第39-4話(メーべの章)妖精誕生
メーべの研究回です。
図書館の隠し部屋で、
ひとり震えていたメーべですが……
彼女は決意します。
「ならば作ればいいのですの!」
そして始まる禁断の錬成。
果たして生まれたものとは──?
・⋯━☞図書館個室☜━⋯・
「バレましたの……バレましたの……(震)」
ブルブフガタガタブルブフガタガタブルブフガタガタ……
この日、メーべは図書館個室で、
ひとりでブルガタ震えていた。
メーべは、告具を開発した本人だ。
なので、告具から感じられる、
魔力波の些細な変化の意味を理解できる。
魔力とは、この世界の者なら、
誰もが持つものであり、また、
各々の魔力にはそれぞれ波動があり、
全ての人の持つ魔力の波動には、
二つとして同じものはない。
それが、魔力を感知して特定の人物を
把握できるという訳である。
魔力を感知することで特定の人物を把握できる
ということは、些細な乱れも感知できる。
つまり、その魔力を持つ特定の人物のその時の
心境も分かるということである。
「怖かったんですの……怖かったんですの……」
ガサゴソガサゴソ……
メーべは、ウエストポーチ型の
マジック・バッグから、
コンフィにそっくりな、
3等身フィギュアを取り出し、
自分の頬に押し当てる。
「ふぅ~……ふぅ~……ふぅ~………」
しばらくそうしていると落ち着いたのか、
メーべはバッチリ目を開けて、
遠くを見つめるように視線を壁に向ける。
そして、拳を握りしめて、こう言った。
「でも、負けませんですの!」
この時、何かを決意したメーべだった。
・⋯━☞図書館隠し部屋☜━⋯・
「ふふふ……ふふふふふ…………」
ここは、メーべが學園の許可なく、
勝手に作ってしまった隠し部屋。
しかも、學園の建物を支える巨大な柱と、
壁とそして本棚との僅かな隙間にある、
「デッドスペース」を利用した、
「空間拡張魔法」を施した部屋である。
実はメーベは既に、「空間魔法」を、卒業後の
學院生になる前に、ほぼマスターしていたのだ。
なので、この學園に通う目的だった、
「空間魔法を習得するために學院生になる」
が、無くなってしまった……
でも、それ以上の目的ができた!
「ツンデレ萌女神令嬢アン様推し!」と、
「リア姉様大好きお手伝いしますですの!」が、
今後の學園に通う目的と変わってしまった。
実際には横1.5m、奥行2mほどの狭い隙間だが、
そこにはしっかりとドアが設置されており、
そのドアを開けると、
中はテニスコート半分ほどの、
広い空間となっていた。
そして中央の床には、
錬成用魔法陣が「マナハーブ」から作られた
魔法の赤いインクで描かれていた。
その魔法陣の東西南北にはペンタクル。
魔法陣の中心にも巨大なペンタクルが
描かれており、魔法陣の外側の円の周囲には、
魔法文字(日本語)で、
「大地と海と風と火の精霊たちよ」
「この円の中に力を注ぎ」
「術者の望みを叶えたまえ」
と、書かれていた。
メーべは、その魔法陣の円の中心に立ち、
今日まで苦労して集めた素材を、
円の中心に寄せ集める。
そして、錬成用の詠唱を始めた。
「我今、メーべの名において、
全ての精霊たちに願いたまわる。
我の魔力と血とを引替えに………………」
数分、詠唱を続けると、
魔法陣の外側の円が光り始めた!
パァーーーッ!
「ふふふ……ふふふふふ…………」
すると、メーべの胎内魔力が魔法陣に
吸収されるように吸い込まれ、
メーべは時間とともにどんどん衰弱していった。
魔法陣の上に置かれている素材とは、
全属性の魔石
大気中の魔力を集める魔石
生命力を育む魔石
そしてメーべ自身の血液。
ゲル状の粘魔力。
粘魔力とは、(粘土魔力)とも呼ぶのだが、
自然界にできる
「魔力溜まり」
で生成せれるとされる、
天然の魔石が形成される前の僅かな間に、
粘土状になった状態の魔力である。
メーべが一人で発見したものだった。
それらが素材となり、やがて形作られたのは、
「小さな人の形」をした疑似妖精。
しかも、メーべの血と思念を吸収した、
メーべにそっくりな妖精だった。
「……できたのですの!
