第135話 未解決事件の解決
池田の話はわかった。
しかし。
「お前の言ってることは、
矛盾してる。
焼死体が発見されて以降、
俺は相馬が
家で男から襲われているのを見た」
俺の言葉に、
池田は小さく頷いた。
「お、男を始末して・・。
て、勅使河原校長は・・。
ど、堂々と相馬さんの家に、
で、出入りすることが、
で、できるようになった・・。
あ、あの市営住宅は、
あ、空き部屋が多くて・・。
て、勅使河原校長にとっては、
こ、この上なく、
つ、都合のいい場所だった・・。
そ、それでも・・。
ま、万が一を警戒して・・。
そ、相馬さんを訪ねる時は、
お、男に似せた変装をしてた・・。
き、君が見たのは・・。
た、多分・・、
へ、変装した、
て、勅使河原校長だよ・・。
ど、同居していた男は、
そ、相馬さんに、
ぼ、暴力を振るってはいたけど、
せ、性的虐待は・・。
し、してなかったんだ・・」
あの時見た男の姿が頭に浮かんだ。
あれも勅使河原の変装だったのか。
勅使河原は、
時と場所によって変装を変えていた。
茜の前では
オールバックの白髪のカツラに
サングラスをかけて、
口髭を生やしていた。
葉山の前では、
一体どんな姿だったのか。
池田の話を信じるのであれば、
相馬は自らの手で、
男を殺したにもかかわらず、
平穏な日常はやってこなかった。
それどころか。
勅使河原による
より酷い地獄が待っていた。
「そ、相馬さんは・・。
て、勅使河原校長の性癖に・・。
き、気付いてたんだと思う・・。
そ、そのうえで・・。
て、勅使河原校長と・・。
け、『契約』したんだよ・・」
「契約・・」
そんなわけはない。
あの夜見た相馬は、
本当に嫌がっていた。
相馬に覚悟があったのなら、
抵抗はしなかったはず。
次の瞬間。
俺は勅使河原のもう1つの性癖を
思い出した。
加虐性向。
相馬はそれも知ったうえで、
あえて抵抗する演技を
していたのだとしたら。
「そ、相馬さんは初めから・・。
て、勅使河原校長も、
こ、殺すつもりだったんだ・・。
ど、同居している男を、
こ、殺した場合・・。
ま、真っ先に疑われるのは、
じ、自分だとわかってた・・。
だ、だから・・。
し、死体を、
し、小学生では運べない場所まで、
い、移動させる必要があった・・。
そ、そして・・。
ね、念には念を入れて・・。
も、燃やすことにした・・。
そ、相馬さんにとっては・・。
お、男の死体の処理が、
い、一番厄介な問題だったんだ・・」
池田は淡々と話し続けていた。
俺はただその言葉を
黙って聞いていた。
「い、一方で・・。
か、通ってる学校の校長が、
し、失踪したところで・・。
い、一生徒である相馬さんと、
む、結び付ける人はいない・・。
そ、それがわかっていたからこそ、
そ、相馬さんは・・。
こ、校長を殺すことにした・・。
こ、今度は誰の力も借りずに・・。
ひ、1人で・・。
す、すべてを処理したんだ・・。
か、彼女は・・。
て、勅使河原校長の死体を、
ば、バラバラにして・・。
う、海へ捨てた・・」
俺はごくりと唾を飲み込んだ。
バラバラ死体・・。
死体をバラバラにすることは、
いくつかのメリットがある。
顔や手が見つからなければ、
身元の特定が困難になる。
何よりも。
持ち運びが容易になる、
というのが最も大きな利点だ。
バラバラにしたパーツを
深夜の海に投げ捨てている
相馬の姿が頭に浮かんで、
背筋に冷たいモノが走った。
海に沈んだ勅使河原の体は
魚の餌になったのだろうか。
死体がなければ事件にすらならない。
しかし・・。
死体をバラバラにする作業は、
並大抵の精神力ではできない。
しかも。
それを少女1人でやるとなれば。
それはすでに。
俺の想像の及ばない領域だ。
それに・・。
「小学生の女の子が、
死体をバラバラにすることを
思い付くなんて・・」
知らず知らずのうちに、
口から言葉が漏れていた。
「そ、相馬さんは・・。
み、ミステリ小説が、
す、好きだった・・。
き、きっと・・。
し、小説からヒントを、
え、得たんじゃないかな・・」
完全には納得できなかったが、
それでも俺は小さく頷いた。
「そ、それが丁度・・。
そ、卒業式の、
い、1週間前の出来事なんだ・・。
だ、だから・・。
に、2学期の・・。
し、終業式のタイミングで、
て、勅使河原校長が失踪したのは、
お、おかしいんだよ・・。
ぼ、僕は・・。
て、勅使河原校長の失踪には、
そ、相馬さんではない、
べ、別の誰かが・・。
か、関わっていると考えた・・」




