メスガキ女神は容赦無さ過ぎるッッッ!!!
「アイギス、今のはッ!?」
「んー?
あたしにも何かは分からないけど、お兄さんが危なかったから助けたのーっ!」
「そっか……。
ありがとうアイギス」
ラグニアはアイギスの頭を優しく撫でてやる。
「えへ…えへへ…♡」
アイギスは幸せそうにラグニアを抱き抱えながら、ティシーの背後へと着地する。
「ティシー、『アレ』って……」
「………オニーサンにはちょっっっと荷が重いかな〜〜〜???
此処はティシーが行くね〜〜〜♡♡♡」
土煙が消えていない落下地点へと歩き、近付いていく。
――バキバキバギギギギギギィィィィィンッ!!
土煙の左側半分が凍り付き、土煙の氷が割れると氷山のような氷の柱が地面から突き出して来る。
――ドプッドプドプドプッッッゴォォォッッ!!
土煙の右側半分の地面が溶け落ち、土煙が燃え散ると赤白く光る灼熱のマグマが噴き出して来る。
「……嗚呼、愛しのメドゥーサー……。私の可愛い可愛い妹よ……眼球だけになってしまうだなんて……なんて可哀想な子なの愛しのメドゥーサー……安心してね愛しのメドゥーサー……貴女の怨み・辛み・妬み・無念・後悔・憤怒、全てをこの私が晴らしてあげる……」
氷柱に囲われた場所に立っている女はメドゥーサーの眼球を二つ共手に取ると、眼球に向かって話し掛けている。
青白い肌の色にはメドゥーサーと同じく鱗が視認出来る。十代後半のような見た目の少女、七三で分けられた前髪。両の眼は凍て付く氷のような冷たさを纏う青白い蛇の眼をしていた。真っ青なドレスを着ていて、メドゥーサーとは対照的に露出は少ない。
その両の眼でティシーを睨み付けていた。
「……成る程……『魔眼』の類の完全無効化……石化に頼ってしまう愛しのメドゥーサーが勝てない訳ね……」
「ハッ!!魔眼なんざ効かなくてもカンケーねェ!!
あーしがあのガキを溶かしてやるよッ!!」
マグマの中心に居た少女は好戦的な表情でティシーを睨み付けていた。
他の二体とは異なりツリ目気味の少女。14程の齢に見える彼女の髪はマグマのように常に赤白く光輝き流動している。前髪は右眼には少しかかり、左眼側は上げて後ろへ垂らしていた。
瞳は蛇のようだが髪の毛同様にマグマの如く燃え滾っている。
肌はコーラルピンクで二体同様鱗が見える。服は漆黒のボディスーツのようなものを着ている。
「……愛しの『エウ』、貴女は此処に居なさい。アレは私が倒します」
「はァ!?アネキ、何言ッて――」
「命令です、此処に居なさい」
「――ッ!!」
青白い肌の少女の一睨みで『エウ』と呼ばれた少女は身体を硬直させる。『魔眼』の能力では無く、純粋な気迫に気圧された。
少女は一人でティシーの前に立つ。
「私は『ステンスノー・ゴルゴンゾーラ』。ゴルゴンゾーラ三姉妹の長女。
貴女……『女神』、なのでしょう?」
「なッ――!?」
エウは眼を見開く。
もしも。もしも本当にステンスノーの予想通り『女神』なのだとしたら、幾らこの二体が強い魔人だろうと、とても勝てる相手ではなかった。
『女神』とは『本来この地上に居ない筈の上位生命体』でありこの世界の理から外れた存在。
この地上で勝てる者が居るとするならば……
モンスターの頂点で有る魔人から更に進化した存在である『魔神』。
この地上に五体しか存在しない伝説の種族『竜神』である『五大竜神』。
人間ながらに限界を超越し『人の概念から外れし者』とされる『鬼神』。
これら『神』の名を冠する存在しか居ないだろう。
もし本当に目の前の相手が『女神』なら、勝負にすらならない負け戦なのだ。
「……女神……確かに女神様ならば、聖獣様が居る事も、メドゥーサーを倒せる人間……?にも、全てに合点がいく……」
フォースも俄には信じ難かったが、今の状況の全てがティシーが女神であると告げていた。
「せいか〜〜〜い☆☆☆
ティシーポネー・エーリュニース、女神だよ♡♡♡」
「……殺戮の女神、ね。
そう、ならばティシーポネー。貴女に願いがある」
「ふ〜〜〜ん???なになになに〜〜〜???
聞くだけ聞いてあげる♡♡♡」
「私は貴女を本気で殺しに行く。
……しかし。私が敗れた場合……。
其処に居る私の愛しの妹……『エウリュ=アーレ・ゴルゴンゾーラ』の命だけは助けて貰いたい」
姉の予想外の提案を聞いたエウは眼を見開き叫ぶ。
「ッ!?アネキッ!?何言ってンだよッ!!」
「此処で二人で逃げても、到底逃げ切れないのは理解している。
そして私は元より逃げるつもりは無い。
……が、愛しの妹は関係無い。
妹の命は助けて貰いたい」
「別に良いけど〜〜〜???」
考える様子も無くティシーは提案を承諾した。殺戮の女神といえど殺戮が好きなわけでは無い。
「……感謝する」
「ッ!!勝手に決めンなよアネキッ!!
