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女装剤(ある女騎士の事情)  作者: 嬉々ゆう


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14/80

第14話 (ビオラの章)ピオニーの名のもとに

 女騎士団施設の修繕が始まり、

 ビオラたちは“過去の女騎士団”の痕跡と出会う。


 第14話は、

 歴史と現在がつながる重要回。




 ・⋯━☞女騎士団施設☜━⋯・


    ••✼••3日後••✼••



「はーい! みんなーご苦労さま!」


「「「いえーーい!」」」

 パチパチパチパチパチ!


「お掃除しゅーりょ! でも!」


「「「!……ザワザワ」」」


「汚れや埃は無くなり、

 俺たちの寝床も確保でき、いよいよ新団員を……

 と、言いたいところですが、

 床にも壁にも天井にはまだ穴だらけです!」


「「確かに……」」


「……ん」


「でも流石に建物の修繕は無理なので、

 修理の人を呼びたいも思います!」


「「はーい!」」


「……ん!」


「ってか実はもう、来てくれてまーす!」


「「えっ?!」」


「……え」


「ファブロ工房の鍛冶師、ファブロさんでーす!」


「おう!」


「「「?!……(焦)」」」

 (ビクッ!……)



 なんと、建物の修理に来てくれたのは、

 鍛冶師のファブロだった。

 しかし、鍛冶師に建物の修理などができるのか?


 だがそんなことより、

 三人娘たちはファブロの強面な風貌と、

 ドスの効いた低い声に完全にビビってしまっている。

 ここは、ビオラが場を和ませるしかないだろう。



「おやっさん! わざわざ、すまないね

 俺たちにできることがあれば手伝うから、

 なんでも言ってくれよな!」


「おぅ! そうか? なら……」


「……ん?」


「「「……?」」」



 ファブロは、そう言うと、

 マジック・バッグを逆さにひっくり返した。

 その、途端だった!



 ガランガランがラン!

 ガラガラガラガラガラ……


「「「きゃああああーー!!」」」


「ふぁあぁあぁ~~~!!」

 (珍しく絶叫するティミー)


「うるせぇ!」


「「「ごめんなさい!!」」」


「…………ごめん」



 ビオラは、場を和ませようとしたがダメだった。

 ファブロが、突然驚かすようなことをするから、

 ビオラまでもが悲鳴をあげていた。



「お、おやっさん……これは何だ?」


「これは、魔女殿から頼まれて作った、

 ”ぴけあしば”っちゅーもんらしい」


「ひげあじば?」←(間違い)


「高い場所に作業場所をこしらえる物だとよ」


「へぇ~~~」



 ファブロの言うソレは、金属製の棒だの、

 網目の板などのパーツで、

「足場を積み立てるモノ」らしい。

 なんでも大魔女ラカが提案し、

 ファブロに作らせたモノで、

 誰にでも簡単に高い場所に、

 作業床が組み立てられるとか。



「「おおお~~~」」


「……おおお」


「で? おやっさんがコレを使って、

 高い場所に作業場所を作ってくれるのか?」


「ちげぇよ! お前たちが作るんだよ!」


「「「ええええええ~~~!!??」」」


「……え……え」



 拒否っていても仕方がないので、

 ファブロ作業主任者の指示で、

 足場を組み立てたビオラ率いる4人チビ娘たち。

 でも結局は、修理箇所全ての場所に

 足場を組み立てるのに、一週間もかかってしまった。

 なにが簡単にできるだ!!

 めちゃくちゃむずかしわい!!

 毎日ヘトヘトになったわい!!


 そして、天井のある場所のこと。

 ファブロが何かを見つけたと言う。



 ・⋯━☞正面天井部☜━⋯・



「ここなんだがよ?」


「どれどれ? ん!?……これは?」



 ファブロが見つけたと言うのは、

 天井に横10cm、厚み3cm、奥行8mほどの、

 長細い、「穴」である。

 そして、その穴には、その穴と同じ長さの、

 丸い棒状の物が納められていた。

 

 なんだろう?



