メスガキ女神は強過ぎるッッッ!!!
「これでどうかな???
オニーサンすっっっごく似合ってると思うけどな〜〜〜♡♡♡」
ティシーは自身の魔法で全裸だったラグニアの服を見繕っていた。
タンクトップに少し長めのジャケット、ダボッとしたシルエットの裾の広いパンツにヒールブーツ。その全てが純白だった。
「……ティシー、なんでこんなに白いの?全身真っ白なんだけど……直ぐ汚れちゃうんじゃない……?」
「ふふふ〜〜〜ん♡♡♡
ティシーは高貴な『女神様』で、オニーサンはティシーの所有物だから〜〜〜♡♡♡
下界の人間から見ても、それが一目で分かるように………かな♡♡♡
ティシーも服変えよ〜〜〜っと♡♡♡」
着ていたダボTが膝上丈のワンピースに。
ロングのヒールブーツにラグニアよりも丈の長いロングジャケット、それら全てがラグニア同様に純白に統一されていた。
「やっっっぱり、高貴さを見せ付けるなら純白だよね〜〜〜♡♡♡
あ。心配しなくても………………ほら♡♡♡」
ティシーがワンピースの裾を両手で掴むといきなり捲し上げる。
ラグニアは反射的に顔を逸らす。
「ちょッ、ティシー!?急に何を――」
「あは♡♡♡
ちゃんとスパッツ履いてるからダイジョーブだよ〜〜〜???
あ。もしかしてオニーサン、期待しちゃってたんだ〜〜〜???♡♡♡
ごめんね〜~~♡♡♡」
「!?ち、違っ……!!」
「うんうんうん。
分かる。分かる、分かるよ〜〜〜???」
ティシーは僅かに宙に浮かび上がりラグニアの耳許に顔を近付けると、意地悪な顔をしながら耳打ちをする。
「だって〜〜〜。
ティシーがな〜~~んにも履いてなかったのを〜~〜、さっき名前を授けた時に下からこっそり見ちゃってたもんね〜〜〜???
オニーサンのへ・ん・た・い♡♡♡」
「――!?」
「あは♡♡♡
わざとじゃないのは分かってるからそんなに動揺しなくても良いのに〜〜〜♡♡♡
オニーサン、ホンッッット〜〜〜にヨッッッワヨワヨワ〜〜〜のざぁこざぁこざぁこ♡♡♡」
「……」
未だ異世界へも行けていないというのに、既にラグニアは疲弊しきっていた。
彼の眼の前で無邪気に笑う幼女、殺戮の女神『ティシーポネー』は相当なメスガキだった……。
「さてさてさて!!!
そろそろ行っちゃおうかな〜〜〜???
楽しい楽しい異世界に〜〜〜!!!
そろそろ始めちゃおうかな〜~~???
ティシーとオニーサンのラブラブラブな異世界無双生活を〜〜〜ッッッ!!!」
ティシーが声高らかに宣言すると、二人の身体を白い光が包み込んで――
――次の瞬間、二人は快晴の青空の中に居た。
色の無い漆黒の空間からの突然の真っ青なスカイブルー。
そして美味しい空気。
ラグニアはこの素晴らしい景色の中、『生』を実感していた。
「オニーサン、此処は剣と魔法のファンタジーの世界だよ〜〜〜♡♡♡
ほらほらほら、見て見て見て、彼処にドラゴンが!!!」
ティシーがドヤ顔で指差す方へと振り向くと、ドラゴンが空を舞っていた。
白銀の堅固な鎧を纏うそのドラゴンは、二人を視認すると咆哮を上げ、うねりながら突撃してくる。
「……なんかあのドラゴン、此方に来てない……?っていうか僕達……落下してない……?」
「え???
ドラゴンは敵意剥き出しで来てるし〜〜〜、落下は最初からしてるよ〜〜〜???
今気付いたの〜〜〜???
オニーサンってばそんな処まで鈍感なんだね♡♡♡」
意識すると物凄い勢いで地面へ向けて落ちていく感覚がラグニアを襲う。余りにも上空過ぎて、周りに雲一つ無くて、ドラゴンが居なければ気付けなかった。
只の人間じゃなくなっていたラグニアにとっては本来ならば掛かっている凄まじいGの力すらも平気で意に介さなかったのだ。
「こ、このままじゃ僕達ドラゴンに食べられるか地面に落ちてペシャンコだよッ!?」
「そんなに焦る必要なんてないのに、オニーサンは仕方ないな〜〜〜。
ホンッッット〜〜〜にざぁぁぁこ♡♡♡なんだから〜〜〜♡♡♡」
ティシーは落下しながらラグニアの両頬を掴む。
触れられた瞬間にラグニアは先程の唇の感触がフラッシュバックした。
「もう期待しちゃってるね♡♡♡」
「ち、違ッ――むぐっ」
ティシーは目を瞑り、ラグニアへ二度目の口付けをする。
触れ合った唇からラグニアの身体が白い光にゆっくりと包まれていく。
ちゅ………っぱ♡♡♡
と態とリップ音を鳴らして唇を離すとメスガキ特有の見下すような表情を浮かべていた。
「しょーーーがないから、ヨッッッワヨワヨワなオニーサンに衝撃完全無効のバフを付けてあげたよ〜〜〜♡♡♡
これで地面に落下しちゃっても、無傷確定!!!生存確定!!!おっっっめでとう〜〜〜!!!」
パチパチパチ♪♪♪
無邪気に落下しながら拍手している。
「――いや、ドラゴンはッ!?地面にぶつかる前に食べられて死んじゃうよ!?
