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女装剤(ある女騎士の事情)  作者: 嬉々ゆう


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33/78

第32話 (コンフィの章)燃やされかけた団章

第32話です。


今回はフリージア回です。


学園の食堂で起こるトラブル。

そして、コンフィの意外な一面が見える回でもあります。


少し長めですが、楽しんでいただければ嬉しいです。



 ••✼••昼の休憩時間••✼••


 ・⋯━☞生徒会室☜━⋯・



 生徒会室では、生徒会長の第一王子、

 シェンブリィ・アシュ・マイーヤと、

 生徒会会員の公爵令息、

 アロガンス・セル・ブルワーがいた。


 そして、彼らの話している内容とは、

 実は、コンフィのことであった。



「シェン、お前は奥手すぎるんだよ。

 彼女は騎士志望だよな。

 そして、肝心なお前は魔術師志望ときた。

 畑違いも甚だしいってもんだ。

 だがな? そんなの関係ねぇだろ?」


「アロ、君は何が言いたいんだい?」


「分かってるくせに……

 あぁあ、歯がゆい歯がゆい

 その点俺は、騎士志望だ。

 同じ騎士志望として、近づきやすいし、

 話題も振りやすいってな!

 どうだ? ヤキモキしないか?」


「はぁ……まったく君ときたら

 相変わらず、目先の事しか考えないんだね?」


「……なんの事だ?」


「彼女は、アザミ女騎士団長だよ?

 己の言動一つ一つに責任を持ってる」

 (↑買い被りすぎ)


「はっは! こりゃあまた、早いな……

 もう、女騎士団を作っちまったのか?

 はっ! どうせ、お前も絡んでるんだろ?」

 (↑意外と鋭い)


「もちろん、僕だけの力ではないさ」


「はあ!? お前、誰を抱き込んだ?!」


「人聞きの悪い言い方はよしてくれよ~

 皆、僕と彼女のことを想ってのことさ!

 僕から頼んだ訳ではないよ」


「……はっ! 手回しのいいこったな」


「それより……

 ちょっとマズイことになりそうだね?」


「ん?……何かあったのか?」


「知っているかい? フリージアって

 彼女の元婚約者が何か企んでるようだね?」


「んあ? 元婚約者?

 ああ~確か、クロボーテ伯爵家の

 息子ちゃんだっけか?

 その、フリージアって

 元婚約者だが破棄されたんだろ?」


「ふふふ そうだねぇ

 よく知っているね?」


「あははっ! バカにするなよ?

 ん? あれ? そう言えばぁ~~~

 アンビジョーネ嬢の取り巻きの一人?

 そういやあ、一番可愛がってなくない?

 ソイツが、どうかしたのか?」


「ふぅむ……昨日、どうやら、

 ライナー家にアポなしで訪問し、

 フリージア嬢の部屋を物色したとか……」


「はあっ?! なんだそれ!!」


「しかも……何か持ち出した~……とか」


「バカなっ! 何をやってんだアイツ」


「困るよねぇ? フリージアっては、

 アンビジョーネ嬢のルームメイトでもある。」


「…………うん」


「それに、アンビジョーネ嬢が、

 一番可愛がってるだものねぇ?

 もし、彼女に何かあったなら……

 アンビジョーネ嬢……悲しむよねえ?」

 (本人は一番可愛がってるつもりはない)


「奴が何かするってのか?!」


「可能性は高いよねえ?

 なんでも、ライナー家の家宝?

 無くなってるんだってぇ~~~」


「んなっ?! ぬ、盗んだのか?」


「マズイよねぇ……

 その家宝とを引き換えに、フリージア嬢に

 何か無理な要求をしたならぁ……

 それでも、フリージア嬢は、

 きっと逆らえないよねぇ~~ 」


「!!!!………………」


「そうなると、もう……

 アンビジョーネ嬢も黙ってないよねぇ?

 困るんだよなぁ~まだ婚約者の身でさぁ。

 些細な問題でも起こされちゃあ…ね?」


「!……こうしちゃいられないな

 お前は、衛兵に知らせておけ!!」


 ガタッ!……バァン!

