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女装剤(ある女騎士の事情)  作者: 嬉々ゆう


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第13話 (ビオラの章)団長と呼ばれた日

第13話では、ビオラと三人娘の関係が大きく動き出します。

掃除から始まった何気ないやり取りが、やがて“覚悟”と“本気”を試す戦いへ。

そして、三人娘がついに――。


ビオラが「団長」としての一歩を踏み出す、大切な回です。



 ・⋯━☞女騎士団施設跡☜━⋯・



「さっ! お前たち!

 掃除をするぞ!」


「「「ええ……」」」


「なぁ~んだ?

 その露骨に嫌そうな顔は?」


「「「…………(汗)」」」


「……はぁ。」



 やっぱり、対戦はやっても、掃除はしたくないってか?

 仕方ないので、ビオラはある提案をする。



「よし! なら、こうしよう!」


「「「!……」」」


「今から、俺とお前たち3人と一緒に、

 この施設を掃除する!」


「「「ええ~~~」」」


「それって、ビオラの寝床を確保するだめだよね?」


「うん? うん、まあ、それもあるが…」


「「「ぶぅぶぅ~~~!」」」


「まあ、聞け!」


「「「……」」」



 今日中に、せめて寝る場所だけは確保したい。

 王宮騎士団宿泊棟には、もう俺の部屋はない。

 荷物は全部マジック・バッグの中だ。

 ……つまり、今の俺は根無し草ってわけだ。

 だがな。

 ここが整わなきゃ、訓練もできないし、

 誰かを迎える資格もない。

 女騎士団を名乗るなら、

 まずは“帰る場所”を作らなきゃならないだろ?



「……だろ?」


「確かに……」


「そうですね。たとえ入団希望者が現れたとしても、肝心な女騎士団施設がこの有様では迎え入れができないわ」


「……ん」


「そーゆーこと!

 だが、その前にお前たちだ!」


「「「!!……」」」


「本気で、俺の女騎士団へ入りたいか?」


「「「入りたい!!」」」


「そうか! ならまずは、ちゃんとした訓練場で、お前たち各々の実力を見させてもらいたい!」


「「「おおー!」」」


「……だが、我が女騎士団への正式に入団を認めるには、お前たちも一緒に掃除をして、ここを使えるようにしてからだ!」


「「「えええええ~~~!!」」」



 少し、強引だったかな?

 でも、仕方がないじゃないか!

 俺一人で、どないせぇーちゅーねん!

 こんなの無理だ!

 一人だなんてやだよ!

 面倒くせーよ!

 やりたくねーよ!(本音)


 でも最後には3人とも首を縦に振ってくれた。



 ••✼••2日後••✼••



「よしっ!」


「「「!……」」」


「どうしたんだ? ビオラ」


「ングッ……あのなぁ?」


「うん?」



 相変わらずフーリアは、俺にタメ口だ。

 ……まあ、今はそれでいい。

 どうせ、アラサーには見えないだろうからな。

 だが、正式に女騎士となり、

 俺の部下になるのなら話は別だ。

 俺は威張り散らす上司になるつもりはない。

 だが、団を率いる以上、

 線は引かなきゃならない。

 上下が曖昧なままでは、いずれ誰かが迷う。

 そして迷いは、剣を鈍らせる。

 仲良しごっこでは、騎士団は守れない。



「……もし、お前が正式に女騎士団に入団となれば、俺の直属の部下となる訳だが、それは理解しているよな?」


「……うん! そうだな?」


「そうだな、じゃねぇよ……

 お前はいったい姉から何を学んできたんだ?

 お前、俺を舐めてるだろ?」


「舐めてるって、そんなつもりはないけど?」


「なくても、お前の態度には、

 俺への敬意を感じられないんだよ」


「敬意って、なに?」


「?!……はぁ~~~そこからかよ(汗)」


「……?」



 ダメだこりゃ……

 こうなったら、荒療治しかない!!

 ビオラがとった行動とは?



「よぉーし!