あーしだって戦え――」
「エウ。愛しのエウ。お前は……生きろ」
先程とは違う、愛する妹を見る姉の瞳に、エウは何かを言いかけるも、何も言えなくなってしまった。
「では、行かせてもらう!」
「どーーーぞーーー♡♡♡」
ティシーはその場から動かなかった。
先制は出来た筈。
しかしステンスノーの攻撃を待ち受けていた。
覚悟を決めた彼女が何も出来ず一方的に殺されたら――?
容赦の無いティシーも善の心は持ち合わせている。
ステンスノーはメドゥーサーのように形態変化はしなかった。全ての魔力を右腕に込め、一撃に全てを込めて放つ――!!
「永久凍土ッ!!!!!」
――バキバキバギギギギギギィィィィィ!!!
凄まじい冷風が嵐のように吹き建物や人間を氷漬けにする!!
アイギスは抱っこしたままのラグニアを連れ、光速で後方の空へと跳び、そのまま空中へ留まり離れた上空から見守っていた。
ティシーは何もせずに技をモロに喰らった。
「アハハッ!!あの女神、アネキの『永久凍土』をモロに喰らいやがったッ!!
アネキの勝ちだッ!!女神ッつーのも大した事ねェなァッ!?」
エウはステンスノーの勝ちを確信し勝利を宣言した。
「……やはり、私程度では無理でしたか」
「……は??アネキ……??」
しかしステンスノーは両の眼を瞑り、敗北を悟っていた。
「ティシーポネー、妹の事は頼みましたよ。
……エウ。私は貴女を心の底から愛しています。
どうか幸せになってね、可愛い愛しのエウ……」
ステンスノーは振り返りエウへと満面の笑みを向けた。
――バギバギギギギギギバギバギバギバギバギバギバギギギギギギバギギギギギギバギバギバギギギギギギバギギギギギギバキバキバギギギギギギィィィィィ!!!
「……あ……アネ……キ……??」
ステンスノーの永久凍土がアイスブルーに凍り、そのアイスブルーの氷は更にステンスノーをも凍らせていく。
ティシーの瞳は両の眼がアイスブルーに変化していた。
「………ステンスノー・ゴルゴンゾーラ。
殺戮の女神、ティシーポネー・エーリュニースの何に於いて、貴女の願いは必ず叶える。安心して眠るがいい」
ティシーが拳を握ると氷が砕け散り、ステンスノーの身体は粉々になり、消え失せた。
ステンスノーは不老不死だったが、全ての細胞が凍結され、修復不可能な程に粉々にされてしまった為、『死』を迎えてしまった。
この世界に『完全な不老不死は存在しない』のである。
ティシーの慈悲か、そもそも壊す事が不可能なのか、メドゥーサーの魔眼とステンスノーの魔眼が4つ、その場へと落ちてほんの少し転がる。
「あ……アネキ……あ……ッ……
ん……ちゃん……お姉……ちゃん……
お姉ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!!!!!」
エウの悲痛な叫び声だけが、アダマス王国のギルド前の広場に響き渡っていた。
設定
ステンスノー・ゴルゴンゾーラ
ゴルゴンゾーラ三姉妹の長女の魔人。青白い肌には鱗。見た目は十代後半。前髪七三のおでこ出し青髪ロング。両の眼が凍て付く氷のような冷たさを纏う青白い蛇の眼。真っ青なドレス。
『魔眼』は『凍土』。純粋な氷では無く氷属性の石化のような物。メドゥーサーとは違い魔眼を使わなくても戦闘が可能。形態変化はそもそも存在しない。不老不死。
妹二人がとても大切。
エウリュ=アーレ・ゴルゴンゾーラ
ゴルゴンゾーラ三姉妹の次女の魔人。愛称は『エウ』。三姉妹で唯一のツリ目で見た目年齢14程度。髪はマグマのように常に光輝き流動している。実際に垂れているわけではなく流れる溶岩の如く蠢いているイメージ。前髪は右眼には少しかかり、左眼側は上げて後ろへ垂らしている。左眼側の側面は耳に掛けたアシメ。鎖骨くらいの長さ。瞳は他の姉妹同様に蛇で髪の毛同様にマグマの如く燃え滾る。
肌はコーラルピンクで鱗有り。服は漆黒のボディスーツ。中央のファスナーを臍の下まで開けている。袖はノースリーブ。下は股下5センチ程度。肘上迄の同素材グローブと膝上迄の同素材のヒールブーツを着用している。
ステンスノーの事が大好きで何時もメドゥーサーと取り合っていた為、メドゥーサーの死に関しては無関心。




