↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏は悲しき堕天使達のシュプール  作者: Mr.M
九章 Revenge 12月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
126/136

第126話 今学期最後の授業

12月22日。金曜日。

澄み渡る冬の朝空だった。

朝食を食べながらテレビを見ていると、

天気予報が始まった。

若く容姿の整った

女性の気象予報士が、

「日中は15度まで

 気温が上がるでしょう」

と言っていた。

「深夜から明日の朝にかけては、

 多少寒さが増すでしょう」

とも言っていた。

しかし。

それは多少どころの話ではない。

天気は夕方から崩れ、

夜になれば雪が舞う。


玄関で靴を履いていると、

俺の足元のゴミ袋を見た母が

不思議そうに首を傾げた。

20年後では

多くの自治体で禁止になっている

中の見えない黒いゴミ袋だ。

俺は母に探りを入れられる前に、

傘立てから傘を取って家を出た。

後ろから

「今日は雨は降らないわよ」

という母の声が聞こえた。


校門の前で茜と会った。

「おはよう、あっくん」

そう言って、

茜は俺の持っている黒いゴミ袋を見て、

眉をひそめた。

靴箱で茜が俺に目で訴えてきた。

俺は茜を玄関の脇へ連れ出した。

「入ってたんだな?」

茜はこくりと頷いて、

ポケットから封筒を出した。

中には紙と鍵が入っていた。

俺は茜に気付かれないように、

口元を緩めた。

計画通りだった。

昨日も、

茜は男から呼び出しを受けていた。

その時。

俺は緊急時の連絡方法に従って、

メッセージを書いた紙を

靴箱へ入れるよう茜に指示した。

メッセージの内容はこうだ。

『今日は家の用事で、

 放課後すぐに帰らないといけません。

 明日なら大丈夫です』

男はまんまとその餌に食いついた。

今日は今学期最後の授業の日。

つまり。

男にとっても、

今学期最後の機会ということになる。

俺は、

男がこの誘いに必ず乗ってくると

思っていた。

一番の問題は鍵のことだったが、

どうやらそれも解決したようだ。


「・・あっくん?」

「大丈夫。

 今日で終わらせるから。

 茜は何も心配しなくていい」

そう言って、

俺は茜から紙と鍵を受け取った。

「あとは俺に任せろ」

不安そうにこちらを見つめる茜に、

俺は笑顔を向けた。

そして。

茜を先に教室へ行かせた。

俺はその足で屋上への階段を上がった。

それから。

扉の手前に置かれた

掃除用具入れの中にゴミ袋を隠した。

屋上が封鎖されている今、

ここに近づく者はいない。

もっとも安全な隠し場所だった。


教室へ行くと、

茜は机に座っていた。

茜は俺に向かって、

不安そうに小さく手を振った。

その時。

チャイムが鳴り、

ナカマイ先生が教室に入ってきた。

朝の挨拶が終わっても、

ナカマイ先生は

しばらく口を開かなかった。

子供達が騒つき始めると、

ナカマイ先生は大きく息を吐き、

静かに出席を取り始めた。


昼休みになると。

ナカマイ先生の提案で、

クラス全員で大縄跳びを

することになった。

今日は相馬も池田も参加するようで、

教室に残っているのは、

俺だけだった。

俺はベランダに出た。


天気予報の通り、

12月にしては暖かかった。

校庭では子供達が

元気に走り回っていた。

6年3組の子供達を探すと、

砂場の横に集まっていた。

そこへ駆けていく

ナカマイ先生の姿も見えた。

俺は茜から受け取った紙を広げた。

『17時30分』

ただそれだけが書かれていた。

俺は紙を破ると空へ投げた。


いつもと変わらない帰りの会が終わり、

子供達は次々に

教室を飛び出していった。

結局この日。

ナカマイ先生は自らの進退について、

何も話さなかった。

子供達は来週の終業式の日に、

聞かされることになるのか。

それとも。

ナカマイ先生は何も話さずに、

子供達の前から姿を消すつもりなのか。

茜が俺の所へ来た。

「あっくん・・?」

不安そうな表情の茜に、

俺は

「心配するな」

と言って笑った。

翔太と洋もやって来た。

「どうしたのさ?」

「『楽園』に行こうぜ」

俺は用事があると嘘を吐いた。

「3人で行ってこいよ」

翔太と洋は渋々納得したが、

茜は最後まで不安そうな視線を

俺に向けていた。

俺は笑顔で3人を教室から送り出した。


「サヨナラ」

背後から声がした。

振り向くと、

相馬が立っていた。

相馬はすぐに目をそらして、

足早に廊下へ消えていった。

教室には俺1人が残された。

いや。

もう1人いた。

池田圭。

池田は俺の視線に気付くと、

鞄を持って立ち上がった。

「さ、さようなら・・」

「ああ、またな」

教室の入口で池田は足を止めると、

こちらを振り返った。

「あ、朝の予報だと・・。

 あ、暖かいって言ってたけど、

 す、すごく寒くなってきたね・・」

池田はそんなことを言った。

「こ、今夜は天気が崩れそうだね・・」

「そうだな」

俺は適当に相槌を打った。

「し、終業式の日は・・。

 ね、念のために・・。

 ゆ、雪に気を付けた方がいいね・・」

池田はそれだけ言うと、

俺の返事を待たずに、

教室から出ていった。

今度こそ。

俺だけが教室に残された。

時計を見ると、

16時を少し過ぎていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。