メスガキパーティにEランク昇級クエストは簡単過ぎるッッッ!!!
Eランク昇級クエストにやる気満々のティシーとアイギスを見るとフォースが申し訳無さそうに口を開く。
「あの……申し訳ありませんが、今現在『Eランク昇級クエスト』レベルの依頼は来ていないですね……」
「なんで!?!?!?」
「……ゴルゴンゾーラ三姉妹のテリトリーだったエリアの魔物や魔獣が、三体が姿を消した事で活動が活発になり、昨日の今日では有りますが既に高ランクのクエストが台頭してきていて……。
加えて強力なモンスター達はEランク昇級クエスト程度の魔物達を喰らっているようで、今は何一つ用意出来ない状況で……」
「えーっ!あたし昇級したいのに!」
「……じゃあその高ランクのクエストを達成したらEランクに昇級させて貰える……みたいな事は出来ないのかな?」
ラグニアは提案してみる。言葉だけ聞けばギルド的には願ったり叶ったりだろうが、厳格なギルドのルールとしてアウトならば従う他無い。
「……それで言うと、アダマス・ドラゴンやメドゥーサー達を討伐した段階で昇級されていなければならない程ですから、特例という訳には……。
本来高ランクの依頼を特例としてEランク昇級クエストに設定するのも問題が有りますから……来るのを待って頂く他有りませんね……」
フォースは未だ貼られていない依頼の書類の山に目を通している。昨日今日と忙しかった為見落としが有るかもしれない……。
「マスター!ありました!Eランクの昇級クエストです!」
フォースの隣で彼を手伝っていた優しそうな受付嬢のお姉さんが依頼書を一枚、フォースへ見せる。
「……確かに。
此方のクエストを達成して頂ければ昇級になります」
アイギスは無邪気に瞳を輝かせながら受け取る。
「どれどれっ!?」
『依頼書 魔獣討伐
推奨ランクE Eランク昇級クエスト
アダマス王国周辺に営巣したクイン・ワスプルギス一匹の討伐
巣の破壊及びワスプルギス多数の殲滅
巣の場所は不明、アダマス王国南部の「アダマス大森林」からワルプルギスが飛んでくるとの情報有り』
「…く、クイン・ワスプルギス…?」
アイギスは見るからにテンションが下がり、獅子の尾も垂れ下がる。
「………スコルピオースよりも遥かに弱い低級の魔獣だよ、一瞬で終わっちゃうね〜~~」
「……ティシーポネー様方には簡単過ぎるでしょうが、今はこれしか無く。
力の無い民にとってはワスプルギス一匹でも驚異になり得るのです、どうかお願い致します」
「困ってる人が居るなら僕はやるよ!
じゃあパパッと終わらせてくるね!」
「オニーサンは元気だねーーー」
ティシーもやる気が無さそうだった……。
「敵が弱くても僕達パーティの初クエストだから頑張ろうッ!!」
ギルドを出ると南門の方へと歩いていく。
『大森林』とはよく言ったもので、門を出ると目の前が既に巨大な樹木が生えた群生地だった。
「……ワスプルギスって如何いう魔獣なの?」
「ただのハチっ!
しかも花粉とか運ぶタイプの弱いやつっ!」
アイギスはずっと頬を膨らませている……。
「成る程……じゃあ本当に簡単に終わっちゃいそうだけど、どうやってクインと巣を探すの?」
「……アッチ」
急にエウが指を差す。
「アッチの方からクインの気配がする……あーしも魔人だから魔獣の気配は分かる……」
「そうなんだ、ありがとう!助かるよ!」
「……ッ!!
……ンッ」
「あっまーーーーーーーーーーーい!
新婚の空気甘いっ!あたしだってエンゲージしたかったのにっ!」
「アイギス、聖獣は無理だよ???
人間に近い部類だもん♡♡♡」
「ふんっ!
…あっ!ワスプルギス見ーっけ!」
……ブーン。
本当に人の大きさになっただけの青い蜜蜂といった見た目の蜂だった。
「あたしが倒しちゃう!