僕は不老でも不死じゃないんだよね!?」
物凄い勢いで迫るドラゴンは落下のスピードをも追い抜かし、目前へ迫り来る――!!
「あは♡♡♡オニーサン必死♡♡♡
それに、このドラゴンも可愛い〜〜〜♡♡♡
でも………………ティシーのラグニアを食べようとするだなんて〜〜〜………………
――万死に値する」
ティシーの表情から笑みが消えた。
このドラゴンは今食べようとしている相手が『女神』だなんて知る由もない。
ましてや殺戮の女神、『殺しのプロ』だとは……。
このドラゴンはこの世界の生物としては最高硬度を誇る『アダマス・ドラゴン』と呼ばれる種族の『魔獣』だった。
自身の硬い鎧故に、なんの警戒も躊躇いも無く、二人を纏めて喰らおうと大きな口を開けた。
鋭く尖る牙は勿論の事、咥内の粘膜や舌でさえも最高硬度を誇る。熟練の冒険家でさえ大人数のパーティでやっと仕留められるか如何かの最上級モンスター。
そのアダマス・ドラゴンが二人を喰らおうとした瞬間、凄まじい轟音と衝撃と共にアダマス・ドラゴンの意識は一瞬で吹き飛んでしまった。
ティシーの強烈な右の拳のアッパーが、アダマス・ドラゴンの白銀の鎧の顎を下から殴り上げていた。
ティシーの拳は無傷だが、最高硬度の鎧にヒビが入る。
打撃の衝撃で吹っ飛ぶ瞬間のアダマス・ドラゴンの顎の一つの鱗を左手で掴むと、凄まじい力で飛ぶのを抑え込むとティシー達と共に重力に引っ張られて地面へと落下していく。
「なんかキラキラ綺麗だったから貴重な素材になるかな〜〜〜って思ってすっごく加減したのに………………
この程度で終わりなんて、見た目に反してザッッッコザコザコなドラゴンだったんだね♡♡♡」
「あはは……」
ティシーが強過ぎるだけじゃない?
ラグニアはそう思ったが、言葉を呑み込んだ。このメスガキを決して怒らせてはいけない……。ラグニアは初日にしてそれを学んだ。
ティシーが最高硬度のアダマス・ドラゴンをブン殴った轟音は遥か下の地上にも聞こえていた。
衝撃も衝撃波となり地上に物凄い風圧が襲っていた。
「グッ……!?なんだ!?今の音はッ!?それに物凄い風が……ッ!!」
「なんか真上から……ッ!?
「な、なんなんだよアレは……ッ!?」
「嘘……でしょう……?」
街のギルド前の広場に居た冒険者達は絶句する。真上に陽の光を反射しキラキラと煌めいている巨大な物体を視認する。
真上からアダマス・ドラゴンがこの広場目掛けて急降下してきているのだ――!!
「マズいマズいマズい!!皆逃げろォォォォ!!アダマス・ドラゴンが落ちて来るぞォォォォォォオオオオッ!!」
真下の人間達は急ぎ避難する。
ギルドに居た魔導士達は広場を囲い、ギルドと街を守る為に防御魔法を展開する。一人一人の魔力と魔法は弱くとも、力が折り重なり、連結する事でより強固な防御魔法へと転じる――!!
――ドォォォォォオオオオオオンッ!!!!!
広場の石の地面が抉れ、飛び散った石と衝撃が魔法の壁に直撃する。
広場がかなり広かった事、それ程の実力者は居なくても多数の防御魔法が重ね掛けされていた事が幸いし、人と建物に目立った被害は出なかった。
魔導士達、そして衝撃が止みギルド内から出てきた他の冒険者達は息を呑み、武器を構える。絶命していた。
凄まじい土煙が晴れると、恐ろしいアダマス・ドラゴンの姿が……。
――既に絶命していた。
「し……死んで……る……?」
「本当だ……落下の衝撃で……?」
「それとも空で何かが……?」
更に煙が晴れると、そのアダマス・ドラゴンの背中に、純白の服を纏う二人の人物の姿が……。
突然の出来事に、周りの冒険者達は只々立ち竦む他無かった……。
設定
ティシーの服
全て純白。膝上丈のワンピース。ふくらはぎ程度のロングヒールブーツ。ラグニアよりも丈の長いロングジャケット。
ラグニアの服
全て純白。ブカブカで裾の広い、アラジンパンツのようなデザイン。ヒールブーツ。タンクトップ。少し長めのジャケットは襟が高め。
ティシーのバフ付与
口付けをする必要は一切無い為、只々口付けをしたいだけ。ラグニアには断る権利も勇気も存在しない為、バレようが継続される運命にある。
アダマス・ドラゴン
ダイヤモンドのドラゴン。アダマスというこの世界で最高硬度を誇る鉱石と同質の身体を持つ最上位レベルのモンスターであり『魔獣』。アルマジロトカゲに翼が生えたような見た目。鱗の一つ一つが有り得ない程の硬度を誇り、鱗の無い咥内の粘膜までもが硬い。
ティシー達が落下したギルド程度では全員が束になっても敵わない程の強敵。素材は高価だが硬さ故に解体を出来る人間と施設は限られる。ダイアモンドのドラゴン。
魔獣
モンスターの中でも中〜上位の存在。下には『魔物』、上には『魔人』が居て、魔人の上位には『魔神』が居る。