できたのですのぉー!」
小さな陰が動く……
「……ママぁ?」
「え? あなた、話せるのですの?」
「話せるのですのぉ~~~!」
「もっ……もしかして、私の思念を取り込み、
自我が生まれちゃったんですますの?!」
「そうみたいなの~~~
私、貴女の分身? 子供?
私、貴女のなんなのですの?」
「!!!!……すごいですのぉ~~~!
本当に妖精さんが生まれちゃったですのぉ!
しかも、ちゃんと考えてるますのおー!!」
「考えてるますのーー!!」
まったくもって規格外な魔術師である。
本当に疑似的妖精を生み出してしまった。
「疑似的」とは言うが、自然界に生まれる妖精
とは違い、人工的に妖精が生まれる過程を再現
してみたわけだが、この方法も、彼女自身が、
一人で考え悩み実験し、そして成功させた。
しかも凄いところは、権威、名声、地位、名誉
それらが欲しい訳ではなくて、ただただ、
推しのツンデレ萌女神令嬢アン様と、また、
根暗でオタクなこんな自分でも、楽しく優しく
御相手をしてくれた、リア姉様のために、
寝る間も食う間も惜しみ頑張った結果が……
いや、違う、そうではない。
彼女が無自覚天才少女なだけである。
だからと言って、誰彼に構わずに簡単に、
教える気などはまったくしない。
なので、紙にもノートにも残してはいない。
全部、頭の中に詰まっているから。
実のところ、先日メーベはたったの一人で、
魔力溜まりで起きる魔力の「粘土化現象」を
発見しゴーレムを生み出すプロセスを利用し、
妖精の体を作る媒体に、粘魔力を使えば、
擬似妖精が生み出せることを発見している。
しかも! 自分の思念を込めることで、
擬似妖精は、自分にそっくりな性格で、
自分にそっくりな容姿の妖精が生まれる
ことも、このたった今発見した訳である!
ゴーレムのように、ある程度の簡単な命令しか
聞かず、行動も簡単な動作しかできないような
そんなお粗末なものではない!
なにしろ、自我を持ち、意志を持ち、こうして
互いに話し合い考える事ができるのだから。
もはや、擬似妖精とは呼べない。
新種の妖精と呼んで良いのではないだろうか?
「そうですの! お名前を付けなきゃですの!」
「おなまえ? プチメーべですの!」
「(;: ⊙ 3⊙;)・;゛.:’;、ぶはっ!!
そ、それ、どういうことですますの?」
「うん? うん! だぁかぁらぁ~~~
私の名前は、プチメーべですわの!」
「∑(Ⅲ ̄□ ̄)!!!!……まさか……
もう決まってますでしたの?!」
「はいなのぉー!
私は、ツンデレ萌女神令嬢アン様を
お慕い申しますですのぉ~~~」
「∑(Ⅲ ̄□ ̄)!!!!……」
「リア姉様も好きなのですわの!」
「∑( ¡º□º)!!??…………」
「ママがあんまり驚くと、私までオロオロ
しちゃいますですのぉ~~~」
「………………ちょっと、怖いかもですの?」
怖い……確かに怖い。
人だって生まれてから名前を付けられるのに、
生まれたら、もう名前があるだなんて……
しかも、思考や感情まで繋がっている?
メーべは自分で妖精を生み出しておきながら、
怖かった……
でも、立ち直りも早かった!
「では、明日から一緒に過ごすですの!」
「分かりましたですますのー!」
「……ほんっと、私にそっくりなのですの(汗)」
「うふふですの」
「……ははは(汗)」
こうしてメーべとプチメーべとの、
妙な関係が始まったのであった。
ついに生まれました。
プチメーべです。
メーべは作るつもりでしたが、
ここまで自我を持つとは思っていませんでした。
この子、かなり重要キャラになります。
ちなみにメーべは
本人も自覚していませんが、
普通に世界レベルの天才魔術師です。
本人はただ
「推しのために頑張った」
だけなんですが……
だいたいこういう人が
歴史を変える発明をします。




