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女装剤(ある女騎士の事情)  作者: 嬉々ゆう


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28/80

第27話 (コンフィの章)上級貴族のお姉様

第27話です。

ついに入学試験。

コンフィが“令嬢”としてではなく、“騎士”として立つ回になります。

白金の縦ロールが、どこまで通用するのか。

どうぞ見届けてくださいませ。


 ・⋯━☞馬車の中☜━⋯・


「これを、お持ちなさい」


「……これは?」


「マジックバッグです」


「マジックバッグ?!

 こんな、貴重なものを……!」


「いいのです 可愛い”娘のため”ですもの

 その、大きな武器を入れておきなさい

 まさか、それを背負いながら、

 入学試験を受けるつもりかしら?」


「お母様……ありがとうございます!」



 コンフィは、マジックバッグを受け取った。

 「マジックバッグ」とは、

 見た目の大きさよりも、

 多く物を収納できる、

 とても便利な魔導具である。

 それは、ウエストポーチ・タイプのもので、

 しかも容量は、水だけなら20Tも入る逸品。

 巷で買えば、

 1000万チャリンは下らない代物である。



「では、行ってきなさい」


「はい」



 この時コンフィは、

 「お母様は、私を愛してくれていたんだ」

 と、心から思えたのだった。



「では、行ってまいります」


「ええ……存分に励みなさい」


「……」

 (声なく頷くコンフィ)


 トン……トン……



 コンフィは、馬車を降りた。



 ・⋯━☞マイーヤ王宮學園正門☜━⋯・



「ふぅ……来てしまったな……」



 なぜか、足を肩幅に開き、胸を張り、

 正門前で仁王立ちするコンフィ。

 気合十分なのだろうけども、

 こんな時は、緊張のあまりか、

 騎士としての所作がつい出てしまう。



「ふう……やるしかないか」



 コンフィは、これから入学試験を受ける

 若者たちに混ざり、試験会場へと向かう。

 たとえ体が學園に入学する位の若さに

 なったとはいえ、中身はアラフィフだ。

 場違いな感じは否めない。


 ましてや、コンフィは、

 「オジサン女騎士」である。


 残念ながら、この學園には、

 今までは「女騎士学部」は存在しなかった。

 王国近衛騎士志願の男子が主流だ。

 なぜなら、初代女騎士団長が去ってから、

 この国には、10数年もの間、

 「女騎士団」は存在しなかった。

 なので、「女騎士学部」は、

 廃止されてしまっていたのだ。


 だが今回コンフィが入学試験の受検を機に、

 再び、「女騎士学部」が再開設され、

 コンフィは、当然ながら、

「女騎士学部」を受験した。


 実はこの今回の「女騎士学部」の再開設は、

 コンフィの母、

「ビゼット・アン・バリヤージュ」

 と、この国の第一王子、

「シェンブリィ・アシュ・マイーヤ」

 と、そして更にマイーヤ国王が、

 大きく関わっているのを、

 コンフィは、知る由もなかった。


 この3人が関わると言えば、

 分かる人には分かるだろう。

 今のコンフィの立たされている状況が、

 どのようなものかのかを……

 コンフィ自身は、全く気づきもしないが。

 


「参ったな……国王への謁見よりも緊張する

 すぅ~~~……はっ! 行くか!」



 コンフィは、一度大きく息を吸い、

 勢いよく息を吐くと、

 緊張のあまりか、淑女らしくよりも、

 騎士らしくなってしまうのだった。


 歩く姿も、貴族令嬢というよりは、

 一人の騎士という雰囲気を醸し出す。



 コツッ…コツッ…コツッ…コツッ……


「「ザワザワ……」」


「……?!」


「「ザワザワザワザワ……」」


「…………(汗)」



 なぜだろうか。

 思いのほか、注目を浴びている気がする。

 横目でチラッと周囲を見ると、

 ほぼ全員がコンフィを見ている。



 コツッ…コツッ…コツッ…コツッ…


「………………(汗)」


「「「「ザワザワザワザワ……」」」」



 試験会場へと近づくほど、

 コンフィを見る目が増えている気もする。

 思わず、視線が鋭くなる。

 引いてしまう他の受験生たち。

 流石に、負けじと、

 気合いが入るコンフィであった。



 ・⋯━☞女騎士学部筆記試験会場☜━⋯・



 「「「「サワサワサワサワ……」」」」


「…………」



 ここは、「女騎士学部筆記試験会場」。

 コンフィは、一番前のど真ん中に座る。

 意外と、受験者であろう平民少女たちの他、

 令嬢たちの数が多いことに驚くコンフィ。

 全部で四十人近くは、いるだろうか。

 半分以上は、平民のようだ。

 平民少女であれ騎士団に入団し、

 騎士として認められたなら、

 「準騎士爵」の地位が約束されるのだ。


 平民たちからは貴族として扱われ、

 貴族からは平民として扱われる。


 なんとも立ち位置のはっきりしない

 地位ではあるが、男女問わず、

 騎士になることを夢見る平民たちは、

 思いのほか多いようだ。 



『意外と多いじゃないか?

 まさか皆、ピオニー女騎士団へ

 行くつもりじゃ……』



 などと、考えながら、

 試験が始まるのを待っていた。

 すると、ようやく教官が現れ、

 筆記試験が始まった!


