第65話 彼女のいた場所
夏休みまであと3日と迫った
ある日の昼休み。
俺は隣の教室を覗いた。
そして。
友達と楽しそうに会話をしている
葉山を見つけた。
俺が声を掛けるか迷っていると、
葉山が俺に気付いた。
彼女は席を立つと、
そのまま俺の方へ歩いてきた。
「どうしたの?」
「いや・・別に。
たまたま通りかかったら、
顔が見えたからさ」
「ふうん。
丁度いいわ。
あなたと少し話がしたかったの」
俺達は屋上へ行った。
昼休みの屋上は、
そこそこ賑わっていた。
俺達は西の端まで歩いた。
葉山がフェンスに背を預け、
俺達は向かい合った。
「たまたま通りかかった
って嘘でしょ?」
葉山にそう言われて、
俺は言葉に詰まった。
「い、いや・・。
あの時。
途中ではぐらかされたようで、
気になってたんだ」
「変な人・・」
葉山は目を丸くすると、
くるりと体を翻して、
両手をフェンスにかけた。
「・・でも、ありがとう」
葉山は背を向けたまま言葉を続けた。
「私。
あの後、
家に帰ってから色々と考えたんだ。
1人で悩んでた私のことを、
気にかけてくれる人が
いることが嬉しかった。
暁子ちゃんにも言われたの。
本当に困ったら、
いつでも相談しなよって」
奥川らしいなと思った。
「ねえ。
1つ聞かせてよ」
そう言って振り返った葉山は、
悪戯っ子のように目を輝かせた。
「ん?」
「何で暁子ちゃんと別れたの?」
最も答え難い質問だった。
「・・罪悪感かな」
俺の答えに、
葉山はキョトンと目を丸くした。
「やっぱり。
あなたって変な人ね」
そして葉山は笑った。
「もし助けが必要になったら。
あなたと暁子ちゃんに相談するね」
「ああ。
いつでも待ってるよ」
「じゃあ。
友達が待ってるから戻るね」
葉山は手を振って駆けていった。
俺はさっきまで彼女のいた
場所に立った。
校庭で元気に遊ぶ
子供達の姿が見えた。
俺達のクラスは、
ドッジボールの日だった。
翔太も洋も茜もいた。
奥川もいた。
しかし。
その中に相馬の姿はなかった。
俺は教室へ戻ろうか迷ったが、
結局そのまま校庭へ向かった。




