにんにん……(睨)」
「うんにんにんにんにん…(睨)」
野良猫の喧嘩のように睨み合う、
フリージアとメーべ。
コンフィは、時々忘れることがある。
自分の実年齢は、もうそろそろ49歳。
なので、フリージアとメーべを見ていると、
無邪気な子供たちを見ているように、
ついつい彼女らを子供扱いしてしまう。
そんな自分も今では、ここ學園に通う、
彼女らと同い年という体で過ごしていること。
そんな歳上目線で見てしまうと、どうにも、
フリージアが少し歳上でメーべは歳下。
しかし……
「このお二人は、同い年だったことを……」
「アンお姉様ぁ? その言い方は心外ですわ!
それじゃあまるでわたくしが、メーべよりも
老けて見えるとでも、仰いますの?」
「あっ、いえいえっ!
そういう訳では、ございませんわっ(焦)」
(少なくとも年上に見えますことよ……)
「なんですの? んじゃあ、リア姉様よりも、
私が年下に見えるといいますのですの?」
「ですのー」
「いえいえいえっ!
決して、そうではございませんことよ(焦)」
(はい 年下に見えますの……)
「んんにゃああああ~~~フゥー!!」
「ふんぬぅうぅうぅ~~~にゅぅー!!」
「ふんぬぅ~~~」
「あははは……どうか、仲良くしてくださいな」
(忘れていましたわ このニ人同い年でしたわ)
そうなのだ。
見た目といい、言動といい、
フリージアの方が、メーべよりも、
年上に見えてしまうコンフィ。
フリージアはというと、
悪役令嬢の筆頭取り巻き娘。
メーべとはいうと、
ミニマムオタクヤンデレ娘。
確かにこの二人、最初は姉と妹のような、
ご関係でしたわ……。
でも今では、対等なご関係でありますの。
って、いえいえ、元から同級生なのですから、
どちらにしても、上とか下とかありませんわ。
なのに、どうしてこの様なことに……
今はこのお二人、睨み合ってますの。
ちょっと、困ってますの、わたくし……
なぜか、お二人は、わたくしのベッドに
押し寄せて来ますの……
正直、怖くて眠れそうにありませんわ。
「アンお姉様っ!」
「ひゃい?!」
ビクッ!
「ツンデレ萌女神令嬢アン様っ!」
「ツンデレアン様~~~」
「わっ! はいぃっ!」
ビククッ!
「「誰と一緒に寝ますの?!」ですの?!」
「ですのー!」
「いえ……あのぉ~~~……
お二人とも、各自ベッドに……」
『そんな誤解を招く聞き方は、やめい!』
「「嫌ですわ!」なの!」
「なのー!」
「あにゃあ?!………
どうして……どうしてこの様なことに?!」
・⋯━☞學園女子寮屋外☜━⋯・
《どうしてこうなりますのぉおお~~~?!
こうなりますのぉおお~~~
なりますのぉ~~~
ますのぉ~~
のぉ~》(こだま)
學園女子寮からは、
悲痛なコンフィの叫び声が響いたとか……
••✼••翌朝••✼••
・⋯━☞學園正門前☜━⋯・
「アンビジョーネ様、おはようございます!」
「おはよう……」
「おはようございます! アン様!」
「おはよう……」
「「「「…………???」」」」
「………………眠いですわ」
コンフィは、一睡もできなかった。
昨夜の一晩中、フリージアとメーべが、
コンフィを取り合ってもみくちゃになるわ、
プチメーベはコンフィのパジャマの中に
入り込んでくるわで、眠れないっちゅーねん!
「アンお姉様?
もっと、シャキッとしてくださいな?」
「そうですますの!
推しのツンデレ萌女神令嬢アン様っ!」
「推しのアン様ぁ~~~」
「んもぉ~誰のせいだと思ってますの~?」
「キッ!……(睨)」
(メーべを睨むフリージア)
「うんぬっ!……(睨)」
「うんむぅ~~~」
(フリージアを睨むメーべとプチメーベ)
「「~~~~~~(睨)」」
「「「「あはは~~~(呆)」」」」
(呆れるアン様をお慕い申し上げ隊)
「はぁ……先が思いやられますわ
なんだか生気を吸われている様な気がします
こんな事が、これからもずっと
続くのでしょうか……はぁ~~~」
コンフィの心配を他所に、
フリージアとメーべは、超元気!
二人して半喧嘩状態だったとはいえ、
どちらも、「アン様エキス」を、
たらふく十二分に吸収しているのだから、
もう、元気の元気! 元気ハツラツ!
お肌はツヤピカ! お目目はパッチリ!