「おお~~~なんだこれ?」


「長い……棒か?」


「これが、下に降りてくるとか?」


「おっ! それ、面白いじゃねえか?」


「だろ! じゃあ、なんなんだ?」


「ワシにも分からねえ ただな? ほら見ろ!」


「ん?」



 そう言って、ファブロが指を差して、

 指先をなぞるように動かしていく。

 ファブロの差す指先には、

「魔導配線」

 と呼ばれる「魔力の通るコード」たるものがある。

 それを、ずぅーっと辿ると、

 その終着駅には何やら箱のようなモノがあった。


 ビオラたちは、足場から降りると、

 その箱のある場所へと向かった。



 ・⋯━☞箱のある場所☜━⋯・



「ううむ……なんだろなぁ?」


「「「…………?」」」



 それは、縦30cm、横20cmほどの小さな箱。

 そしてツマミなような物が付いていて、

 引っ張ると蓋が開く仕組みになっていた。

 蓋を開けたその中には……



「なんだこれ?」


「おめぇにも、分からねぇのか?」


「そんな、ファブロのおやっさんに

 分からないものが、どうして俺に分かるんだよ?」


「ふん ちげぇねえ」



 すると、メガネっティミーが言う。



「これ、微かな魔力を感じる……」


「「「えっ?!」」」


「……え」


「魔力だって?」


「……ん」

 (頷くティミー)


「「「「……」」」」



 そう、ティミーは小さく頷く。

 ティミーの言う部分とは、

 ポッカリ空いた丸い穴だった。

 

 と、その時ビオラは気がついた!



「そうか! ここに……」


「「「え?……」」」


「……あ」



 ビオラは、いったい何に気がついたのだろうか?


 ビオラは、マジック・バッグから、

 何かを一つ取り出した。



「これじゃねぇのか? ほら!」


「「おおおお~~~!」」


「……ふぉぉ」


「ほぉ? 魔石……か?」


「そうだ! 魔石だ!

 魔力と言えば、コレしかないだろう?」


「なるほど……で? どうするよ?」


「こうするんだよ」



 そう言ってビオラは、丸い穴に魔石を、

 カポッ!っと、はめ込んでみた。

 たまたまなのか、正規品仕様なのか、

 魔石は丸い穴にピッタリはまった!


 ……が、何も起こらない。

 その流れ的に、何かが起こるフラグだと

 思ったのだけれど、どうやらフラグは、

 立たなかったようだ。



「「「…………あれ?」」」


「……ん?」


「おい 何も起こらないぞ?」


「ですよねぇ~~~」


「「ふぅむ……」」

 「……む」

 (期待はずれな三人娘)



 ビオラが考えたのは、

 天井にある「何か」は、箱の中の穴の中に

「魔石」をセットすることで、

 きっと何かが起こる!

 と、なんとなく察したのだ。


 見ると、箱から伸びた「魔導配線」は、

 壁を伝い天井へ伸び、

 そして「何か」へと繋がっている。


 でも、何も起こらない?

 それにはきっと、他に何か「条件」がある。

 そう思ったのだった。



「ううむ……これだけでは動かない

 なら、他に何か条件があるんじゃ?」


「「条件?」」


「……ん?」


「条件とは?」


「それが分かれば苦労しないさ……」


「なんだよ、おい 頼りねぇなあ?」


「俺は、魔法専門じゃねぇんだよ」



 そう、話していた時だった。



「あれ? この模様は……」


「なんだフーリア 何か知ってるのか?」


「この箱の蓋に描かれてる花の模様……」


「うん? バラ? いや、違うな……」


「…………シャクヤク」


「おっ! ティミー?

 この花を知ってるのか?」


「……フーリアの…お姉さん」


「うん? 確かぁ~

 元女騎士団の団長の右腕とか……」


「……ん!……そう」


「そうなの! アタイ、まだ覚えてる!」


「何をだ?」


「えとね……」



 フーリアは、そう言うと咳払いをして

 胸に手を当て話し始めた。



「芍薬のように誠実であれ…

 牡丹のように壮麗に……

 百合のように清らかにあれ……」


「それは……?」


「女騎士団心得の条……」


「心得の……」



 フーリアが、そう言った後に、

 一拍置いて……



 ガコン!


「「きゃあ!!」」

 「……うぃやぁ!」


「なっ?!」


「ああん? なんじゃい?」



 天井の方から大きな音がした!

 皆、一斉に上を見る!



