第43話 『熊谷雑貨店』
翌日の放課後。
俺はふたたびナカマイ先生に
呼び出された。
どうやら。
ナカマイ先生は昨夜のうちに、
大吾の家に連絡をしてくれたらしい。
そして。
善は急げの言葉通り、
俺達はこれから
大吾の家を訪ねることになった。
大通りから2本中に入った路地に、
大吾の家はあった。
『熊谷雑貨店』
と書かれた古い看板が
大吾の死を悲しんでいるように見えた。
『熊谷雑貨店』は
大吾が
『少年X襲撃事件』
を起こした年に店を閉める。
そして。
一家は大吾が刺殺された翌年に、
この町を出る。
どちらにせよ。
この手の店はあと5年もすれば、
コンビニエンスストアに
その地位を奪われる。
ナカマイ先生が
「ごめんください」
と言いながら、
戸を引いた。
奥から現れた大吾の母親は、
この店のように疲れて見えた。
俺とナカマイ先生は、
畳の部屋に通された。
仏壇に飾られた大吾の写真が、
俺を責めているような気がして、
俺はそれを直視することが
できなかった。
それから。
俺は大吾の部屋へ案内された。
「あの子が死んでから。
部屋はそのままにしてあるのよ。
あたしはわからないから、
勝手に探してちょうだいね」
そう言って、
大吾の母親は部屋を出ていった。
1人になった俺は部屋を見回した。
勉強机が2つと2段ベッド。
そして。
本棚があった。
大吾は妹と2人で、
この部屋を使っていたようだ。
のんびりと探している暇はなかった。
俺はまず大吾の勉強机から調べた。
机の引き出しを順番に開けていったが、
どこにも目的の物はなかった。
よく考えたら。
デジカメやスマホと違い、
ビデオカメラのような大きな物が、
小さな引き出しに入るわけがないのだ。
俺はもう一度、
ぐるりと部屋を見回した。
しかし。
目に見える範囲には、
それらしき物は見当たらなかった。
押入れの中を調べたが、
そこにもなかった。
あと探していないのは本棚くらいだが、
ここから見ただけで、
そこに無いことはわかる。
そもそも。
ビデオカメラのような物が
目に付くところにあったら、
妹が気付くはずだ。
そして。
それは両親の知ることになる。
なぜビデオカメラのような物が、
この家にあるのか、
大吾には説明できない。
借りていると言えば、
返してこいと言われるだろう。
きっと大吾は発見され難い場所に、
隠したに違いない。
俺は改めて部屋を見回した。
その時。
俺の目が捉えたのは2段ベッドだった。
ベッドの下の床との間の空間だ。
俺はしゃがみ込んで中を覗いた。
奥の方に何かがあるのがわかった。
俺は腹這いになって右手を伸ばした。
指先が取っ手のようなモノに触れた。
俺はそれを掴んで引っ張り出した。
出てきたのは。
アルミ製のアタッシュケースだった。
目的の物はこの中に入っていると、
俺の勘が告げていた。
ただ。
アタッシュケースは
その大きさに比べて軽かった。
揺すってみても、
中で物が動く気配がなかった。
それに。
ビデオカメラとテープを隠すために、
わざわざこんな大きな物を
用意する必要があるのかも疑問だった。
中を確認しようにも、
アタッシュケースには、
鍵が掛かっていた。
そして。
当然だが鍵は見当たらなかった。
大吾の机からも
鍵は見つからなかった。
時間をかけるわけにもいかないし、
俺はこのまま
アタッシュケースごと
持ち帰るしかないと判断した。
もし中身が違っていたら、
後日返せばいい。
そして。
その時にもう一度探せばいい。
大吾の家を出る時。
大吾の母親は
「あの部屋にそんな物があったかねぇ」
と首を傾げていた。




