第133話 異端
池田圭。
この男はいつも突然現れる。
「は、話があるんだけど・・」
その声は誰もいないこの教室でも、
耳を澄ませていなければ
聞き取れないほど、
小さかった。
「皆、
外で待ってるぞ。
話なら後にしてくれ」
俺は池田を相手にせず、
そのまま教室を出ようとした。
「い、一体・・。
き、君は・・。
な、何者なの・・?」
池田の言葉に俺は足を止めた。
そして。
ゆっくりと振り返って、
池田と向き合った。
池田は俺と目が合うと
すぐに視線をそらした。
「1年間。
共に過ごしたクラスメイトに、
その質問はおかしいだろ?」
「だ、だからこそ・・。
き、君は・・。
ぼ、僕の知ってる、
あ、あっくんじゃない・・」
池田の言葉が小さな棘となって、
俺の胸に刺さった。
その棘は一瞬だけ、
俺の鼓動を止めた。
「お前とは・・。
それほど親しかったわけじゃない。
そんなお前が。
俺の何を知ってるんだ?」
池田は小さく首を振った。
「き、君だけが・・。
い、異端なんだ・・」
異端。
・・その言葉を。
俺は以前にもこの男の口から、
聞いたことがある。
あの時の違和感の正体が今わかった。
小学生は
「異端」
なんていう言葉は使わない。
「こ、この1年・・。
な、何かが少しずつ、
か、変わっていった・・。
は、初めの違和感は奥川さん・・」
俺の思考を無視して、
池田の話は続いていた。
「か、彼女と君は・・。
ほ、本来なら交わることは、
な、なかったはずなのに・・」
交わるという言葉に、
俺は大人の世界の下品な匂いを
嗅ぎとった。
しかし。
池田にそんな意図がないことは、
わかっていた。
「男と女なんて。
ちょっとしたことで
くっついたり離れたりするだろ?」
「ほ、他にも・・。
き、君が、
く、熊谷君のグループに、
は、入ったこと・・。
そ、そのすぐ後で・・。
く、熊谷君が死んだこと・・」
「大吾の死が
俺のせいだと言いたいのか?」
池田はそれには答えなかった。
「そ、そして・・。
さ、猿田先生も死んだ・・」
「他殺説を唱えていた
お前の出した結論は、
俺が犯人ということか?」
池田はそれにも答えなかった。
「に、2学期の終業式の日に、
き、聞かされた、
は、畑中先生の突然の離職も・・。
そ、そして・・。
と、時を同じくして、
て、勅使河原校長が失踪した・・」
俺は動揺を悟られないように、
小さく息を吐き出した。
「き、極めつけは・・。
そ、相馬さん・・。
か、彼女は・・。
ほ、本来なら・・。
そ、卒業式の3日前に、
し、失踪するはずだった・・」
その言葉に。
俺はハンマーで
頭を殴られたかのような
衝撃を受けた。




