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黄昏は悲しき堕天使達のシュプール  作者: Mr.M
三章 Remnant 6月

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58/136

第58話 元カノに訊け

6月も残すところ、

あと数日となったある日の放課後。

俺は奥川を呼び出した。

場所は・・。

あまりいい思い出のない・・体育館。


俺は体育館前の階段に腰を下ろし、

奥川を待っていた。

俺より先に教室を出たはずの彼女は

まだ来ていなかった。

奥川と話すのは、

別れを告げたあの日以来、

初めてのことだった。

どう話を切り出せばいいのか。

頭の中であれこれ言葉を並べてみたが、

どれもしっくりこなかった。

その時。

校舎の方から歩いてくる

奥川の姿が見えた。

俺は立ち上がって小さく手を振った。

奥川は俺に気付くと足を止めた。


「・・何?

 話って」

辛うじて声が届く距離だった。

この距離が今の俺達の関係を

如実に物語っていた。

俺が少しだけ歩み寄ると、

奥川が若干身構えたのがわかった。

「元気か?

 奥川」

俺は務めて自然に話しかけた。

「何それ」

奥川は素っ気なく呟くと、

俺から目をそらした。

取り付く島がなかった。

それでも。

ここに来たということは、

話を聞く意思はあるのだろう。

俺は大袈裟にゴホンと咳払いをした。

「隣のクラスの葉山実果と

 仲がいいんだろ?」

俺の質問が予想外だったのか、

奥川は怪訝そうな表情を浮かべた。

「お、奥川が。

 葉山と幼馴染って聞いたんだ」

俺は慌てて言葉を足した。

「・・確かに。

 実果のことは昔から知ってるけど?」

「それなら。

 最近の葉山の様子を

 教えてくれないか?」

「何よそれ。

 昔の彼女に、

 新しい女の子を

 紹介してもらおうってこと?」

奥川の目つきが険しくなった。

俺はその鋭い眼光に気圧されて、

一歩後ずさった。

「ち、違うよ。

 最近。

 葉山の様子がおかしいって

 聞いたから・・。

 少し気になったんだ」

「どうしてあっくんが、

 実果ことを気にするの?」

もっともな質問だった。

俺は言葉に詰まった。

奥川の視線が鋭さを増した。

俺は小さく息を吸った。


「じ、実は・・。

 ひ、洋が。

 葉山のことが好きみたいなんだ。

 だから・・その・・」

「ふーん。

 あの鈴木君がねぇ」

奥川が腕を組んで首を捻った。

「あっ。

 でもこのことは秘密にしてくれ。

 洋はああ見えて繊細だからさ」

俺は額に浮かんだ汗をそっと拭った。

「それで洋が。

 最近、葉山が元気がないって

 気にしててさ」

「へぇ、流石ね。

 鈴木君のこと、

 少し見直したわ。

 やっぱり好きな子の変化には、

 敏感なのね」

そう言って、

奥川はふたたびキッと俺を睨んだ。

しかし。

その表情はどこか寂しそうだった。

俺はコホンと小さく咳払いをして、

奥川から目をそらした。


気まずい沈黙が流れた。


俺は3度目となる咳払いをした。

何を言うべきか考えていた。

その時。

奥川が口を開いた。

「・・わかったわ。

 今度それとなく、

 実果に聞いてみるわ」

「助かるよ」

俺はホッと胸を撫で下ろした。

「それで。

 話はそれだけ?」

そして奥川は伏し目がちに

髪をかき上げた。

「えっ。

 あ、ああ・・」

「・・そう。

 少しでも期待した私が

 馬鹿だったのね」

「えっ・・」

奥川は真っ直ぐに

俺の目を見つめていた。

「何でもない!

 あっくんって頭は良いのに、

 女の子のことは

 何もわかってないのねっ」

奥川に責められている気がして、

俺は少し戸惑った。

「暁子~!」

その時。

校舎の方から奥川を呼ぶ声がした。

「じゃ。

 私この後約束があるから。

 実果のこと、

 何かわかったら、

 その時にまた話しましょ」

「あ、ああ。

 ありがとう」

奥川はくるりと踵を返すと、

駆け出していった。

俺はそんな彼女の後姿に

自然と手を振っていた。

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