第42話 助け船
この日の放課後、
俺はナカマイ先生に呼び出された。
翔太と洋が
「後で『Twilight Avenue』に集合な」
と言って、
教室を出ていった。
茜はピアノのレッスンがあるので、
今日は真っ直ぐ家に帰るようだ。
奥川がこっちを見ているのが
わかったが、
俺は気付かないふりをして教室を出た。
そして。
俺は屋上へ向かった。
屋上にはナカマイ先生の他に、
数人の女子生徒がいた。
その中に。
見覚えのある少女がいた。
以前、
茜と2人で『楽園』に行った時、
校庭でドッジボールをしていた少女だ。
男子に負けじとも劣らず、
活躍していた姿を思い出した。
ナカマイ先生は、
少女達から離れたところへ
俺を誘導した。
「さてと。
君は何で今日ここに呼ばれたか、
わかってる?」
ナカマイ先生は、
穏やかな表情を浮かべていた。
どうやら。
怒られるわけではないようだ。
しかし。
俺にはまったく心当たりがなかった。
俺は首を捻った。
「今日一日、
君は元気がなかったでしょう?
授業中も
心ここにあらずって感じで、
先生は心配なのよ」
俺は普段通りに
振舞っていたつもりだったが、
彼女の目を誤魔化すことは、
できなかったようだ。
俺は目の前の若い女教師に、
素直に感心した。
「何か悩みがあるのかな?
先生でよければ相談に乗るから
何でも話して欲しいな」
その瞬間。
俺はビデオテープの回収に、
ナカマイ先生の力を借りることを
思い付いた。
「・・せ、先生。
実はさ・・」
そこで俺は一度言葉を止めた。
そして。
話すべきか迷っている演技をした。
俺はこういう態度が、
相手に与える効果をよく知っていた。
「どうしたの?」
案の定。
ナカマイ先生は心配そうに
俺の顔を覗き込んできた。
「・・実は。
父さんのビデオカメラを、
大吾君に貸したままなんだ。
でも。
大吾君があんなことになって・・。
父さんに内緒で貸したから、
このままだと怒られると思って・・」
俺はそこで言葉を濁して俯いた。
あまりに陳腐な作り話に、
自分でも恥ずかしくなり、
つい笑みがこぼれそうになった。
俺は口元に手を当てて、
それを隠した。
ナカマイ先生は
「何だ、
そうだったの」
と優しい口調で言った。
「じゃあ。
近々先生と熊谷君の家を
訪ねましょう。
先生からうまく説明してあげるわ」
こうして。
思わぬところから助け船がきて、
茜の問題は
解決の目処が立ったのだった。