 カラカラカラカカラ……


「あっ! 何あれ! 何あれ!」

 (天井を指差しはしゃぐフーリア)


「おぃおぃおぃ! 何か出てくるぞ!」

 (珍しく興奮してビオラの肩を揺するファブロ)


「いででででででっ! 痛てぇよ!」


「…………」

 (口をあんぐりと開けて呆けるベミーヨ)


「………………」

 (目が点のティミー)


「「「「「………………」」」」」

 (全員無言で見上げる……)


 カラカラカラ……ゴトン!


「……おい、これ……」



 天井の細長い長方形の

「何か」から出てきたのは、

 とても大きな「花の絵」の描かれた垂れ幕だった。

 その花の横には、金の糸で刺繍された

 フーリアがさきほど話した言葉が綴られていた。

 そして最後に、リリーと。



「芍薬のように誠実であれ

 牡丹のように壮麗に

 百合のように清らかにあれ……

 これ、さっきフーリアが言ってたやつ」


「すごぉい!」

「きれぇー!」

「…………ん」


「これは、先代女騎士団の旗にもある、

 リリー女騎士団のエンブレムだな」


「はあ! おやっさん知ってるのかよ?!

 ってか、元女騎士団団長って、

 リリーって名前なんだ?」


「ああ……ワシがこの街へ来る前の話しだが、

 ワシの故郷が魔物の大群に襲われてな」


「……え?」


「その時に、女騎士団が助けてくれたんだが、

 その女騎士団が掲げていたのが、

 この花の絵が描かれた旗だったんだよ」


「……そんなとこが」


「「「……」」」



 今、チラッとファブロは、

 自分の過去について話してくれた。

 まさかファブロにそんな過去があったとは。



「その、女騎士団って……」


「いやぁ……強いってもんじゃなかった

 そのお方はな、聖騎士になられたお方でな?

 一つ目入道なんて、たったの二斬りだった」


「聖騎士?! は? 二斬り?

 一つ目って……おいおい!!

 たった二回斬で倒したってことか?」


「ああ、そうさ

 凄まじい強さだった……」


「おお……マジかよ ッパネェ!」

 

「「「……」」」



 ファブロの言う、「一つ目入道」とは、

 おそらく、「サイクロプス」のことだろう。

 サイクロプスとは、一つ目の怪物である。

 大型のレベル100を超えるモンスターだ。


 ソイツを、たったの二斬りで倒すとは、

 そんな強者なんて、王宮騎士団にも居ない。


 と、言うことは、先代女騎士団とは、

 現王宮騎士団よりも強かった……

 と、言うことになる。

 マジか……ヤバいどころじゃない。

 元女騎士団団長のリリーの強さは、

 聖騎士になるのも頷けるってものだ。



「う……うううあああっ!!」


「え? なに?! どうしたの団長?」


「身震いした!!」


「「みぶるい?」」


「……ぶるぶる?」


「流石は聖騎士だぜっ!!

 俺も聖騎士になれるように頑張んなきゃな!」


「団長、聖騎士になるの?」


「おぅよ! 今、決めた!」


「「今決めた?!」」


「……え」


「――いや、違うな。

 ずっと前から

 決まっていたのかもしれないな」


「「…………え?」」


「……え……え」


「へへっ 嬢ちゃん、相変わらず単純だな?」


「ほっとけ!

 こういうのは、勢いが必要なんだよ!」



 ビオラは、男の頃から漠然とではあるが、

「聖騎士」になりたいと思っていた。

 聖騎士といえば、騎士の最上級職だ。



「アタイのお姉ちゃんから聞いたんだけど、

 この赤い花は、

 シャクヤクって花なんだって!」


「シャクヤク……か」


「あ、そうだった!」


「うん?」


「ピオニーとも言うんだって!

 なんでか知らないけど、

 シャクヤクもボタンも

 どっちも、ピオニーって言うんだって!」


「ほぉ、ピオニーか……

 なんとなく、いいな、それ」


「「「…………」」」



「ピオニー」

 なんとなく、いい響きだ。

 なんて思っていたとき……



「それとね!

 百合って、”リリー”とも言うんだよ!」


「リリー? この最後に書かれているのは、

 もしかして……」


「うん! やっぱり分かった?

 前の女騎士団の団長さんの名前だよ!」


「!……へぇ~そうだったのか」


「うん! アタイよく、お姉ちゃんから

 リリー団長さんの話を聞いていたんだ!」


「へぇ~」



 芍薬に、牡丹に、百合。

 どれも花の名前だ。

 芍薬と牡丹は”ピオニー”とも呼ばれ、

 百合は”リリー”とも呼ばれる。



「ふふふん……」


「ふん、嬢ちゃんよ

 何かを決意したような顔だな?」


「分かるか?」


「ふん! 見損なっちゃ困るってもんだ

 嬢ちゃんよりもずっと長生きなんだぜ?