その反面、コンフィはゲッソリヘトヘト……
そんな時に、コンフィにとって、
気まずくなる相手が……
「やあ! アンビジョーネ嬢 おはよう!
皆も、おはよう!」
「おいーーーーっす!」
「あ、お、おはようございます
シェンブリィ王子、アロガンス様」
(一応、シャキッとするコンフィ)
「……おはようございます」
「この二人が苦手なフリージア」
「……うんぬぅ~~~むむむむむ」
「うむむむ~~~」
(推しの敵!みたいなメーべとプチメーベ)
「みんなも、おはよう!」
「おはよーさん!」
「「「「おはようございます!
シェンブリィ王子 アロガンス様!」」」」
(普通に元気なアン様をお慕い申し上げ隊)
「うんぬんぬんぬん~~~」
「ぬんぬんぬん~~~」
(まだ睨んでいるメーべとプチメーベ)
「あはは……
そんな警戒しないでくれないかい?
ベルドランデ嬢と妖精さん?」
「私は、ツンデレ萌女神令嬢アン様の、
絶対的な守護者ですますの!」
「ですますのー!」
「それは、まあ……そうだねぇ……
でも僕はアンビジョーネ嬢の敵じゃないから
アンビジョーネ嬢の婚約者だからね?」
「あんまり、婚約者とは連呼しない方が、
身のためですますなの」
「身のためですのー」
「だからぁ~~~……」
「ん? なんだお前たち、仲が悪いのか?」
「そうじゃないさ……ただ……」
「……ただ?」
「いや、なんでもない」
「……ふん! よーわかんね!
じゃあな! アンビジョーネ嬢!
そして、その他、愉快な仲間たち!」
「「「「!!……」」」」
「あはは……じゃあね! みんなも」
「「「「……」」」」
愉快な仲間?
このアロガンスの発言に、
なぜか「アン様をお慕い申し上げ隊」の
アロガンス公爵令息ではなく、
シェンブリィ王子に対しての、
「好敵手度」が上がった……とか?
やはり、その訳とは、
シェンブリィ王子が、コンフィの
「婚約者」
という事実が大きいのだろう。
フリージアにとっても、メーべにとっても、
アン様をお慕い申し上げ隊にとっても、
コンフィは絶対的な推しの中の推しであり、
お姉様であり、天使様であり、女神様なのだ。
それを知らないコンフィ本人は、
幸か不幸か……少しばかり哀れでもある。
いや、知らない方が本人にとっては、
ある意味、幸せなのかもしれない……
それはそれとして、コンフィは心配していた。
フリージアとメーべとの今の友好関係だ。
どうも、お互いに邪険な気がするコンフィ。
今までなら、コンフィとフリージアの二人を
推しとして対応していたメーべだったが、
今では、コンフィを取り合う仲となっていた。
その雰囲気を、流石にコンフィも感じていた。
このまま、喧嘩する仲にならなきゃいいが……
その予感は、気持ちがいいほど外れた。
••✼••お昼••✼••
・⋯━☞大食堂☜━⋯・
「はい! アンお姉様ん あ~~~ん♡」
フリージアが、フォークに刺したお肉を、
コンフィの口元に運ぶ。
「あはは……えっと……あ、あ~ん……」
『恥ずかしい~(汗) でもこれ食べなきゃ
この二人の仲が悪くなるかもだし……』
まだ、フリージアの差し出すお肉が口に
入ってもいないのに、今度はメーべが、
フォークに刺したキノコを、コンフィの
頬にグイグイと押し付ける。
「はい! ツンデレ萌女神令嬢アン様、
ああ~~~んなの~~~」
「ああ~~~んなの~~~」
「え”っ?! ちょっ……メーべ?
いらい、いらい、いらいんれるれろぉ(汗)」
(痛い痛いと言ってるつもり)
「食べないんですなの?」
「食べないんですなのー」
「たべられらいわれるけろぉ?」
『そこはお口ではありませーん』
「「「「…………(汗)」」」」
フリージアは、お肉。
一方、メーべはキノコ。
肉食押し系女子フリージアに対して、
観察推し系女子メーべのキノコ。
食べ物にも性格がでるのか?と、
この時、そう分析していたコンフィだった。
「ちょっと、メーべ?
今は、わたくしのお肉をアンお姉様が
お食べになるターンですのよ? 」
「…………(汗)」
『ターンってなに?』
「それはおかしいのですなの
リア姉様は、さっき既に別のお肉を、
ツンデレ萌女神令嬢アン様に食べさせたなの
だから、次は私のターンですなの」
「ですなのー」
「………………(汗)」
『だから、ターンってなに?』
「うんぬんぬん~~~」
「むんむんむん~~~」
「むんむん~~~」
「あはは……はははは……(汗)
ちょっと、お二人とも……仲良くね?」
フリージアとメーべとの間に、
火花が散った様に見えたコンフィだったが…
「あ!……リア姉様?