  タッタッタッタッタッタッ……

 (生徒会室を飛び出して行ったアロガンス)


「あははっ 慌てちゃって……

 残念ながら、僕が直接動く訳には

 いかなくてね……利用させてもらうよ?

 それに、君がどう足掻いても無駄さ。

 僕には、これ以上に無いと言えるほどの、

 強力な味方が何人も居るんだからね。

 …………………………ふっ

 あのは、僕のものだよ」



 そう言う王子シェンブリィの手には、

 元ストローム副団長ドゥークと、

 コンフィの写真が握られていた。



 なんともはや。

 不穏な空気が充満した生徒会室だった。


 アロガンスは、知らなかった。

 自分さえも、王子シェンブリィの掌の上で

 踊らされていることを。

 そして、王子シェンブリィの手には、

 アンビジョーネと、ドゥークの2枚の写真が

 握られていたことも……

 

 この、この国の第一王子、

 シェンブリィ・アシュ・マイーヤは、

 最初コンフィの事は、莫大な財力を誇るバリヤージュ侯爵家との政略結婚の相手としか見ていなかった。


 だが、初めて出会ってからと言うもの、コンフィの言動により第一印象から見方が一変。

 シェンブリィ王子は、コンフィのことを、

 少しづつ見直しつつ、

 好意を持つようになっていた。 


 そして、何より、

 決して本心を表に出さず、

 陰ながらじわじわとコンフィの外堀を埋める

 彼のやり方には、タチが悪いと言うしかない。


 だがそんな彼にも、唯一障害となる者がいる。

 アロガンス・セル・ブルワーである。

 彼は、我が父である国王陛下の弟、

 王弟陛下の息子であり、

 また、幼馴染でもあった。

 従って、アロガンスの気も知れている反面、

 甘く見ると足元をすくわれる事も、

 よく理解している。


 今までは、良き友であり、幼馴染であり、

 良き理解者でもあったのだが、

 この度、王国の繁栄に必要不可欠な存在、

 侯爵家の令嬢「アンビジョーネ」

 という存在が現れることで、

 シェンブリィとアロガンスの2人の間には、

 いつしか小さな亀裂が生じてしまう。


 そして今ではその亀裂も、

 2人の力を持ってしても、修復できないほどに

 大きなモノへとなってしまっていた。


 そんな反面、コンフィは何も知る由もない。

 シェンブリィ王子が、まさか自分の婚約者

 だなんて、夢にも思いもしない。

 

 コンフィは、以前はドゥークという名だった。

 元、ストローム騎士団副団長の、

 ブクブク髭面ツフパゲデブオヤジであり、

 女になるなんて思いもしなかっただけに、

 自分に婚約者という男の存在がいるなど、

 コレっぽっちも思わないし考えもしない。

 「結婚」そのものでさえ、

 自分には無関係とさえ思っているのだから。


 コンフィは、ただ、

 将来は聖騎士を目指すことだけが、

 自分自身の存在意義である。

 そのためには、母親の、

 「ビゼット・アン・バリヤージュ」

 の言いつけを守り、女騎士として

 あり続けるためには、學園に通い、

 騎士として、淑女として、

 ただただ、与えられた事を全うする。

 それだけに、必死なだけなのだった。


 そんな時の、食堂でのことだった。



  ••✼••昼休憩の昼食時••✼••


 ・⋯━☞學園の大食堂☜━⋯・


「「「「ワイワイガヤガヤ……」」」」

 

「では、頂きましょう」


「「「「はぁい! アンお姉様っ!」」」」


「「「「ワイワイガヤガヤ……」」」」


 バタァン!


「「「「ザワッ!……」」」」


「うん?」



 大勢の生徒たちが昼食を堪能するなか、

 突然、大きな音とともに、

 生徒たちのざわめきが消えたと思った瞬間。

 聞くに耐えない戯言を口走る者が現れた!