 人が何かを決心したときにはな、

 その瞬間に感じる、”熱い想い”があるんだ」


「熱い想いか……」


「おうよ! ここは過去にも誰かが

 熱い想いを決意した場所なんだ」


「ほおお……かもな」


「そしてその熱いもんには残るもんがある

 そう……誰かがここに残した熱いもんが、

 分かるヤツには分かるってもんだ

 嬢ちゃんにも、分かるだろう?」


「俺にも……分かる?」


「おぅよ!

 今じゃここには誰も残っちゃいねえし、

 もう時間が経ちすぎてるから、

 今じゃ冷めちまったかもしんねぇが

 ”余韻”で分かるってもんなんだよ」


「ふふふ……余韻か」



 正直言うと、

 ファブロの言いたい事は理解できなかったが、

 なんとなく”熱いもの”は分かった気がした。

 それはきっと、

 この垂れ幕に描かれた「花と言葉」。

 その花に意味があるのだと思う。



「芍薬のように誠実であれ

 牡丹のように壮麗に

 百合のように清らかにあれ…か」


「それとね! 団長の軽装アーマーって

 リリー団長さんが装備していた

 軽装アーマーに、そっくりだね!」


「っ!?…………」


「お姉ちゃんが持ってる

 リリー団長の絵があるんだけど、

 ほんと、そっくりだよ!」


「なん……だと?」



 このとき、ビオラの心臓がドクン!と跳ねた!



「俺の軽装アーマーが

 リリー元団長の軽装アーマーと

 そっくり…だと?」


「うん!」

 (何も知らず無邪気に笑うフーリア)


「なんだよ……そうだったのかよ……」



 そうだったのだ。

 ビオラがまだ15歳のグラムレス少年だった頃。

 魔物に囲まれ死を覚悟したとき、

 いつの間にか現れて、

 たった一人で颯爽と魔物を殲滅した、

 今のビオラの軽装アーマーに似た装備を、

 着こなしていた女騎士。


 彼女こそが、ビオラが今も憧れる女騎士。

 かつての女騎士団団長のリリーだったのだ。



「そうだったのか……そうだったんだ……」


「うん! んでね、花言葉ってのがあってね?

 恥じらい、はにかみ、誠実、壮麗、

 あと~~~厳格!」


「なんだそれ?! すげぇな?

 始めは恥じらい、はにかみ、誠実に、

 壮麗に、厳格……か!

 女騎士団に相応しい言葉だよな!

 よし! きめた!

 俺たちは、”王宮ピオニー女騎士団”だ!」


「「ピオニー!?」」


「……ぴおに」


「今度は、俺が掲げる番だな」


「「ピオニー女騎士団!」」


「…………だん」



 ・⋯━☞ピオニー女騎士団施設☜━⋯・



「ふふふ だろ?

 俺たち率いる女騎士団の名前は、

 ”ピオニー”だ!」


「「ピオニー!?」」


「……ぴおに」


「ああ、そうだ!

 マイーヤ王宮ピオニー女騎士団だ!」


「「マイーヤ王宮ピオニー女騎士団!!」」


「………………だん」

 (言うのを、はしょったティミー)


「へっへっへ ま、いいんじゃねえか?」


「そうだ! 俺たちで我らが女騎士団を

 この国で一番の騎士団にしようぜ!

 ”マイーヤにはピオニー女騎士団あり!”

 ってな!!」


「「マイーヤ王宮ピオニー女騎士団!!」」


「………………だん」

 (言うのを、はしょったティミー)


「へっへっへ ま、いいんじゃねえか?」


「「わあ~~~!!」」

 「……ん……いい」

 パチパチパチパチパチ!



 こうして、ビオラ率いる女騎士団は、

「ピオニー女騎士団」となった。



 読んでくださり、ありがとうございます。


 旧女騎士団の象徴である垂れ幕、

 そしてリリー団長の名。


 ビオラは、自分の歩むべき道を見つけ、

 新たな女騎士団の名を決めました。


 次回、ピオニー女騎士団が本格的に動き出します。

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