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メスガキ聖獣は性獣過ぎるッッッ!!!

「今日はもう疲れちゃったし、明日になったら移動しよっか〜〜〜」


 ティシーは大きな欠伸(あくび)をした。食事とは異なり睡眠は効率良く体力と魔力の回復が出来る為必要な行為だった。




 ラグニアがスカーレットの炎で焚き火を作り出す。暗くなってきた辺りをスカーレット色に照らし出す。


 アイギスは聖なる結界を展開し、安全性も保証されている。


「……そういえばアイギスは不老不死で、僕は不老の肉体で『不死』じゃないんだよね……?


 ティシーの力なら不死にも出来るって事だよね……なんで……?」


「ふっふーーーん。


 折角の剣と魔法のファンタジー世界なんだよ???


 不老不死じゃ戦いのドキドキがないじゃ〜〜〜ん???」


 確かに……等とは思えない理由にラグニアは遠い目をしていた。


「あたしのドキドキを返してよ!」


 頬を膨らませぷんすか怒ってるアイギスはメスガキというより只のクソガキにすら思えた。


「ざんねーーーん、アイギスにドキドキなんて必要あッッッりませ〜〜〜ん♡♡♡」


「…ぐすっ」


 既に散々泣き喚き、もう疲れているのかアイギスは静かに泣いていた。




「明日になったらアイギスに乗って、一気にアダマス王国に行くよ〜〜〜!!!


 さっさとドラゴンを解体して昇級クエストを受けちゃおーーー!!!」


「え!?あたしの上になんて乗せないよ!?


 四聖獣だよ!?聖なる背中だよ!?」


「はぁ〜〜〜???


 ……また痛い目見たいの???」


 地面にめり込んだ痛みを思い出すと獅子の尾が地面に着くほどに垂れてしまう。


「…ぐすっ。


 …あ、あたしはモノケロース!


 身体の清き純潔の乙女…つまり『処女』しか乗せられないの!」


「ティシーは処女だからイイじゃん???」




 ……他二人は聞かなかった事にした。




「こ、この…お兄さんが問題なの!」


 アイギスはラグニアの方を掌でアピールした。人を指を差してはいけないと思っているらしい。流石は聖獣、マナーはちゃんとしていた。


「あはは、僕はそもそも性別がアウトだね……」


「無理矢理乗っちゃえばイイよ、オニーサン♡♡♡」


「良・く・な・い・の!


 (けが)れは聖獣の天敵なの!」


 聖獣が地団駄を踏んでいる。玩具を買って貰えなくて暴れてるクソガキみたいで正直可愛いとさえ思える光景だった。


「それに僕は前の記憶が無いからもしかしたら――」


「オニーサンは経験一切無いよ???」


「……無いんだ」


 ……知りたくなかった。




「ふーん…。無いんだ…」


 アイギスがちらちらと僕の顔を見てくる……。どういう表情なの……?


「んー…無いなら良いよ?


 しょーがないから、だからねっ!


 つまりお兄さんもある意味処女だし、ね!」


 ……それが如何いう意味なのかを聞くのは止めた。考える事も放棄した。このユニコーンは腐っているのかもしれない。


「じゃああたしは寝る…おやすみなさい…」


 木に背中を預けていたラグニアの足の間にさも当然かのように寝転がると、丸まり直ぐに眠りへと落ちていった。




「む〜〜〜………オニーサンはティシーのオニーサンなのに〜〜〜」


 不機嫌そうに頬を膨らませる女神様に、ラグニアは思わず笑みが溢れる。


「ふふ、ティシーは面白いね」


「ティシーは、なーーーんも面白くない〜〜〜」


 なんだかんだ言いつつも、ティシーはアイギスを起こさないように小さな声で喋っている。




「ティシーはなんでアイギスを逃がしてあげないで仲間にしたの?


 僕の盾とか壁とか……アレが本当の理由とは思えないけど?」


 ティシーは体育座りで膝を抱えると、スカーレットの焚き火を切なそうに眺めながらゆっくりと口を開いた。


「………別に、ティシーも無敵じゃないからね???


 不老不死だって封印されたら終わりだし、『不老不死を殺す手段』なんて幾らでも存在するの。


 本当の意味での不老不死なんて存在しないんだよ。


 だから、もしティシーに何かがあってとしても、オニーサンが生き抜いていけるように………戦力は多いに越した事はないでしょ???」


 ティシーの想いを知ったラグニアは、想ってくれているティシーの言葉に幸せを感じると同時に、何時かティシーが居なくなってしまうかもしれないという不安に胸を締め付けられていた。


「……ティシー」


「もう寝よ〜〜〜っと。


 おやすみ〜〜〜♡♡♡」


 ティシーはラグニアの横に寄り添うように座ると身体を預けて眠りについた。




「おやすみ、ティシー」


 ティシーとアイギスの寝息とパチパチと焚き火の音だけが静寂の森に聴こえていた。アイギスの結界は外の音をも遮断出来るらしい。


 愛しそうにティシーの頭を撫でていると、ラグニアも次第に意識が薄れていき、深い眠りへと落ちていった。






 ――朝。木漏れ日の光でラグニアは目を覚ました。


「ん……朝か……」


 グググ……と伸びをする。


「おはよ〜〜〜、オニーサン♡♡♡」


 ―――ちゅ♡♡♡


 おはようの口付けをされたようだが、ラグニアは未だぼんやりとしていた為反応は薄かった。




「ねぇ!