 まだ掃除の途中だが、

 お前たちの”本気度”ってモンを

 見させてもらうからな!」


「「「ええっ?!……」」」


「3人一緒でも構わん! かかって来い!!」


「「「!!……」」」



 ビオラがそう言うと、

 三人娘たちは互いに顔を見合せて、

 ニヤリと笑みを浮かべた。


 だが……



 ••✼••10分後••✼••



 三人娘たちは、

 ビオラ一人にやられて、ボロボロだった。

 ビオラの強さは、圧倒的だった。



「もう終わりか?」



 三人とも、膝をつきながらも顔を上げていた。

 悔しさに歯を食いしばり、

 それでも目だけは逸らさない。


 逃げない。

 折れない。


 ……ならば。



「合格だ」


 三人の肩がびくりと震える。


「今日からお前たちは、女騎士だ」


 しばしの沈黙。


「……え?」


 フーリアが間抜けな声を出す。


「タメ口、直した方がいいですか?」


 その問いに、思わず息が漏れた。


「……今は、好きにしろ」



 そう言うと、三人は顔を見合わせ、

 次の瞬間、泣き笑いの声が訓練場に響いた。



「っダメだったぁ~~~(汗)」


「あいたたたたたっ……(汗)」


「…………痛い」


「どうだ、分かったか!

 これが、本物の女騎士の実力だ!

 お前たちのような、

 ただ、なりきるとは訳が違うぞ!」


「やっぱ、強いよあんた!」


「あったり前だ!

 こう見えても俺はついこの間まで、

 王宮騎士団団長をやってたんだからな!」


「ふふん……流石だわ!

 偉そうに言うだけの事はある」


「…………最強」


「へへん!」



 どうやら三人娘たちは、

 ビオラの実力を認めたようだ。

 それに、ビオラにも何かを

 得られたものがあったようだった。



「しかしだな……正直俺も驚いた」


「「「え?……」」」


「最初俺は、お前たちを舐めてた」


「「「?!……」」」


「すまなかった! この通りだ!」


「「「!!……」」」



 ビオラは、三人娘たちに向かって、

 深々と頭を下げた。



「本音を言うと、掃除を手伝わせた後、

 もう一度一人ずつ対戦して、

 使いモノにならないなら帰すつもりだった

 本当に、申し訳なかった!」


「「「団長!!」」」


「んあっ?!……」










 ビオラは、「団長」と呼ばれた瞬間……

 ほんの一瞬だったが、心が無になった。

 自分の心臓が脈打つ音しか聞こえなかった。

 そんな刹那な間が、とても長く感じた。






 ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……






 この時……


『ああ、ここが俺の居場所なんだ……』


 と、そう思えた。










「へへっ……

 俺を、”団長”と呼んでくれるのか?」


「そりゃあ……強いし」


「うん 私も舐めてた。ごめんなさい」


「…………ごめん」


「いいさ……

 でも、やり合って分かり合えた気がするよ」


「アタイも!」

 「私もだよ!」

  「………ん!」


「そうか……へへっ ありがとよ

 お前たちを、女騎士団長として、

 我が女騎士団への入団を認める!」


「「「団長ぉーーーー!!」」」



 このとき、三人娘は泣いていた。

 なにより、認められたことが嬉しかった。

 それに、本物の女騎士団になれたのだから。

 そして、一人一人に、

 ビオラが感じた事を話した。

 


「これから話すことは、

 俺が感じた素直な気持ちだ!

 喋りが苦手だから、

 上手く言えないかもしれないが、

 とにかく、聞いてくれ!」


「「「はい! 団長!!」」」


「まずは、フーリア!」


「はい!……」


「お前は……」



 ビオラは、三人娘たち一人一人に、

 自分なりに感じたことを話した。



「お前は、考え無しに突っ込むのはやめろ!

 特に、自分よりも格上と思われる相手なら、

 尚更よく相手を見て、

 武器や体型や動きなどから

 自分に何ができるのかを分析する癖をつけろ!

 状況によっては、勝てない相手から

 逃げるのも重要だ!

 仲間の助けを求めるのは恥じゃないぞ!」


「はいっ!」


「次は、ベミーヨ!」


「はい!」



「お前は、自分の力に自信があるようだが、

 今持つ得物を持て余してるぞ!

 尊敬する先輩から譲り受けたモノだろ?

 それを大切にし敬意を持ち、

 使いたい気持ちがあるのは分かる。

 だがな、今の自分に合った得物を使え!

