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第98話 りんごとさくらんぼ
家に帰ると、
母が慌てた様子で玄関に駆けてきた。
「あっくん!
丁度良かったわ。
お母さんたら、
トマトを買い忘れたの。
悪いけど今から『〇ミヤ』に
お使いに行ってくれないかしら?
好きなお菓子があれば、
一緒に買ってもいいわよ」
「別にお菓子はいらないけど、
いいよ。
行ってくるよ」
俺は1000円札をポケットに入れると
自転車に跨った。
スーパー『〇ミヤ』は
家から自転車で3分のところにある。
店に入ると、
赤い果物で埋め尽くされた
ゴンドラが目に飛び込んできた。
いちご。
りんご。
さくらんぼ。
珍しい物では、
イチジクや柘榴もあった。
俺はりんごの山の中から
「フジ」
と書かれたPOPの下にある
1つを手に取った。
その直後。
「あかね」
と書かれたPOPを見つけた。
俺は少しの間、
逡巡してからフジを戻して、
あかねを籠に入れた。
それから。
野菜コーナーでトマトを選んで、
レジに並んだ。
店を出る時。
俺はふたたび
ゴンドラの前で足を止めた。
りんごの隣に陳列された
さくらんぼの中に
「さおり」
と書かれたPOPを見つけたからだ。
一瞬迷ったが、
俺はそのまま店を出た。