「フリージアぁーー!!」


「「「「ザワザワッ!……」」」」

 (一斉に声の主へ視線が集まる)


 ガタッ!……

「はあはっ!!……ナパッド……」

 (突然のことで、思わず席を立つフリージア)


「…………はぁ」

 (またかと、溜息を吐くコンフィ)


「貴様、まだ自分の置かれている状況が

 分かっていないらしいな!?」


「な……なんの事ですの?」


「これが、目に入らないのか?」

 (何かを持ち、高く掲げるナパッド)


「?!……それは!!」


「?!……あれは……」

 (ナパッドが持つモノが何か気づいたコンフィ)



 ナパッドが、フリージアに見せた物は、

 「初代女騎士団の団章」だった。

 なぜ、そんな物がナパッドの手に?



「これを、燃やされたくなかったら、

 今すぐ俺様に謝罪し、

 婚約破棄を撤回しろーー!!」


「な、なにをっ!?……」


「?!……バカめ 姑息な手を使いやがって」

 (思わず地が出るコンフィ)


「「「「ザワザワザワザワ……」」」」



 実は、この娘フリージアとは、

 元初代女騎士団の団員の娘であり、

 生粋の騎士の家の生まれの少女だった。

 フリージアは、騎士家の生まれに誇りを持ち、

 そして元女騎士団の母を尊敬していた。

 だからこそ、最初はコンフィに対して、

 ライバル心があったのだ。


 また、なぜナパッドが、

 初代女騎士団の団章などを持っているのか?


 これまでのプロセスからも分かるように、

 ナパッドは、フリージアの元婚約者だった。

 そのため、フリージアの生家である、

 ライナー邸には何度も行き来していたので、

 フリージアの家から、何かを持ち出すのは、

 容易い事であった。


 つまり、ナパッドは、

 フリージアの家から、初代女騎士団の団章を

 盗み出していたのだ。

 どこまでも、悪どいことを考える奴である。


 ライナー家にとってもフリージアにとっても、

 初代女騎士団の団章は、

 「家宝」と言っても過言ではない。

 そんな物を燃やされては堪ったものではない。

 元女騎士団の団員の娘という誇りを、

 燃やされるということは、

 死にも匹敵する悲しい事柄である。



「どうして……どうしてソレを?

 お願い……お願いだからやめてナパッド!」


「…………(怒)」

 (メラメラ……(炎))


「あははははははははっ!

 どうだ! 考え直す気になったかー!?

 謝るのなら、今のうちだぞ!

 ほら…ほらほら…ほらほらほらぁ!!」

 (団章に火を近づけるナパッド)


「いやぁ……いゃあ~やめてお願い!」


「ふはははははははっ!

 その顔! いいねぇ~ 俺はなぁ、

 女のそんな苦痛や苦悩に歪んだ

 顔を見るのがたまらなく好きなんだよ!

 ぬはははははははっ!!」


「「「「ザワザワザワザワ……」」」」


「お願いよぉ…お願いだから…すんすん」


「こんのぉ……女を泣かせやがって……(震)」

 カタカタカタカタ……

 (ブチ切れ寸前で震えるコンフィ)


「さぁー! 言えー!!

 婚約破棄を撤回すると言えーー!!」

 (団章に火をつけたナパッド)


「いやああああああああーーー!!」


「!!……き、きさまっ……」

 ガタタッ!

 (立ち上がるコンフィ)



 コンフィは、いまにも飛び出さん気だった。

 だが、その時だった!



「はい! そこまで!!」

 ヒョイ!


「んなっ?!」


「「「「ザワッ!……」」」」


「「!!??……」」



 唐突にナパッドの後ろに現れ、

 ナパッドから団章を取り上げたのは、

 公爵令息のアロガンスだった。



「お前、バッカじゃねえのぉ?」


「あ……貴方は……」


「ふぅ……ヤバかったな……

 なんとか間に合ったようだな」


「……アロガンス様?」

 (キョトンとするコンフィ)


「……ひく……ひく……」

 (パニック状態で、

  何が何だか理解できないフリージア)


「お前、アウトね!」


「……はあ?」


「当たり前だろう!

 こんな事をしでかしといて、

 ただで済むと思ってんのか?」


「いや……その……俺は……」



 と、そこへ遅れて

 シェンブリィ王子が駆けつける。


 タッタッタッ……タタッ!


「ど、どうやら……間に合ったようだね?

