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黄昏は悲しき堕天使達のシュプール  作者: Mr.M
三章 Remnant 6月

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57/136

第57話 「相馬沙織」

気が付くと。

屋上から葉山の姿が消えていた。

そしてその時。

俺は葉山実果の自殺に関して、

1つ重要なことを思い出した。

葉山実果は

6年2組の教室のベランダから

身を投げたのだ。

俺は彼女が夏休みの学校を

死に場所に選んだことに、

何か重要な意味がある気がした。


「・・どうしたの?

 あっくん」

茜の声で我に返ると、

3人が訝しげな視線を

俺に向けていた。

俺はゴホンと大袈裟に咳払いをした。

「な、何でもない。

 それよりさ。

 誰か相馬の家庭の事情を

 知らないか?」

そして俺は咄嗟に話題を変えた。

「え?」

「何で相馬なんだ?」

「私は相馬さんとは、

 あまり親しくないから。

 でも。

 それは他の子も同じはずよ」

3人は顔を見合わせてから、

すぐにもう一度、

怪しむような視線を向けてきた。

「い、いや・・。

 相馬って変わってるだろ?

 だから。

 どんな家庭で育ったのかなって

 気になったんだ」

俺は惚けた。

「まあ。

 たしかに変わってるよな」

洋の意見に翔太も

「うんうん」

と頷いた。

「そういえば。

 相馬さんのお母さんって

 家を出ていったのよね?」

「それなら僕も聞いたことがあるよ」

「そのことなら、

 ママが電話で話してたぜ」


洋が言うには。

相馬の両親は相馬が生まれてすぐに、

離婚したらしい。

沙織と姉の紅香は、

母の南陽に引き取られた。

そして今から6年前。

夜の仕事をしていた南陽が、

1人の男を家に連れてきた。

男は仕事をしていなかった。

夜は遅くまで酒を飲み、

朝は遅くまで寝ていた。

それでも。

しばらくは穏やかな日々が続いていた。

ところが。

去年になってその生活は崩れた。

南陽が紅香を連れて、

家を出ていったのだ。

きっと新しい男ができたに違いないと

噂好きの主婦達は口々に話していた。


つまり。

あの夜俺が見た男は、

相馬とは血の繋がりのない

赤の他人ということになる。

「そういえば、

 相馬さんって、

 家でいじめられてるって

 噂があったよね?」

「それな。

 うちのママもそんなこと言ってたな」

「それって『虐待』っていうのよ」

俺は黙って3人の話に耳を傾けていた。

ふと。

あの雨の日の放課後、

1人教室で涙を流していた

相馬の姿が頭に浮かんだ。

俺は堪らず空を見上げた。

もう少し。

もう少しだけ様子を見よう。

相馬が学校から姿を消すのは

卒業式の前。

まだ時間はある。

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