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メスガキ聖獣は可愛過ぎるッッッ!!!

 大都市、『アダマス王国』。


 この世界最大の大陸である『メガロスティア大陸』に於いて『五大国』と称される程の大国。


 名前の通りアダマス……ダイヤモンド等の鉱石やアダマス系統のモンスターの素材によって経済を回している国。その貴重な鉱石や素材を用いた武具と防具を求めて冒険家達も集まる物流の要所である。


 『アダマス商会』はメガロスティア大陸でも随一の商会で、他国との貿易も盛んに行っている。


 勿論この大国は防衛面も徹底しており、強固なアダマス製の防壁で周囲を覆っている。防壁より高い上空はAランク以上の上級魔導士による結界が24時間体制で張られ続けている。






「…ん。


 アダマス王国の上の方…強力な結界が張ってあるみたいだ」


 空を駆けているアイギスは結界の類に長けている為、普通の者には見えないアダマス王国の結界も遥か遠方から察知していた。


「本当に大きい国だね。お城もこの距離からでも大きく見えるよ……」


 アダマス王国の王城。アダマス素材なのだろうか、宝石の如く凄まじい輝きを放っていた。


「取り敢えずギルドを探そーーー!!!


 アイギス、突撃ーーー!!!」


「私に任せろ…っ!」




 ドラゴンの解体を早くしたい無邪気なメスガキ女神が一体。


 ラグニアに良い処を見せたいメスガキ聖獣が一体。


 記憶と共に常識が欠落してしまっている異世界転生者が一人。




 止める者なんて存在しなかった。






 ―バギィィィィィィィィィィィンッ!






 アイギスの螺旋状の角が抵抗すらなくあっさりと結界を突き破り、轟音と共に結界が煌めきながら砕け散る!


 割れた結界は鏡のように光を反射させながら地面へと落ちる前に光の塵となり消失する。地上の人々は何事かと上を見上げる。


「も、モノケロース……!?」


「聖獣が如何(どう)してこの王国へ!?」


 聖獣は聖なる獣とはいえ、それがイコール人間の味方……という認識では無かった。実際、人間を手に掛ける聖獣も存在する。


 ましてや今まさに結界を破壊した存在。王国の人々が警戒するのは至極当然だった。




「け、結界が破られました――ッ!!相手は聖獣モノケロース!!相手は四聖獣のモノケロースです!!」


「直ぐに結界を張り直せッ!!今直ぐだッ!!急げッ!!」


 魔導士達が慌てながらも、第二第三の被害を防ぐべく早急に結界を張り直した。


「ギルドへ連絡しろッ!!冒険者達を呼べるだけ呼べッ!!Aランク……いや、ダメだ!!Sランク以上の者達をッ!!」


 Aランクの魔導士大勢で張っていた結界をいとも容易く突き破った存在……。Aランク程度では力不足なのは明白だった。




 アイギスは下の騒ぎを一切気にも留めずにギルドを探して優雅に駆けていく。


 人々は恐怖を覚えながらもその姿を美しいとさえ思ってしまっていた。


「ギルド…大きい建物…。


 …ん、コレか…?」


 王城や防壁と同じくアダマスで出来ているであろう大きな建物を見付けると空中で静止する。オルコスのギルドの数倍はある、五大国のギルドに相応しい荘厳な建物だった。


 アイギスは更に近付こうとするが、ギルドから出てくる人々……その者達から発せられる、警戒・敵意・恐怖・動揺、それらがアイギスの動きを止める。


「…」


「よいしょっと〜〜〜!!!


 おーーー!!!


 おっきいねーーー!!!」


 ティシーはアイギスから飛び降りると人々を気にも止めずに建物へ近付いていく。


 飛び降りて初めて背中に居たティシーの存在を認識した。そしてラグニアが乗っている事も。


「ま、待てッ!お前らは何者だッ!?何故四聖獣に乗っているッ!?」


 一人の筋肉質の男が問い掛ける。身体と装備はそこそこ強そうにも見えるが、この冷や汗と動揺の具合から想像するにSランクには至っていないのだろう。




 ティシーはそんな彼の様子を気にする素振りも見せずにドヤ顔をしてみせる。


「ティシー達は、冒険者だよ〜〜〜???


