メスガキ聖獣は不憫(ふびん)過ぎるッッッ!!!
スコルピオース・スピアーを倒した後、二人は一時の休憩をしていた。
「んーーー。
まぁ何かの素材になるかもしれないし、一応取っておこ〜〜〜っと♡♡♡」
燃えていなかったスコルピオース・スピアーの亡骸の一部を影へと収納すると、ティシーは何かを察知し空を仰いだ。
「………………オニーサン。
次の相手は今のオニーサンの手には負えないから、大人しくしててね???」
急に真面目なトーンになるティシーに、ラグニアは動揺する。
「え、次の相手って――」
ラグニアには何も見えなかった。
ティシーは空を見上げていた、恐らく上空から舞い降りたのだろう。
音もなく、「ソレ」は二人の眼の前の地上へと既に着地していた。
螺旋に捻れた立派な角を持った馬……ラグニアでも知っている、その姿はユニコーンだった。
純白の身体に同じく純白の鬣と山羊のような顎髭、獅子の尾に二つに割れた蹄。鏡のような白銀の鎧を身に纏っていた。
純白の全身に映えるゼニスブルーの瞳が偉大さを象徴していた。
「…この私をモンスター呼ばわりとは無礼な。
私は神聖なる聖獣…。この世界に四体しか存在せぬ四聖獣が一体、アイギス・モノケロース!
私が貴様等に天罰を―」
―――ドンンンッッッ!!!
「話、なッッッがーーーい!!!」
それは、一瞬。
ラグニアが瞬きをしていたほんの一瞬の間に、衝撃音が鳴り響き地面を揺らした。
音は地面にアイギスの頭がめり込んだ音だった。
ティシーがアイギスの頭を思い切り上からブン殴り、一撃で倒していたのだ。
「……ティシーってやっぱり強――」
「えっへん!!!すっごいでしょーーー♡♡♡
あ、ドラゴンでやり過ぎちゃったから今回は手加減はしたよ〜〜〜!!!
オニーサン、どーーーする???
このねじねじねじの角とか、たッッッかく売れそうじゃない???」
「『聖獣』とか言ってたけれど……そもそも四体しかいない位希少ならアダマス・ドラゴンよりも売るの大変そうじゃない……?
そもそも聖なる獣って売って良い物なのかな?」
ザッ―。
アイギスがフラつきながら、ゆっくりと起き上がる。
しかしティシーは気にも止めていない。
「んーーー。売るの大変ならもう角を武器にしちゃお♡♡♡」
立ち上がった後もアイギスの身体はゆらゆらと揺れている。頭を殴られた事で一時的に脳をやられているのだろう。
「…う」
「……う?」
アイギスが何かを呟いた。ラグニアは聞き取ろうと耳を澄ませる。
「…う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
「……え?」
アイギスが突然子供のように泣き始めた。
ラグニアは呆然とする。ティシーは心底うるさそうに自身の両耳に人差し指を突っ込んでいた。
アイギスの身体が白く神々しく光り始めると、ユニコーン型だった身体が徐々に人間の姿へと変化していく。
「イジメられたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
あたし、聖獣なのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
アイギスの有角人形態は純白の髪に前髪はダイヤの形に纏まっている。
その中央からユニコーン形態の時と同様の螺旋状の角が髪を掻き分けて伸びていて、有角人種のように見える。
馬の尾みたいなポニーテールと、腰から垂れている獅子の尾が泣く身体に連動して揺れていた。
服は純白、冬用のケープみたいなものを着ていた。ユニコーン形態のように白銀の鏡面の鎧も装着している。足は裸足だった。
ティシーよりは見た目年齢は高く感じるが、精神年齢はティシーよりも明らかにメスガキだった。
「殺されちゃうよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
あたし四聖獣なのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!
誰か助けてよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
四聖獣とやらがギャン泣きしてる……。自分から勝負を吹っ掛けて居ただろうに……。
「……ティシー、なんか可哀想だし見逃してあげよう?
この子で素材作ったりしても後味悪くなると思うよ?」
溺死させられたあの大男相手には1ミリも湧かなかった感情、ギャン泣きしている聖獣を見てたら哀れに思えてきて助けたい気持ちを抱いていた。
「本当!?有難う!
改めて、あたしはアイギス・モノケロースよ!
