第14話 長い道のり
この年のゴールデンウィークは、
4連休だった。
まだ学校週5日制が
導入される前のことだ。
ゴールデンウィーク最終日の夜。
俺は奥川のことで頭を悩ませていた。
「馬鹿っ!」
と言って教室を出ていった
彼女の後姿が頭から離れなかった。
20年後であれば。
メールや
アプリのメッセンジャー機能で、
顔を合わせることなく
謝罪ができるのだが。
この時代は、
電話か手紙でしか
連絡をとる手段がなかった。
不便な時代だ。
おまけに。
我が家の電話はリビングにあり、
そこではいつも両親がくつろいでいた。
両親が聞き耳を立てている状況では、
迂闊なことは口にできない。
せめて。
コードレス電話であれば、
部屋からかけることができるのだが。
残念ながら。
我が家の電話は本体と受話器が
しっかりとコードで繋がれていた。
何も解決しないまま。
俺はモヤモヤとした気分で、
ベッドに入った。
翌朝。
俺は重い足取りで学校へ向かった。
通学路に1つだけある信号機に
引っかかった。
たまにこの交差点で、
奥川と会うことがある。
今までは。
それも楽しみの1つだったが、
今朝に限っては、
会わないことを願った。
信号が青に変わって歩き出したが、
俺は後から駆けてきた子供達に、
次々と抜かれていった。
毘沙門川に架かる橋を渡る頃には、
俺は1人になっていた。
真っ直ぐ伸びる道の向こうに、
子供達の姿が小さく見えた。
ふたたびこの人生を
歩むことになったあの朝、
奥川に声をかけられたこの通学路が、
今は果てしなく長い道のりに思えた。