 ほらほらほら、ギルドカード♡♡♡」


 それを見ればティシーがFランクの冒険者だと遠くからでも確認出来た。カードはランク毎に色分けをされていたからだ。


「え、Fランクの駆け出し冒険者が四聖獣に乗って……ッ!?


 な、何故王国の結界を破壊したッ!!


 これはこの王国への敵対行為だぞッ!?」


「ティシー達、ちょっと急いでたからさーーー。


 あの聖獣が勝手に結界を壊しちゃったんだよね〜〜〜。


 ごめーんね♡♡♡」


 可愛く言っているがそんな事では済まされない大事件だった。


「…私の所為にするとは」


 アイギスは不服そうに降りてくる。ラグニアが地面へ降りると、アイギスは有角人形態へと変貌した。


「ふんっ!


 あたしは聖獣アイギス!


 此処にギルドカードを作りに来たの!」


「……」


 冒険者達は全員動けずに立ち尽くしていた。




「ハンッ!!


 おい聖獣ゥ……お前、此処へギルドカードを作りに来た、だとォ……?」


 アイギス達三人は全く感じなかったが、他の冒険者達は全員死の恐怖を感じた。


 ギルドからゆっくりと出てきたこの男は凄まじい殺気を放っていた。


「王国の大事な結界を破壊しィ……平和を脅かしたお前をよォ、冒険家にするとでも本気で思ッてやがるのかァ――?アァ!?」


 アダマス素材の鎧に細身の剣。金色の長髪が風に揺れている。


「おー!まさに『勇者』って感じの見た目だね!


 言葉遣いが下品で盗賊とかそこら辺みたいだけど!」


 ラグニアはゲーマーとして人知れず感動を覚えていた。色々と忘れてはいるのだが……。そして無自覚で悪気もなく素で煽ってしまっている。


「誰が盗賊だァ!?クソガキィッ!!」




「えーーー。


 オジサン、別にギルドマスターとかでもないよね〜〜〜???


 なんか邪魔くさいな〜〜〜」


 ティシーは早く解体をしたいのだろう。心の底からこの男が邪魔で仕方無かった。




 しかし、ティシーが動くより先にアイギスの口が開く。


「ふんっ!あたしがあなたを倒して冒険者になる!」


 アイギスの言葉に男の顔が引き()


「た、倒すゥ……?この俺様をォ……ッ!?


 四聖獣とてこの俺様には敵わンぞォ!?


 俺様のこの鎧は――」




 ―ダッ!




 アイギスは片脚を踏み抜くと地面へめり込み、床のアダマス混じりのアスファルトが跳ね上がる。




 そして――




 ――次の瞬間には男の懐へと潜り込んでいた。


「――ハァ?」


「えいっ!」


 身体を反転させると潜り込んだ勢いそのままに強烈な後ろ蹴りを下腹部目掛けて繰り出す―っ!




 バギィィィィィィィィィィィン!




