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黄昏は悲しき堕天使達のシュプール  作者: Mr.M
九章 Revenge 12月

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114/136

第114話 ピアノの調べ

12月14日。木曜日。

この日も茜は学校を休んだ。

朝礼でナカマイ先生が

「茜ちゃんはまだ熱が引かないので、

 今日もお休みです」

と説明した。


そして昼休み。

俺は翔太から

またベランダに連れ出された。

「どうしたんだよ、翔太。

 今日はドッジボールだろ?

 皆急いでグラウンドに行ったぞ」

「・・実は茜ちゃんのことけど」

翔太から話がある時は

いつも茜のことだった。

「・・昨日さ。

 茜ちゃんの家に行ったんだ」

翔太は認めないかもしれないが、

きっとまだ翔太は

茜のことが好きなのだ。

好きでもない女の子のことで、

頭を悩ませる人間はいない。

「お見舞いか?」

翔太は頷いてから徐に話し始めた。



黄昏時。

翔太は茜の家を目指して

小道を歩いていた。

どこからともなく聞こえてくる

ピアノの調べは

茜の家に近づくにつれて、

次第に大きくなっていった。

その音色は

茜の家から聞こえていた。

門の前で翔太は足を止めた。

少し迷った挙句、

翔太は意を決して門をくぐった。

しかし。

翔太は玄関へ向かわず、

庭へ回った。

そして。

庭に面した窓から

ピアノを弾いている茜の姿を見た。



「ね、どう思う?あっくん」

翔太はピアノを弾いていた茜を見て、

風邪はすっかり治ったと

思ったらしい。

にもかかわらず。

茜は今日も学校を休んでいる。

翔太はそこに引っかかっているのだ。

「茜は何て言ってたんだ?」

「・・じ、実は。

 茜ちゃんには会わずに帰ったんだ」

バツが悪そうに頭を掻く翔太を見て、

俺は少し引っかかった。

「なぁ、翔太。

 もしかして。

 茜と喧嘩でもしたか?」

翔太は力なく首を振った。

「洋は何か言ってたか?」

「うん。

 『この時期の風邪は、

 拗らせると長いからな』

 だって。

 呑気なんだよ、洋は」

そう言って、

翔太は口を尖らせた。

「翔太の考えすぎじゃないか?

 俺も洋の意見に賛成だけどな。

 翔太が見たその時、

 たまたま気分が良くて、

 ピアノを弾いてたんじゃないのか?

 学校を休んでるからといって、

 一日中、

 寝てる必要もないだろ?」

「でもその後。

 ピアノの先生の姿も見えたんだよ。

 風邪なら、

 レッスンも休みのはずだよ」

翔太の言い分はもっともだった。

しかし。

その時間には治っていた風邪が、

夜になって

ふたたびぶり返したとも考えられる。

現に茜は学校を休んでいる。

「翔太が心配するのもわかるけどさ、

 明日まで待ってみよう。

 もし明日も茜が休んだら、

 その時は俺が様子を見てこよう」

「・・わかったよ。

 あっくんがそう言うなら」

翔太はまだ何か言いたげだったが、

最終的に首を縦に振った。

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