第19話 (ビオラの章)強さの証明、恋の始まり
第19話は、エアーツダンジョンでの一幕。
強さとは何か。
守るとは何か。
そして――
ときどき始まってしまう、ちょっと困った“恋”。
ビオラ団長、今回も全力です。
鼻も全力です。
どうぞお楽しみください。
・⋯━☞エアーツダンジョン☜━⋯・
・⋯━☞第10階層ボス部屋前☜━⋯・
「………………」
「どうしたんだ団長?」
「あん? いや、あの子、ソロなんだな?
慣れた様子ではあるんだがぁ……」
「ああ~~~そうだね?」
「大丈夫なのかしら?」
「……ん……たぶん無理」
「「ですよねぇ~~~」」
「あはは……お前たち(汗)
しかし……」
ビオラは、今しがたボス部屋に入った少年は、おそらくフーリアたちとそれほどレベルに差はないだろうと見ていた。
なので、とてもソロではスケルトンキングには、勝てないだろうと気になっていた。
••✼••5分後••✼••
「「「「ワイワイガヤガヤ……」」」」
(他の冒険者たち)
「さて、今日はこの辺で……」
《うわぁーーー!!》
「「「「?!……」」」」
(他の冒険者たち)
「なんだ! さっきの少年か?!」
「そうみたい!」
「団長?」
「……ん?」
「……もしかして、助けを求めているのか?」
「「……え?」」
「……ん?」
「「「「!……」」」」
(他の冒険者たち)
「もし、そうなら助けに行かなきゃ!」
「「ええっ?!」」
「んんっ?!…」
「「「「ザワザワザワザワ……」」」」
(他の冒険者たち)
なぜ、ビオラがそんな事をいったのか?
実は、このエアーツダンジョンとは、
大魔女ラカが冒険者育成のために創った、
人口のダンジョンなのである。
従って、このダンジョンの「ダンジョンコア」には、想定できるあらゆる事柄に対応できるように設定されていた。
そして、今回の、「助けを求める」場合だ。
もし、ボス戦に挑んだソロ冒険者が、
助けを求めた場合は、自動的に扉が開く
仕様となっていたのだ。
もちろん、ボスは扉から外には出られない。
ガコン!……
「「「「ザワッ!……」」」」
「「あっ!」」
「んっ!…」
ゴゴゴゴゴゴゴ……ゴドォン!
(自動的に開く扉)
「やっぱり!!」
どうやら、ビオラの予測は当たったようだ。
先程、ソロでボス戦に挑んだ少年は、
中で助けを求めていると確信したビオラ。
「お前たち! 俺は、あの少年を助けに、
また中へ入るから、万が一に備えて、
すぐにでも冒険者ギルドに、
報告できるようにしておけ!」
「ええっ! だ、団長!?」
「万が一って、なによ!!
団長、どうなっちゃうの?!」
「ん”ん”ん”ん”ー!!」
「「「「ザワザワザワザワ……」」」」
「万が一は、万が一だよ!
大丈夫だ! 何も起きやしない!
……たぶんな」
「「団長ぉー!!」」
「ん”ん”ん”ん”ー!!」
「すまない……とにかく、行ってくる!」
タタタッ!
「「ああっ!!」」
「んんっ!!」
「「「「ワイワイガヤガヤ……」」」」
そう言って、ビオラは一人ボス部屋に、
入って行ってしまった……
・⋯━☞ボス部屋☜━⋯・
タッタッタッタタッ!
「大丈夫かー!!」
「ぐぅぅ……うあう……助け……」
「シッカリしろ!! はっ?!」
少年は、もう虫の息だった。
だがしかし……!
「な……なんで?」
「ゴァア”ア”ア”ア”ア”ア”ーーー!!」
「!?……」
ビオラは、絶句した!
本当なら、少年は瀕死の虫の息なのだから、既にダンジョンの外へ、
強制転移させられているはずなのだ。
なのに、スケルトンキングは、
まだ少年に攻撃を与えようとしている!?
もし、今の状態の少年にスケルトンキングが一撃を与えたなら、きっとタダでは済まない!
