第24話 勧誘
「おい」
唐突に。
大吾が口を開いた。
「そんなに固くなるなよ。
別に。
お前と喧嘩する気はねえんだ」
そう言うと、
大吾はフッと目をそらした。
俺達の間に張り詰めていた
緊張の糸が、
若干緩んだのを感じた。
だが。
俺はまだ気を抜かなかった。
相手を油断させておいてというのは、
よくある話だ。
俺は大吾の動きに
細心の注意を払っていた。
次の瞬間。
大吾の口から
予想外の言葉が発せられた。
「お前を俺達の仲間に入れてやる」
大吾の言葉の意味がわからず、
俺は首を傾げた。
「でもな。
ただで仲間に入れるわけには
いかねえ。
そうだろ、お前ら?」
大吾は離れて様子を窺っていた
3人に声を掛けた。
3人は顔を見合わせてから、
一斉に頷いた。
「うん」
「ひひひ」
「そうね」
仲間に誘っておきながら、
ただで仲間に入れるわけには
いかないらしい。
そもそも俺は、
仲間になりたいと思ったことなど
一度もない。
仲間どころか、
関わり合いにすらなりたくないのだ。
しかし。
ここで断るのも、
得策とは思えなかった。
「お前には、
あることをやってもらう」
俺の返事を待たずに、
大吾は話を進めた。
「・・あること?」
「そうだ。
そうすれば。
お前を仲間と認めてやる。
心配するな。
そんな難しいことじゃねえ。
こいつらだって皆やってるんだ」
大吾の言う「こいつら」の中には、
茜も含まれているのだろうか。
それならば。
多少の不安は解消される。
「ま、儀式みたいなものだよ」
翔太が補足したが、
肝心の儀式の内容については、
誰も口にしなかった。
「何をすればいいのか言ってくれ。
それがわからないことには、
返事はできない」
俺は一応抵抗を試みた。
「それは駄目だ。
何をするか言ったら、
お前が裏切る可能性だって
あるからな」
何かわからないことをやれと言う。
滅茶苦茶な理屈だった。
「どうすんだよ」
大吾がイライラしているのが、
その口調からわかった。
「・・それで。
俺は何をすればいいんだ?」
俺は諦めて大吾を見上げた。
大吾はにやりと口元を歪めた。
「ここじゃ無理だから。
場所を変えるぜ」
「塾があるんだが」
と言おうとして俺は止めた。
校門を出たところで、
ピアノのレッスンがあるという茜が、
先に帰っていった。
他の3人は南へ向かって歩き出した。
俺はその後を追った。
家とは正反対の方角だった。




