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黄昏は悲しき堕天使達のシュプール  作者: Mr.M
九章 Revenge 12月

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127/136

第127話 見たことのない男

教室の時計が

17時を指したのを確認して、

俺は廊下へ出た。

誰もいない静かな廊下を歩いて、

屋上へ向かった。

屋上の扉の前に立って、

ノブに手を掛ける。

当然。

扉は開かない。

俺はポケットから鍵を取り出し、

鍵穴に差し込んだ。

鍵を捻るとカチリと音がした。

ノブを回して、

体重を乗せると扉はゆっくりと開いた。


太陽はつい先ほど、

西の空へ沈んだばかりだった。

俺は1人、

フェンス越しに校庭を見下ろした。

校庭には誰もいなかった。

頬に風を感じた。

その風は冷たく、

昼間の暖かさが

嘘のように気温が下がっていた。

今夜から雪が降る。

この2度目の歴史の中でも、

唯一変わらないものがある。

人の手が及ばないもの。

それは自然現象だ。

俺はフェンスに沿って

ゆっくりと西へ歩いた。

最西端まで来たところで足を止めた。

俺はポケットから封筒を出すと、

それを丸めて

フェンスの網へ突っ込んだ。

これなら。

風が吹いても、

飛ばされることはないだろう。

ふたたび中央付近まで戻り、

さきほどのフェンスの方を振り返ると、

辛うじて封筒の存在が確認できた。

ふと。

ボス猿の死体を見つけた

あの日のことを思い出した。

花壇に倒れていたボス猿の姿が

脳裏に浮かんで、

俺は慌てて頭を振った。


肌に触れる空気が冷たさを増した。

また少し気温が下がったようだ。

もっと着込んでくるべきだったと

俺は少し後悔した。

その時。

屋上の扉が開いた。


扉の陰から男が顔を出した。

男はキョロキョロと

辺りを窺っていたが、

俺に気付くと、

警戒しながら

ゆっくりとこちらへ歩いてきた。

お互いの顔が

はっきりと見える位置まで来て、

男は足を止めた。

俺と男の距離は10mほど離れていた。


男は茜の話した通り、

オールバックの白髪に

サングラスをかけて、

口髭を生やしていた。

男が僅かに動揺しているのがわかった。

俺はそれを見逃さず、

一歩だけ前に出た。

俺は男を、

頭のてっぺんから爪先まで、

じっくりと観察した。

信じられないことだが。

本当に見たことのない男だった。

3人の内の誰かが、

変装していると考えた場合、

前田利通ではないことは明らかだった。

前田利通に比べて、

明らかに背が低い。

つまり。

伊達孝允か織田隆盛ということになる。

しかし。

今更、

男の正体など、

どうでもよかった。

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