下手すりゃ、命に関わる。
ビオラは、少年をお姫様抱っこで抱え、
扉からボス部屋から出たのだった。
・⋯━☞ボス部屋前☜━⋯・
「「「「ザワザワザワザワ……」」」」
「「団長!!」」
「んんっ!!」
「ポーションを出してくれ!」
「あ、はい!!」
ガサゴソ……キュキュ……ポン!
フーリアは、
少年にポーションを飲ませた。
「ん!……はぁはっ!? へ? 僕……」
「もう、大丈夫だぞ?」
「「「……ほっ」」」
「「「「ザワザワザワザワ……」」」」
「それより……」
少年は、ポーションが効いたのか、
目を覚ましたようだ。
そんな少年を見て、ここに居る皆が
胸を撫で下ろした、次の瞬間だった!
ガタァーン!
「ゴォア”ア”ア”ア”ーーー!!」
「「「「わあああああああーーー!!」」」」
「「きゃあああああーー!!」」
「んんんんんんーー!!」
「なっ?!……バカな!!」
なんと!
スケルトンキングが、ボス部屋から
まるでコチラへ出てこようとするかのように、
片方の腕を扉の縁に絡ませ、
もう片方の腕をコチラへ伸ばしてきたのだ!!
「どうなってやがる?!」
「きゃあああああー!!」
「アイツ、出てくるつもりか!!」
「「団長おー!!」」
「んんー!!」
「くそっ! 少年を頼む!」
「「団長ぉおおおーーー!!」」
「ん”ん”ん”ん”ーーー!!」
ビオラは、一人立ち上がり、
スケルトンキングに向かって走った!
ところが……
「コワァアアアアアーー!!」
「なっ! あれはっ!!」
「「「「?!……」」」」
スケルトンキングは、突然口を大きく開けた!
ビオラは、知っていた。
スケルトンキングが、このモーションに入ると、自分の骨の一部を高速で飛ばしてくるのだ。
追い詰められた時に放つ、
スケルトンキングの必殺技であった!
「全員、退避いーーーーー!!」
「「「「うわあああーーー!!」」」」
「「きゃあああああーー!!」」
「ん”ん”ん”ん”ーーー!!」
そのとき!
他の冒険者たちは、スケルトンキングが、
ビオラを狙っている事に気づいたのか、
ビオラを中心にして、
蜘蛛の子を散らすように散開!
「なっ?! こ、これは?!」
「団長!!」
「逃げてぇーー!!」
「ん”ん”ん”ん”ーーー!!」
「グパァ!!」
「??!!……」
と、次の瞬間!!
スケルトンキングは、
口から骨の一部を吐き出した!!
そして、その骨の破片は……
ギュルルルルルル……
バァン!!
「ぎゃあはっ!!」
「「いゃああああー団長ぉおおーー!!」」
「ん”ん”ん”ん”ん”ん”ん”ん”ーーーー!!」
「「「「!!……」」」」
スケルトンキングの放った骨の破片は、
一直線にビオラに向かって飛び、
ビオラにクリーンヒット!
ビオラはそのまま、
反対側の壁まで飛ばされてしまう!
ギュン!……
ビタァーーーン!
……ドタタァッ!
「「?!……団長おおーー!!」」
「いゃああああああああーー!!」
「「「「!!……」」」」
誰もが、ビオラの死を覚悟した。
スケルトンキングは、
ビオラの背丈ほどもある骨の破片投撃で、
相手に瀕死の一撃を与えたと認識したのか、動きを止め、扉から首を引っ込めて、
ビオラの様子を伺っているようだ。
しばらくの静寂の後、
最初に言葉を発したのは、少年だった。
「そ、そんなあ!! あの人は?!
ど、どうなったの?」
「「「「ザワザワザワザワ……」」」」
「団長……いやぁ……すんすん(泣)」
「すん……すん……」
「……え……えええ……」
皆、ビオラが死んだと思った。
だが、そんな重苦しく、
張り詰めた空気の中、
唐突に静寂を破る者がいた。
それは、ビオラだった!