その、虹のキノコは食べないですなの?」
「虹のキノコなのー!」
「え? ああ、実はわたくし、
あまりお野菜は好きではなくて……」
「……?」
「キノコは、お野菜ではなくてなの、
山菜に分類されるものなのですなの」
「あら、そうでしたの?
でも、どちらにしても、わたくしには、
苦手なものですわねぇ……」
「へぇ……」
『何でも食うと思ってた 意外~~』
「でゅわ、プチメーベに食べさせても
いいのですかなの?
プチメーベは、虹のキノコが大好きなの!」
「大好きなのー!」
「あら! そうだったの?
なら、はいはい、どうぞどうぞ!」
『やったわ! ラッキーん♪』
「ありがとうなのー!」
「ぅわーーいなのー!!」
(フリージアの皿から、
虹のキノコを取るプチメーベ)
「うふふふ……♪」
「えへへ……♪」
「虹のキノコ大好物なの~~~♪
はむ……はむはむ……♪」
(コンフィの頭の上で
虹のキノコを食べるプチメーベ)
「「「「………………」」」」
(あんなに小さな体なのに、よく入るな?
と感心するアン様をお慕い申し上げ隊)
なんだ、結局仲がいい二人じゃないか?
と、思ったコンフィだった。
すると、なんとなく食堂にいる人たち全員の
視線が自分に向けられていることに気づく。
「!……なに? なんなのです?」
「「「「……………………」」」」
「はむはむ……美味しいなのー!」
(相変わらずコンフィの頭の上で
虹のキノコを食べ続けるプチメーベ)
「………………おっと」
(プチメーベが落ちないように気遣うコンフィ)
「「「「……………………」」」」
「………………なの……なんでしょうか?」
「「「「じぃ~~~~~~~~~♡」」」」
「……………………あの~~~皆様?」
コンフィは、食堂にいる人たちは、
自分の頭の上で虹のキノコを食べている
プチメーベに注目しているのだと思っていた。
だが、事実はそうとは違った……
コンフィは、ただ、プチメーベが
自分の頭の上で虹のキノコを食べるのに夢中で
落っこちないように気を使うのに必死!
妖精なのだから、仮に落ちたとしても、
飛べるのだから、心配はいらないのだが……
なんとも、上目遣いで必死なコンフィが、
これが悪役令嬢と誰もが思った本人だろうか。
「おっ……おっとっとっ(汗)」
「……………………♡」
『はあぁあぁあぁ~~~ん♡
アンお姉様ん♡ なんてお優しいん♡
そして、なんてお可愛らしいお姿ん♡』
(♡がいっぱいのフリージア)
「~~~~~~~~♡」
『ツンデレ萌女神令嬢アン様♡
ツンデレ萌女神令嬢アン様♡
お可愛いですの♡ お可愛いですのー♡』
(やっぱり♡がいっぱいのメーべ)
「「「「~~~~~~♡♡♡♡♡♡」」」」
『アンビジョーネ嬢さまぁ♡♡♡♡」
なんてお可愛らしいお姿ぁ♡♡♡』
(更に♡がいっぱいの他の生徒たち)
その者の職業は、泣く子も黙る、
アザミ女騎士団団長アンビジョーネ。
されど中身は、厳格中年堅物オヤジ。
ここは學園、見た目は悪役令嬢。
けれども、ちょいと表情と目付きが緩むと、
誰をも慈しむ、聖母か天使か女神様か。
実は、食堂にいた人たちが注目していたのは
コンフィの頭の上のプチメーベではなくて、
コンフィ自身であった。
コンフィは、今日も気づかない。
自分がこの學園で、
最も愛されている存在だということに。
それに、気づかないコンフィは、
ある意味、今日も幸せなのであった。
「……………………♪」
『うんうん! フリージアとメーべは、
やっぱり仲がいいみたいで良かったですわ♪』
うんうん。
フリージアとメーべ、
仲がいいのは確かである。
第40話を読んでいただき、ありがとうございます!
今回はフリージアとメーべによる
アン様争奪戦のお話でした。
アン様本人は二人が仲良くしてくれていると
思っていますが、実際はというと……
推しの取り合いです。
それでも、どこか仲の良い二人。
この関係は今後どうなっていくのか?
そしてアン様は、
いつ自分が學園でどれほど愛されているのか
気づく日が来るのでしょうか。
次回もどうぞお楽しみに!