「ガァ――ッッッ!?!?」


 最高硬度を誇るアダマス素材の鎧が粉々に砕け散り、男はそのまま後方へと吹っ飛ばされる。


「あ。結界!」


 男が吹っ飛ばされた先の建物を破壊しないように純白の結界を張ると、男は結界へ激突。


 背中に背負っていた剣も粉々に砕け散り。息はしているモノの、ものの見事に気絶していた。


「ふんっ!あたしの勝ち!どう?お兄さん」


 腕を組みながらラグニアにドヤ顔している。


「うん、凄いよー!!可愛いよーーー!!」


「…ふぇ?」


 アイギスは耳を赤く染めながら瞳と髪色がピンク色に染まっていた。


「オニーサンの女たらし〜〜〜。


 ほんッッッとーーーに女たらしだね???」


 ティシーがジト目で睨んで来るのを顔を逸らしてやり過ごしていた。




 三人に和やかな時間が流れる中、冒険者達は絶句していた。


 今の男はアレでもSランク冒険者。それが一撃……しかも金的……。


 しかし、アイギスが結界でギルドの建物を守った姿を見ていた彼等は、三人には本当にこの王国への敵意は無いのだと判断していた。


 そしてラグニアに可愛いと言われた後のアイギスの反応を見て、人々はアイギスに対して『可愛い』という感情を強く抱いていた……。




「……よもや、聖獣様がギルドカードを作りたいとは。大変驚きました」


 ギルドから若い金髪の青年が出てきた。爽やかなイケメンだったがティシーとアイギスは興味が無いのか特に反応はしなかった。


 微笑みながら近付いて来る彼は先程金的を潰された男よりもよっぽど勇者っぽい見た目をしていた。


「私は『フォース・フォティノース』。


 このアダマス王国のギルドにてギルドマスターを任されています。


 モノケロース様のギルドカードの作成の兼、是非とも私自ら担当させて頂きます」


「やったー!お願いっ!」


 アイギスは獅子の尾を激しく左右に振って喜びを全身で表現していた。周りの人々が癒やされていく……。






 ――ピキッ。






 上空の異音。皆が見上げると――




 バキバキッギチギチッバギッカチチチ――!!




 凄まじい音を立てながら結界が真上から光を失い、石へと変わり果てていく。


「――!!


 コレは……石化……ッ!?


 まさかゴルゴンゾーラかッ!?」


「……チーズ?」


 ゴルゴンゾーラチーズは地名が由来であり、似た食材がこの世界にあろうともな名前は違うだろう。故にその名前に反応したのはラグニア只一人であり、ラグニアの言葉に反応する者は居なかった。




 バゴォォォン!!!!!




 石化した結界が亀裂を生じ決壊!!石化した結界は消失せず、大量の巨大な石の結界が隕石の如く王国へと降り注ぐ!!



「クッ……!!この王国はギルドマスターの名に懸けて守り抜いてみせる……ッ!!


 アダマス・プリズマ――ッ!!」



 フォースは左手にアダマスの光を集結させると上空へと放出する。放出された光は空中の一箇所で静止し、透明で大きなアダマス鉱石へと姿を変える。


 腰に下げたアダマス素材の剣を鞘から抜くと、空中の透明な光のアダマス鉱石を剣先で狙いを定め、左手で右腕を掴み固定する。


 剣先に魔力が集中し、一筋の光がアダマス鉱石へと突き進む!!


「プリズマ・ランビリーゾッ!!」


 アダマス鉱石へと侵入した光は透明なアダマス鉱石の中で乱反射する。反射する度に光は濃く、強く、威力とその数を増していく――ッ!!


 無数に分かれた光の一つ一つがアダマス鉱石から射出されると落下してくる石化した結界を穿つッ!!


 光が触れた瞬間、石化結界は破壊される事も破片が飛び散る事もなく、跡形も無く消え失せる。文字通り消失した。






 ドゴォォォォォォォン――!!





 黒いうねりが空から地面へと落ちてきた。


 アイギス達三人以外の人々は『ソレ』が何なのかを『石化』を己の眼で見た段階で確信していた。




 『石化』を使える者などこの世界に一体しか存在しない。


 このアダマス王国を長年苦しめてきた宿敵、『ゴルゴンゾーラ三姉妹』の三女。


 『メドゥーサー・ゴルゴンゾーラ』しか。

 設定


 フォース・フォティノース

 ギルドマスター。金髪の爽やかイケメン。襟足と横は刈り上げている。アダマス素材の鎧と剣を所持しているがアダマス素材でも最高硬度のモノを厳選している。

 光属性の魔法を扱う魔剣士。魔剣は所持しておらず、魔法の扱いに長けた剣士。


 金髪長髪の男

 長髪を縛っている。若いがフォースより歳上。アダマス素材の鎧と剣を所持しているがフォースの物よりは硬度が低い一般流通品。それでも高価。Sランクで実力は有るのだが自身の力を過信している。威圧的で他の冒険者からの信頼や尊敬も無く、殆どの者が彼の名前を知らない。


 ゴルゴンゾーラ三姉妹

 遥か昔からアダマス王国周辺で悪さをしている三姉妹。チーズとは無関係。


 メドゥーサー・ゴルゴンゾーラ

 ゴルゴンゾーラ三姉妹の末っ子。この世界で『石化』を行使出来る唯一の存在。


 メガロスティア大陸

 この世界で最大面積を誇る大陸。


 アダマス王国

 メガロスティア大陸の五大国の一国にして物流の要所。アダマスの産出国であり、メガロスティア随一の品揃え。


 アダマス商店

 物流の要所であるアダマス王国に於いて最大の店で他国との貿易により他の店では変えないような品揃えを誇る。

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