 得物に振り回されてちゃ隙が出る!」


「はっ、はい!」


「最後に、ティミー!」


「……ん!」



「お前は、正直言って騎士には向いてない」


「!!……」

 カランカラァ~ン……



 ティミーは、

 ビオラから突き付けられた言葉に、

 ショックのあまりに、杖を床に落としてしまう。



「「そんなっ?!」」


「…………え……え」



 呆然とする三人娘たち。

 ティミーは、顔面蒼白となっていた。

 せっかく3人揃って、認められたというのに……

 自分だけ女騎士団を追い出されると思った。



 ……ペタン

「…………え……え……え」



 ティミーは力なく兎座りで床に座り込み項垂れる。

 まるで、日も当たらない倉庫の奥底に、

 何年も放置された寂しい人形のように。


 やがて、ガクガクと震えだすティミー。

 そしてその瞳には、とめどなく涙が溢れていた。


 だが、ビオラは……



「だがな? そんなお前にも役割がある!」


「「!……」」


「…………え?」


「無理に騎士をやろうと思わなくていい。

 お前は今まで通りにやればいいんだ。

 それが今のお前に凄く合ってると思う。

 仲間の支援に救護、そして警戒もな?」


「えふっ…えふっ……ええうぅ……すんすん」



 ビオラの言葉に、涙が止まらないティミー。


 絶望の淵で、天から光の筋が伸び、

 その光から救いの手を差し伸べられたようだった。

 ティミーはもう、嬉しさのあまりに言葉にならず、

 しゃくり上げるほどに泣くことで、

 この嬉しさを表す以外に術はなかった。



「へぇあはっ!……ひっく!…ひっく!

 あ”ゔゔゔゔゔ~~~ん! すんすん」


「「すん……すん……」」


「すまんな? 驚かせてしまったか?

 よく親友から言われるんだが、

 俺は、ちぃとばかり言葉足らずらしい。

 でも……それでも聞いてくれるか?」


「はぁうぅうぅうぅ~~~ん!!」


「「ひぃいぃいぃいぃ~~~ん(泣)」」


「本気で凄いと思ってるんだぞぉ?

 追い詰められた状況で冷静な判断!

 大したもんだ! お前は二人の”要”だ!

 お前が居なかったら今の二人は無い……

 と、思っても過言じゃないぞ!

 仲間を、そして自分を信じろ! な?」


「…………ぶぁい!」

 (もう顔が涙と鼻水でびちゃびちゃ)


「「団長ぉ~~~(泣)」」

 (同じく顔が涙と鼻水でめちゃめちゃ)


「……ふっ ばっか野郎!

 なに泣いてんだよ……っておい?」



 ビオラは、口下手だが我ながら上手く言えたと、

 ホッとしていたのだが、3人を見ると、

 今にも襲いかかろうとするような姿勢に、

 思わず戦闘態勢になってしまう。



「お?……ちょっ、待てよ? な?

 何をする気だ? うん?

 とりま、落ち着こうな? な? なて!」



 ビオラは、ジリジリと後退る。

 ティミーもビオラに吸い付くように前進。

 そして壁際に追い詰められ逃げられないビオラ。

 後の二人もジリジリとビオラを追い詰める。



「へあぁあぁあぁあぁ~~~ん!!」

 ガバッ!

 (ビオラに突進して抱きつくティミー)


「うわ!なんで泣くんだ?っておい!

 鼻水とヨダレがぁー!」



 このときのビオラは、

 掃除のために軽装アーマーを脱いでいて、

 ビキニアーマー姿だった。


 ティミーが力いっぱい痛いくらいに、

 ビオラの豊満な胸に顔を埋める。

 そして、グリグリと顔を動かずものだから、

 くすぐったいやら、痛いやらで半泣き状態。

 そんなビオラに構うことなく、

 後の二人もビオラに力いっぱい抱きつく!



「「うわああああ~~~ん!!」」


「あああ~~お前たちまでぇ~~!

 って、いでででででででっ(汗)」


「「団長ぉおぉ~~~!!」」


「らんよおぉおぉ~~~!!」

 (団長ぉおぉ~~~!!)


「あああ~~~んもぉ~~~(泣)」



 失ったはずの居場所が、

 音を立てて戻ってきた。


 この日、たったの3人だけだが、

 正式に女騎士団員となった。


 

三人娘の正式入団回、いかがでしたでしょうか?

ビオラの厳しさと優しさ、三人娘の本気と涙が交差する、物語の大きな節目になりました。


ここから女騎士団は本当の意味で動き始めます。

まだ3人だけの小さな団ですが、彼女たちの未来はきっと大きく広がっていくはずです。


次回もどうぞお楽しみに。

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