 

 ••✼••筆記試験中••✼••


 ………………

 …………

 ……


 ••✼••筆記試験終了••✼••



「「「「ザワザワザワザワ……」」」」


「あんた、どうだった?」


「私、ダメだったかもしんない!」


「私も! だってなんて書いてるのか、

 ほとんど分からなかったもの……」


「ええーっ! 私もぉ!」


「………………」



 そんな声が聞こえてくる。

 試験が終わり、緊張の糸が切れたのか、

 隣に座る人と話し合っているのが聞こえる。


 はっきり言って、今回の筆記試験は、

 貴族のコンフィにとっては、

 「一般常識レベル」

 だが、平民となれば話は別だろう。

 日本のように義務教育さえ存在しないのだ。

 平民の識字率も低いはずである。


 コンフィは、筆記試験会場を後にした。



 ・⋯━☞女騎士実技試験会場☜━⋯・



「「「「ワイワイガヤガヤ……」」」」


『うぅむ……こっちの方が熱気があるな?

 それもそのはずだな。

 男女問わず騎士学部の合格基準は、

 学科よりも、如何に、騎士として

 体力や体の芯の基礎ができているか。

 そんな素質があるかを見極めるのを、

 判断基準だと言ってもいい。

 最悪文字など入学してから学べばいい』


 そんなことを思いながら、

 自分の順番がくるのをまっていた。

 

 そして、いよいよコンフィの番である。



「アンビジョーネ・コンフィ・バリヤージュ!」


「……はい」


 コツッ…コツッ…コツッ…コツッ…


「「「「ザワザワ……」」」」

 (無言でコンフィを目で追う他の受験生たち)


「…………」


 コツッ…コツッ…コツッ…コツッ…


「では、この中から、

 貴女自身に、合うと思われる

 木剣を選びなさい」


「……はい これでしょうか」

 (迷わず手を伸ばすコンフィ)


「……わかりました

 では、アチラへ……」

 (少し、怪訝な表情の教官)


「はい」


 コツッ…コツッ…コツッ…コツッ…


「「「「………………」」」」



 コンフィが選んだタイプの木剣は、

 コンフィの得物に似た大剣タイプ。

 そんなコンフィを見た誰もが、

 無茶だ不相応だと思った。

 なぜなら貴族令嬢に限らず、

 女の子なら、普通は細くて軽い

 「レイピア」

 を選ぶものだからだ。


 教官がコンフィを怪訝な表情で見たのは、

 「本当にそれを扱えるのか?」

 という思いに違いなかった。


 コンフィは、大剣タイプの木剣を握り、

 実技試験の対象相手の教官の前に向かう。



「アンビジョーネ・コンフィ・バリヤージュです

 よろしくお願いいたしますわ」


「うむ とにかく打ち込んできなさい

 たとえ一太刀も私に入れられなくとも、

 私の判断で合否は決めさせてもらう」


「……なるほど 分かりましたわ」


「「「「ザワザワザワザワ……」」」」



 この時、ここに居る全ての者たちは驚いた。

 それが素人目にしても、

 コンフィの大剣を持ち構える姿は、

 ツッコミどころが無かった。


 誰もが、「上手い!」と思ったのだ。

 

 

「ほぉ? では……来なさい!」


「!……」

 (一瞬で姿勢を低くするコンフィ)

 タタッ!


「んっ?!……」


 カァーンッ!


「うおっ?!」










「……え?」


「「「「…………?!」」」」


「……ふっ」

 


 大きく足を開き、体を低くして、

 木剣を振り切った姿勢のコンフィ。

 綺麗な白金の縦ロールだけが、

 スローモーションのように、

 フワリと、体の前に振り乱れる。








 シュルルルルッ

 …………カタン! カラカラッ


「んなっ?!」


「「「「ザワザワザワザワ!」」」」



 気がつけば、教官は手を挙げ、

 呆気にとられていた。

 周囲の受験生たちも、唖然……


 コンフィが、一瞬しゃがんだと思ったら、

 次の瞬間には、木剣を弾く音、

 そして、教官が両手を挙げ、

 呆然としていたのが見えた。

 何か起きたのか、誰も分からなかったのだ。


 しばらく経って、木剣が落ちる音がするまで、

 木剣がどこへ飛んだのかも分からなかった。



「!!!!……」

 「「「「!!!!……(驚)」」」」


「ふっ……」

 フワッ……

 (立ち上がり片手で髪を振るコンフィ)


「「「「わぁーーーー!!!」」」」


「ごっ……合格だ! 文句無しに……」


「ありがとうございました」


 コツッ…コツッ…コツッ…コツッ…


「「「「わぁ~~~……(惚)」」」」


「……」



 コンフィは、たったの一撃で、

 対戦相手の教官から合格を得られた。

 たったの一振で、教官の木剣を弾き、

 空高く飛ばしてしまったのだ。

 文句のつけようがない。


 コンフィはこの日、

 無事に學園女騎士学部への入学が決まった!


 それと同時に、周囲からのコンフィの見方が、

 「上位貴族の御令嬢」から、

 「上位貴族のお姉様」へと変わったのだった。


 だが、コンフィは殺気を感じた!


 一人だけ、コンフィを異様に睨みつける

 少女の目があったことに……



第27話をお読みいただき、ありがとうございました。

筆記よりも実技。

そして実技よりも、“生き様”。

コンフィは一撃で合格を得ましたが、物語はここからが本番です。

最後に現れた“あの視線”が、次なる波を呼びます。

続きもぜひお楽しみください。

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