メスガキ女神は暇過ぎるッッッ!!!
「…………あーーー、もうッッッ!!!
退屈なんだけど〜〜〜!!!」
大きく豪勢な椅子以外、全てが漆黒の空間。普通の人間ならば平衡感覚を失い正気を保って等居られないような場所。
この異様な空間で一人のメスガキが、その体躯に似つかわしくない大き過ぎる椅子に座りながら、地面に届かない脚を乱暴に振っていた。
「つまんない〜〜〜!!!
つまんないつまんない、つまんない〜〜〜!!!
暇潰しに死んだ人間を希望と全ッッッ然違う異世界に転生させて遊んでたけど、つ〜~~ま〜~~ん〜~~な〜~~い〜〜〜!!!」
既にかなりの数の死者が、このメスガキの気紛れにより無茶苦茶な異世界転生を行われていた。
本来チート能力が必須の高難易度異世界へハズレスキルを付与され転生し、即死した者。
のんびり異世界ライフを希望したのに最終ダンジョン付近の村人にされ、日々生命の危機にある者。
記憶を全て消され、悪役令嬢として確定で殺されるルートへと投げ出された者。
全員がこのメスガキに転生後の人生を狂わされていた。
――突如、この空間に淡い光が出現した。
その光は一箇所に収束していく。
メスガキはそれ見て大きく溜め息を吐いた。
「はぁ〜〜〜。………………ま〜~~た死んだ人間が来ちゃったの〜〜〜???
も〜~~ど〜~~でもい〜~~のに〜〜〜。
またまたまたテッッッキトーーーに転生させちゃお〜〜〜っと――」
メスガキは光が収束し形成した人間を見て、まるで時が止まったかのような感覚を覚えた。
これまで、数百数千数万をゆうに超える程の刻を過ごしてきた彼女にとって初めての感覚。
……胸が高鳴る。
「ん……。
……此処……は……?」
その人間は眠りから覚めるかのように、ゆっくりと目を開いた。目の前には見知らぬ幼女が大きな椅子に座っている。
人間は一瞬で目の前の幼女が『人間ではない存在』だと確信した。
幼女の幼気な大きな瞳と艷やかな髪の毛は煌めき輝いていた。透明な瞳と髪の毛の中を色とりどりの光が瞬いている。
彼女が人ならざる者と分かっていても、恐怖心や不気味さは感じられず、寧ろ神々しささえ感じられた。
幼女は椅子から跳ぶように降りる。ジロジロと物珍しそうに頭の天辺から足の爪先まで舐めるように見ながら近寄ると、見た目の年齢には似つかわしくない、ませた表情を浮かべていた。
「はじめましてオニーサン♡♡♡
オニーサンはね???残念だけど、もう死んじゃったの〜〜〜!!!
まだまだまだ若いのに、人生これからだったのに、本ッッッ当に残念だよね〜〜〜???」
一瞬、脳が理解を拒み息を呑む。
「……はは、は……。……死……?
……ぼ、僕が……ッ……?」
自身より明らかに若い幼女に、若いと言われた矛盾など気にならない程に酷く動揺していた。
此処へ至るまでの記憶を辿ろうとすると、脳が潜在的にブレーキを掛けているのだろうか、凄まじい頭痛が襲い思い出す事が出来ない。
「うんうんうん。
なーーーんにも思い出せないよね〜〜〜???
『死後』ってそういうものなんだよね〜〜〜。
死の恐怖とかショックで、前後の記憶がぽーーーん♡♡♡って飛んじゃったり、ガッチガチに記憶に蓋をしちゃったり〜~〜。
オニーサン、カッコイイのに生前はザコザコザコのヨワヨワヨワ男子だったって事だね〜〜~♡♡♡」
……人間は何も言い返せなかった。
彼の感じる全ての感覚……幼女が近寄った際に香った匂いも含め、『コレ』が夢ではなく現実の出来事なのは明らかで……。
「オニーサン、自分の名前すら思い出せないでしょ〜~~???」
「……うん、残念だけど」
「やっぱりね???
でもでもでも、安心していいよ〜〜〜ッッッ!!!
オニーサンは幸運にも〜~~ッッッ!!!
『異世界転生』の権利を得て今此処に居るの〜~~ッッッ!!!」
「異世界……転生……?」
生前より元々知識が無いのか、記憶の混濁の所為で理解出来ないのか、『異世界転生』を分からずにいた。
幼女は心底楽しそうに、人間の周りをニヤケ面でゆっくりと歩きながらドヤ顔でレクチャーをし始める。
「仕方ないな〜~~♪♪♪一から教えてあげるね、トクベツだよ♡♡♡
『異世界転生』とは!!!
オニーサンみたいにヨッッッワヨワヨワでザッッッコザコザコ過ぎて、呆気なく死んじゃった哀れな魂を〜~〜!!!
元居た世界とは別の世界で新しい生命として、過去の記憶を持ったままやり直せるッッッ!!!