四聖獣が一体!どう?凄いでしょ!」
「あ……うん……」
態度の急変に戸惑うラグニア。ドヤ顔で決めてるけれど、そもそもティシーが如何するかは未だ何も言っていない現状……。
「ティシーは助けるか如何かなんてなーーーんにも言ってないのに勝手に話を進めるなんて不敬ね???
オニーサンどうする???
やっぱり角圧し折る???」
「うっ…」
(そんな涙を溜めた眼で僕を見られても……)
「はぁ。僕達はそんな事はしないから、何処にでも好きな処へ行っちゃっていいよ」
「そう!?それじゃ!あたしはこれで―」
「いや???
ティシーはアナタを逃がしてあげるつもりはないよ???」
「…え?」
「え??」
ティシーはアイギスへと手を翳す。
「今日からアナタはティシーとオニーサンのモノ♡♡♡」
アイギスはティシーが何をしようとしているのか勘付き、焦った様子で狼狽えていた。
「え?ま、待って!ヤダ!絶対にイヤ!
あたしは絶対に―」
「契約の儀を!!!この殺戮の女神『ティシーポネー・エーリュニース』の名に於いて………この聖獣に『アイギス・モノケロース・エーリュニース』の名と『不老不死の肉体』を授けん!!!」
「ちょっ―って女神!?」
アイギスの身体が眩しさを感じる程に光り輝き、必死の拒絶も虚しく無理矢理契約されてしまった。
「…」
アイギスは後ろを振り返り気付く。
純白だった髪の色が、透明になっていて、二人みたいに色々な色に煌めいている…。
「う…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!
あたしの純白の髪の毛がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「えーーー、うるさーーーい………………。
髪の色なんて別に何時でも変えられるのに〜〜〜」
ティシーがささっと純白に変えてやる。
「…ふん!
あたしと勝手に契約するなんてひどい!
四聖獣だよ!?それに不老不死!?
なんで勝手にそんなこと!」
「アイギス、アナタにはオニーサンの弾除けになって貰うの♡♡♡
ドラゴンより硬い鎧を持ってるみたいだし、何も考えずにオニーサンの盾となり壁となってくれたらいいよ♡♡♡」
屈託の無い笑みで告げるティシーにアイギスは狂気を感じていた。
「…なんて屈辱…!
そもそもあたしを不意打ちで倒したのに!
あたしは防御魔法も発動してないのに!ずるい!」
「でももう契約済みでーーーす♡♡♡
ざーーーんねーーーんでーーーしたーーー♡♡♡
ざぁこざぁこざぁーーーこ♡♡♡」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
……メスガキが、増えた……。
「はぁ。賑やかなのは良いけれど仲良くしてね?
僕はラグニア・エーリュニース。よろしくね、アイギス」
「…ふん!」
顔をプイッとした処、ティシーに軽く頭を小突かれてまた泣いている。
「……女神と聖獣が同じパーティって普通に考えてチートだよね」
ラグニアは二人のメスガキを眺めながら呟いた。
見た目からは想像出来ない程の戦力の高さ。
それを眺めるラグニア自身も異世界転生者という名のチートの可能性を充分秘めた存在……。
ラグニア達は新たな仲間の『アイギス』をパーティに加え、旅を続けるのであった。
設定
アイギス・モノケロース(ユニコーン形態)
ユニコーン。螺旋状に捻れた立派な角を持った馬の姿。瞳は高貴なゼニスブルー。純白の身体に純白の鬣と山羊のような顎髭。獅子の尾。二つに割れた蹄。鏡のような白銀の鎧を身に纏う。人間形態とは違い威圧的で高貴な物言いをするが演技半分性格の変化半分。一人称は「私」。
アイギス・モノケロース(有角人形態)
ティシーより身体年齢は上に感じるメスガキ。瞳はゼニスブルー、純白の髪で前髪はダイヤの形に纏まっている。その中央から掻き分けるように螺旋状の角が伸びている有角人種に酷似した見た目。馬の尾みたいなポニーテールで腰からは獅子の尾が垂れている。服は純白で大きめのケープ1枚。ユニコーン形態のように白銀の鎧も装着。足は裸足、インナーも下着も着用していない。一人称は「あたし」
アイギス・モノケロース・エーリュニース(有角人形態)
髪色と瞳がティシーとラグニアと同じ色に変化。ティシーの気遣い(?)で色は元に戻ったが自由自在に変えられる。
ラグニアに万が一にも見せるわけにはいかないと、契約の際にティシーがタンクトップとスパッツを然りげ無く追加している。これらは形態変化時には自動でオンオフされる便利な物。