 はあ……はあ……はあ……」


「遅えよ」


「す、すまない……」

 おい! コイツを連れて行け!」


「「はっ!」」


「なっ?! やめろ! 離せっ!!」


 バタバタバタバタッ……


「「「「ザワザワザワザワ……」」」」


「「…………」」

 (立ちん坊なコンフィとフリージア)



 ナパッドは、王子の指示で、

 衛兵にどこかへ連行されて行った。

 どうやら、難は去ったようだ。

 ホッとしたのか、やれやれと、

 思わずフリージアを抱え込むように

 抱きしめるコンフィ。

 フリージアも、コンフィの胸に

 顔を埋めるようにして

 ワンワン泣き出すのだった。



「アンお姉様ぁ! アンお姉様ぁー!

 ぅわああああ~~~ん!!」


「うんうん……お泣きなさい 今はね」


「わああああ~~~ん!」


「…………可哀想に」

 (目に薄らと泪を浮かべるコンフィ)


「ほぉ? まさか君にも、

 そんな一面があったとはね?」


「……なんの事でしょう?」

 (フリージアの頭を撫でながら言うコンフィ)


「ひっく……ひっく……あうぅ……

 アン……お姉ぇ……さまぁ……ひっく!」


「ふっ……まあ、それでも今はいいさ」


「わたくし……何もできませんでしたわ」


「うん いいんだよ、それで」


「はぁい? それは、いったい

 どういう意味なのでしょうか?」


「ふぅん……それに気づかないのも、

 また君の良いところなのかもね?


「はぁい? まったく意味が分かりませんわ」

『さっきから何を言っているんだ王子様は?』


「あの時、君が何もしなくて良かったよ」


「ふぅん?」

 (意味が分からず首を傾げるコンフィ)


「今はね? そう、今は……」


「お前、何を言っているんだ?」

 (割り込むように言うアロガンス)


「さあ……ね?」


「……変なやつ?」



 この時の王子シェンブリィの言葉に、

 誰もが何を意図するのか、

 理解できる者はいなかった。


 もし、このときコンフィが、

 たとえ相手がどうしようもない

 「悪」だったとしても、

 無闇に手を出すことになっていれば、

 コンフィの母親ビゼット侯爵夫人が

 コンフィに求める、

 「淑女としての振る舞い」

 に欠けている事を示すばかりか、

 きっとコンフィも、この學園の生徒として

 過ごすことは難しくなるだろう。


 また、王子シェンブリィとの、

 婚約関係でさえもが、

 破綻する恐れすらあった。


 だが、結局は、

 コンフィは、何もできなかった。

 でもそれは、コンフィの中での、

 「淑女としての振る舞い」

 が、ブレーキをかけていたのは、

 言うまでもない、


 こうして、一難は去ったのだが、

 シェンブリィ王子を含む、

 食堂にいる大勢の生徒たち、そして

 その他、”アン様をお慕い申し上げ隊”も、

 誰もが釘付けになったのは……


 目にうっすらと涙を浮かべながら、

 フリージアを優しく包み込むように

 抱きしめるコンフィの姿。

 また、そんなコンフィの、

 フリージアに対する天使か聖母か、

 また女神のように優しく愛おしそうに、

 フリージアを慈しむような微笑み……


 時間を止めた瞬間だった。


 皆、息をするのも忘れるほどに、

 今目の前のコンフィを清く尊く想うのだった、

 コンフィに悪役令嬢の印象を勝手に持ち、

 避けて近づこうともしなかった

 他学部の生徒たちまでもが、

 コンフィに対しての印象は、

 この時、塗り替えられることになる。 


 アンビジョーネ・コンフィ・バリヤージュ


 彼女には悪役令嬢のような見た目とは裏腹に、

 意外にも優しい一面があるとして、

 學園全体を巻き込み、本人にはまったく

 自覚がなくとも、好感度が爆上がりした

 コンフィだった。



ここまで読んでくださりありがとうございます。


今回はフリージアのピンチ回でした。

そしてコンフィの「優しさ」が少し見えた回でもあります。


次回からは、また学園編が少し動きます。


よろしければ

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とても励みになります。


それでは次回もよろしくお願いいたします。

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