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黄昏は悲しき堕天使達のシュプール  作者: Mr.M
三章 Remnant 6月

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59/136

第59話 女心

6月の末日。

今度は俺が奥川に呼び出された。

場所は体育館ではなく屋上。


俺が屋上に行くと、

奥川はフェンスの前に立って

校庭を見下ろしていた。

他に人はいなかった。

奥川の髪が風になびいて、

そのたびに覗く白いうなじが、

官能的だった。


あの首に後ろから手を回す。

そして力を込めて締め上げる。

スカートを捲り上げ、

下着を剥ぎ取る。

そして。

悲鳴を上げる奥川を後ろから犯す・・。

妄想が俺の下半身を熱くした。

俺は慌てて頭を振って、

唾棄すべき妄想を払い除けた。


「奥川っ!」

俺の声に奥川が振り向いた。

奥川は左手を軽く上げると、

小走りで俺のところへ駆けてきた。


「誰もいないんだな」

「今、

 あそこのドアが閉められて、

 鍵を掛けられたらどうする?」

奥川はそんなことを口にした。

「明日までここで過ごすしかないな」

実際にそんなことが

あるはずはないのだが、

それでも、

俺は奥川の話に付き合うことにした。

「鍵が失くなって、

 誰も気が付かなくて、

 永遠にここに閉じ込められたら?」

「明日になれば、

 皆学校に来るだろ?

 ここから叫べば誰か気付くさ」

「つまんない」

俺の答えに奥川は口を尖らせた。

「一生ここにいるよりいいだろ?」

「もういいっ。

 この話は終わり」

そう言って、

奥川は腕を組んで頬を膨らませた。

なぜかわからないが、

俺は奥川を少しだけ

怒らせたようだった。

「それより葉山のことが

 何かわかったんじゃないのか?」

俺は奥川が本気で怒りだす前に

本題に入った。

「前は色んな話をしたのに、

 今はちょっとしたお喋りも嫌なのね」

「そ、そういうわけじゃないんだ。

 こ、この後、

 用事があるから」

俺は慌てて弁解した。

奥川は

「・・そう」

と言って溜息を吐いた。


「多分、

 実果には彼氏がいるわね」

「えっ?」

俺は思わず、

目を瞬かせた。

「そ、それって。

 同じクラスの男なのか?」

「さあ?

 実果ははっきりと

 彼氏がいるとは言わなかったけど、

 あの様子はきっといるわ。

 でも安心して。

 その相手とは

 うまくいってないみたいよ」

「・・そうなのか」

どうやら、

葉山に彼氏がいるというのは

奥川の推測らしい。

俺はそっと息を吐き出した。

「ねぇ。

 私の話、

 信じてないでしょ?」

「そ、そういうわけじゃないけどさ」

俺は首を振って否定したが、

確かな根拠もない話を、

そのまま信じるわけにはいかない。

他人の心の中を覗くのは、

容易ではない。

心理学者の言葉など、

特に信用に足らない。

出鱈目。

こじつけ。

後付け。

そこに真実はない。

「わかるのよ、

 同じ女だから。

 実果が最近沈んでるのは、

 その相手のせいだと思う」

それでも。

不思議と、

奥川の言葉には説得力があった。

つまり。

葉山実果の自殺の原因は。

失恋なのか。


「・・だから。

 今なら鈴木君にも

 チャンスがあるかもしれないわよ。

 失恋した女の子は寂しいから。

 誰でもいいから優しくしてほしいの」

奥川はそう言って、

髪をかき上げた。

終わった恋を忘れるには

新しい恋をするのがいい。

とはよく聞くが、

それが万人に当てはまるとは限らない。

昔の恋を引きずったまま、

新しい恋に踏み出せない

人間だっている。

奥川。

今の君はどうなんだ?

俺はその言葉をぐっと飲み込んだ。

「助かったよ、

 ありがとう。

 洋に伝えておくよ」

そして代わりに、

俺は礼を言った。

「もう、鈍感なんだからっ」

何が不満だったのか

奥川は頬を膨らませると、

そのまま駆けていった。

俺は閉まっていく

屋上の扉を見つめながら、

子供とはいえ

女心を理解するのは難しいと思った。

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