ゴソッ……
「いってぇ~なぁ~~~チクショウ!!」
「「団長おー?!」」
「んあんんん?!」
「「「「おおおおおおっ!!」」」」
なんと!
ビオラは、生きていた!
いや、それほどのダメージは、
受けていない様子でもあった。
もしろ、ピンピンシャンシャンしていた!
「んああああっ! いってぇーーぞぉ!
鼻に当たって涙ちょちょぎれたじゃん!
こんの骨っ子やろおおーーーー!!!
喰らえ!! 一文字斬りーーー!!」
シュパアッ!!
「「「?!……」」」
「「「「おおっ!……」」」」
ビオラは、そう叫ぶと、
何の変哲もない長剣を、
まるでゴルフクラブのように、
下から上へと、フルスイング!!
その瞬間!
真空の切っ先が目にも止まらぬ速さで飛び、スケルトンキングの顔面に命中!!
シュウゥウゥウゥン……
真空の切っ先は音もなく、
スケルトンキングの頭をすり抜け、
頭蓋骨から胸の赤い石までもが、
真っ二つに割れて落ちた!
ビオラの放った大技は、
かつて、ビオラがまだ男だった頃、
ネームドの地龍(一本傷)の額に
傷を与えた技であった。
ザンッ!……ガランガラン……
…………バラバラバラバラ……
「「「「!!!!!!……」」」」
「一撃で撃破だとおー?!」
「なんということだぁー!!」
「えっ?!」
「うそっ?!」
「んんっ?!」
「すっ……すごい!!」
「ぅおおお~~~いってぇ(汗)」
その時、ビオラは、
ペロペロと人差し指で、唾を鼻に塗っていた。
痛かったのだろう。
「「「…………(汗)」」」
(呆れる三人娘たち)
ビオラは、ちょっと躓いて転んだ~
みたいなリアクション。
三人娘たちの、あの心配した気持ちは……
いったい、どこへ向けたら良いのやら。
するとビオラは、すっく!と立ち上がり、
スススス~~~っと、少年の傍まで歩き、
そして、少年に向かって手を差し伸べた。
「もう、大丈夫だからな?」
「え?………………ああ、はい」
パタパタッ……
ビオラは、少年の手を引き立ちあがせる。
少年は、どう答えたらいいのか呆然……
他の冒険者たちも、呆然……
三人娘たちは、唖然……
とにかく少年は、助けてくれたビオラに
何か言わなきゃと思い、口を開くが……
「ぼぼっ……ぼ、僕!
きっと、貴女よりも強くなって
きっと、貴女を迎えに来ますから!!」
「(@⊙_⊙)………………」
「「「………………」」」
「「「「……………………」」」」
しぃーーーーーーーーーん……
誰もが、ビオラに向けた少年の言葉に、
「今それじゃない感」
が、 力いっぱい支配した。
そして、ビオラもまた、
どう返事をしていいのか分からなくて、
ただ、少年に笑顔を向けるだけだった。
『だって、そんな約束できるかよ……(汗)』
「( *^^*)…………」
「……あ、あの……」
「よしっ! 帰ろっか!」
「「はぁ~~~い!」」
「んんんん~~~」
「ええ? あの……待って……」
ビオラは、
少年の言葉に振り返ることなく、
三人娘たちと共に、
女騎士団施設へと帰るのであった……。
「な……なんて強い人なんだ!
なんて綺麗で……
なんて可憐で……
なんて可愛くて………もう好き!!
僕は、きっと貴女よりも強くなって
必ず! 必ず、迎えに来ますから!!」
(何を言ってるのか自分でも分からない)
「「「「ザワザワザワザワ……」」」」
このとき、少年はビオラに恋をした。
そんな少年の言葉や気持ちなど、
知る由もないビオラだった……。
第19話、いかがでしたでしょうか。
団長、まさかのクリーンヒットからの完全復活。
三人娘の心臓には優しくない展開でしたね。
そして少年の宣言。
「強くなって迎えに来る」
強さに憧れたその瞬間、
恋はもう始まっていたのかもしれません。
ビオラは知りませんが……。
次回もどうぞお付き合いください。




