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黄昏は悲しき堕天使達のシュプール  作者: Mr.M
四章 Recreation 7月

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第64話 ほんの些細な思いやり

それから2日間。

俺は探偵団の3人に頼んで、

葉山の彼氏について探りを入れた。

しかし。

目ぼしい情報は得られなかった。

元々。

葉山は隣クラスの生徒だし、

翔太と洋に関しては、

異性である。

頼みの綱は茜だったが、

女子のネットワークを駆使しても、

葉山に彼氏がいるという話は、

誰の耳にも入っていないらしい。

葉山のクラスメイトは全員が

口を揃えて、

彼女に恋人がいることを否定した。

もしかすると。

葉山の彼氏は

他のクラスの生徒かもしれない。

6年生は全部で3クラス。

当然、

3組に葉山の彼氏はいない。

ならば。

1組の生徒の中に、

該当者がいるのかもしれない。

だが。

予想に反して、

1組にも葉山の彼氏はいなかった。

「葉山に彼氏がいるっていう情報が、

 出鱈目なんだよ」

と煙草の煙を吐き出す洋に、

翔太も茜も

「うんうん」

と頷いた。


それからさらに1週間が過ぎた

ある日の放課後。

校庭でドッジボールをしていると、

葉山が数人の女子生徒と、

楽しそうに歩いている姿を目撃した。

葉山は俺に気付くと、

笑顔で大きく手を振った。

それはまるで。

何かが吹っ切れたかのような

満面の笑みだった。

俺も左手を軽く上げてそれに応えた。

それを見た翔太と洋が邪推したが、

俺は2人の考えを笑って否定した。


その日から。

時折学校で見かける葉山は、

以前のように明るく元気な姿を

取り戻していた。

何かが葉山の心に変化をもたらした。

それは

「前世」にはなく、

「今世」にだけ存在する何か。

つまり。

俺の存在だ。

正確には。

俺のとった行動に他ならない。

俺と葉山の間で交わされた会話は、

取るに足らない世間話だった。

それでも。

俺が、

いや俺と奥川が。

彼女の味方であることは伝わった。

たったそれだけのことが。

彼女を勇気づけ、

生きる力を与えたのだとしたら・・。

悩みを抱えて、

命を絶つ人間は

世の中に少なくない。

そんな人々を救うのは、

案外、

身近な人間のほんの些細な思いやり

なのかもしれない。

俺は葉山の元気な姿を見て、

彼女は「今世」では

死を選ばないだろうと思った。

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