 これの、ど、こ、が!純潔の乙女なの!?


 ティシーは不潔だよっ!」


「ぜーーーんぶ純潔でーーーす♡♡♡」




「あはは、二人共おはよう。朝から元気だね……」


 ラグニアは立ち上がると寝惚け眼で二人を見る。


「お、おはよ…。


 だってティシーが穢れてるんだもん!」


「ちゅーをしてても処女でーーーす!!!


 はいはいはい、論破論破論破ぁぁぁ!!!」


「むー!純潔の純を全然感じないもんっ!」


 二人共僕より強くて僕より長く生きてるだろうに、本当に子供にしか思えないやり取り……。


 しかしラグニアは微笑ましく想い優しい瞳でやり取りを見守っていた。




「そういえばアイギスってギルドカードは持ってるの?」


「…?


 持ってない!そもそも街とか行った事ない!」


「そうなんだ……。じゃあアダマス王国に行ったらギルドカード作ろうか?」


「っ!作る!あたしのギルドカードっ!」


 無邪気に、純粋に目をキラキラと輝かせて……まさに子供そのものだった。


「ふふ、アイギス可愛いね」


「…ふぇ?」


 ぼふっ。と音が聞こえそうな程にアイギスの顔が、耳まで一気に真っ赤に染まっていた。




「………オニーサンの浮気もの〜〜〜」


「……てぃ、ティシーも可愛いよ?」


「………女たらし〜〜〜」


「僕に一体如何しろと……」


 八方塞がり。ラグニアはもう詰んでいた。




「アダマス王国の方角はどっちかな〜〜〜???」


 ギルドでオルコスからギルドカードと共に貰っていた地図を広げると、ティシーは空へと舞い上がり方角を確認している。




「…ねぇ、お兄さん」


 アイギスがぐいっと優しく服の裾を摘んでいた。


「ん?アイギスどうしたの?」


「…ティシーとだけ、キ…キスするのは…すごく、ずるい…。


 あたしにもしてくれないと、の、乗せないっ!」


 言っている事は滅茶苦茶だが、彼女の目から本気で、勇気を出して言っているのが伝わってくる。


「……その、僕からは一回もしてないんだけど……?」


「…じゃああたしからするもんっ」


 軽やかに跳ぶとラグニアの両肩に手を置く。特別な脚を持つアイギスはそのまま虚空を踏み目線の高さを同じにして空中に静止した。


 額の捻れた角がラグニアへと当たらないようにそっと顔を近付けると、双眸(そうぼう)を閉じて優しく唇を押し当てる。


「……っ!?」


 ラグニアは対称的に驚き目を見開く。ゆっくりと(まぶた)を開いたアイギスと視線が絡み合う。瞳は潤み、耳が真っ赤になっていた。


 どれ程の時間が経ったのだろう。アイギスが照れながらも名残惜しそうに顔を離すと、二人の唇の間を透明な唾液が糸を引いていて、それが木漏れ日に当たり綺麗な光を放つ。




「…あたしの、初めての、キス…。


 …キスは穢れじゃないってティシーが言ってたから…」


「……」


 初めてのキスで、舌を……。


 アイギスは無意識なのだろうか、髪色と瞳の色が透明に変わっていき、淡いピンク色の光を灯していた。


 それが何かの能力を発動させるには至らず、只々アイギスの今の気持ちを代弁しているかのようだった。


 ラグニアは優しく頭を撫でてやる。


「わっ…!


 こ、子供扱いしないでっ!」


 嫌そうな言葉を発したものの満更でも無さそうなアイギスの頭を撫で続けていると、ティシーが降りてきた。


「もーーー!!!


 イチャイチャしてないで、早く行くよ〜〜〜???


 女たらしオニーサン!!!


 ほら!!!アイギスは早くユニコーンになってティシー達を乗せて!!!」


「むー。


 はいはい、乗せれば良いんでしょ!もうっ!」


 純白の光に包まれるとユニコーン形態へと変異する。


「仕方が無いから私に乗る事を許可する。仕方が無いからっ!


 ――さぁ、アダマス王国へ…!」


 ラグニアがそっと乗ると、ラグニアの前にティシーが乗る。


「さぁ!!!出発〜〜〜!!!」




 アイギスは颯爽と走り出す。踏んだ場所が白く光る。踏んで出るその光の位置は段々と上空へと変わっていき、アイギスは遥か天を駆けていく。




 森はみるみる内に小さくなり、遠くにはオルコスのギルドの街も見えていた。




(ダンジョンも魔物も道も関係の無い高速の直線移動……アイギスもチートだね……)




「あ!!!あれだよーーー!!!


 アダマス王国!!!」




 ラグニアは進行方向に次第に見えてきた大都市、『アダマス王国』に期待と興奮を抑えきれずにいた。

 設定


 アイギスの結界

 生物及び魔法の侵入を妨害する純白の結界。そもそもかなり強い部類の結界だが、ティシーと契約を交わした事により、より強固な結界へと変貌(へんぼう)している。音の遮断の有無は選択出来る為、自分達に直接的に害となる音だけを取り入れる仕様。


 モノケロースの処女判定

 完全にアイギスの気分の問題であり、非処女だろうと男だろうと普通に乗せられる。

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