ていう最高のエンターテイッッッメンッッットッッッなのッッッ!!!」
人間の正面で止まると視線を絡ませ、舌舐めずりをする。
人間は思わず息を呑んだ。
「異世界転生に多いのは哀れな魂に『チート能力』………………まぁ簡単に言っちゃうと『強過ぎる能力』をプレゼントするんだけど、ヨッッッワヨワヨワのザッッッコザコザコだからこそオニーサンは輝くと思うんだよね〜〜〜♡♡♡
だから、こ・・・れ♡♡♡あげちゃうねッッッ♡♡♡」
幼女はその場でゆっくりと宙に浮くと両手で包み込むように人間の両頬に優しく触れる。
「オニーサンはト・ク・ベ・ツ………………♡♡♡」
幼女は瞼を閉じるとそのまま人間の唇を奪った。
人間は思いがけぬ出来事に身体を硬直させる。
――――――ドクンッッッ!!!
粘膜を通して幼女から人間へと何かが流れ込んでいく。
二人以外の時間が止まっているかのような静寂が流れる。
幼女はゆっくりと唇を離す。
二人の唇の間を光る唾液が糸を引いていた。瞼を開いた幼女は唾液を気にも止めず、頬を染めながら恍惚の表情で告げる。
「オニーサンは今、このアタシ………………『ティシー』と正式に契約されたの♡♡♡」
「契……約……?」
「そう、契約♡♡♡
だからもうオニーサンはティシーのモノなの♡♡♡
それじゃあ始めるね〜〜〜♡♡♡」
自身をティシーと名乗った幼女が再度双眸を閉じると、更に上へと昇っていく。
空中に静止し再び開眼すると、眩し過ぎる猛烈な光が瞳から溢れ出てくる。
赤や青、黄色に緑、その他様々な色の光が大量の色とりどりの魔法陣を空中に形成し、人間に緊張が走る。
「これより契約の儀を行う………………ッッッ!!!
この殺戮の女神『ティシーポネー・エーリュニース』の名に於いて………
この者に『ラグニア・エーリュニース』の名と『不老の肉体』を授けんッッッ!!!」
人間……『ラグニア』と名付けられた者の身体が魔法陣と同調し、同じ色に次々と輝いていく。
ラグニアは今自身の身に何が置きているのか全く理解出来ずに居た。
(……『殺戮の女神』?
今僕の眼の前に居る、この幼い彼女が……?)
しかし、この現象を見れば信じざるを得ない。
実際に不老の肉体になるのか、若しくは既になったのか……それらを確認する術は無いが……。
「オニーサンは今から『ラグニア』、『ラグニア・エーリュニース』だよ〜〜〜♡♡♡」
名を与えられたラグニアは実感こそ得られなかったものの、『ラグニア』という名には何故かしっくり来るものがあった。
「そ、その……ティシーポ――」
「『ティシー』でいいよ〜〜〜♡♡♡」
「……ティシーと僕の、その……同じ『エーリュニース』……なんだね……?」
「ふっふーーーん♡♡♡
だって〜〜〜、ヨッッッワヨワヨワでザッッッコザコザコなオニーサンには、このティシーがついていてあげないとダメダメダメなんだも〜〜〜ん♡♡♡
だから、ティシーが永遠にオニーサンの隣に居て守ってあげるからね〜〜〜♡♡♡」
「……」
殺戮の女神に魅入られたのは幸か不幸か……。
「因みに、『ラグニア』って名前は……?」
「………………」
ティシーはラグニアの元へと優雅に降りてくると至近距離でジト目をしている。
「……?
……えっ……と……?」
「………………オニーサン、ティシーの事をイッッッヤラシ〜~~目で見てくる、ロリコン変態オニーサンだから〜〜〜」
「ロ……ッ!?急に何を言っ――ッ!?」
ラグニアは其処で初めて気付いた。
自身が素っ裸だった事に。
「……服を……下さい……」
そっと股間を隠しながら、そう言うのが精一杯だった。
設定
ティシーポネー・エーリュニース
通称『ティシー』。
『殺戮の女神』。見た目は幼女のメスガキ。目は大きめ。透明な瞳の中で色々な色が輝き花火みたいに煌めいていて同じ瞬間は二度と訪れない。髪色も動揺でロング。真ん中分けで一束が真ん中から左眼側へ流れている。右眼に泣き黒子、同じ側の口の下にも2連の黒子。やる気が無さ過ぎてダボダボのTシャツをワンピースのように着用、インナーも下着も着ていない。裸足。
ラグニア・エーリュニース
殺戮の女神に見初められた元人間の異世界転生者。目にかかる程度の長さの黒髪に黒い瞳のTHE・日本人な見た目の青年。ティシーに強制契約されてからは瞳と髪色がティシーと同じになっている。
死のショックからか元の世界の記憶の全てを失っている。
素っ裸。