えいっ!」
「ピギッ!」
能力を使うまでも無く、自身の脚力だけでワスプルギスの頭上を取ると踵落としで一撃で地面にめり込み絶命する。
――すると。
「ワスプルギスはこうでなくっちゃ!」
森の奥から大量のワスプルギスが現れる。
「倒しちゃうよーっ!」
アイギスは次々にワスプルギスを蹴り飛ばし、その死骸が地面や木々にぶち撒けられていく。
「ちょッッッ、きったなーーーい!!!
もっと綺麗に戦ってよねッッッ!!!」
ティシーはアイスブルーの右の瞳にするとアイギスから離れているワスプルギスの集団を凍結させる。
「……」
エウはそれを見るとギュッと服を掴む。姉の、ステンスノーの死を思い出してしまうのだろう。しかし助けて貰えた恩、ステンスノーから託された生命、何よりラグニアと出会えてエンゲージを結んだ事により、何とか乗り越えられていた。
「ブブブッ!」
ワスプルギスの一匹がラグニアとエウの背後をとる。
「……あーし、蟲って好きじゃねェンだよッ!!」
――キィィィィィィィィンッ!!
「ブブ――ッ」
エウの魔眼の力が発動する。
エウの魔眼の力は『溶岩』。視線が絡んでいる相手をエウが望んだ瞬間に溶岩へ変える。灼熱の石像のままにする事もドロッドロに溶けさせる事も思いのままになる。
溶岩に変わり果てたワスプルギスは地面へ落ち、僅かに溶けて蜂の姿とは程遠い形へ崩れ落ちると温度が下がっていき、火成岩になった。
これは、チート能力により『石化系統の解除』が行われた場合にも蘇生されないようにする為のゴルゴンゾーラ三姉妹の知恵だった。
「………やっぱりエウが一番強い魔眼を持ってたんだねーーー???
っていうかオニーサンもその魔眼の力、エンゲージリングを通じて使えるようになってると思うよ♡♡♡」
「え、そうなのッ!?
僕も試してみたいな……リングが魔眼みたいになってるけどこのリングを使うの?」
ワスプルギスの一匹に手の甲を見せるように掲げて薬指の魔眼を見せ付け、『溶岩』になるように念じる――ッ!!
「ブブブブブブ――」
エウの魔眼と同じようにワスプルギスが溶岩になった。
「凄いよ!!エウの魔眼の力便利だね!!」
「……ッ。
べ、別に……?フツーだろ、フツー……」
エウは嬉しさを隠し切れず、無意識にラグニアの項に頬を激しくすりすり擦り付けていた。
「イチャイチャ―――するなッッッ!!!」
ティシーの右眼がディープブルーに光ると指の先から小さな水滴を銃弾の如く射出するッッッ!!!
その小ささからは想像出来ない程の威力でワスプルギス達が破裂していく。
「ちょっ!?汚っ!?
ティシーも汚いよっ!?」
尚もワスプルギスを黙々と蹴り飛ばしてるアイギスも充分汚していた……。
「っ!見付けた!クイン!」
兵隊達を直接指揮する為にクインが出て来たのだ。
「あたしがやるからねっ!」
両の眼がパールホワイトに光り輝くと、捻れた一角に光が収束していく―。
「必殺っ!一角っ!」
「……え、今の技名?」
――ギュイイイイイイイイイインッ!
ドリルの様に捻れ回転しながらパールホワイトの光がクインへ直進し、クインは避ける隙も無く胸を穿たれる……ッ!!
「ブッ……ブブ……ブ……ッ」
グチャッ。
痙攣しているクインから蜜ような体液が流れ出す。
「これ美味しいんだよねっ」
アイギスは座り込んで体液を指で取るとペロペロ舐めている。
「……」
恐らく蜂蜜なのだろうが、絵面がかなりアレだった。
「さてと、クインの巣は………んんん???
成る程ねぇぇぇ???ティシー達が数を減らすのを待ってたんだ♡♡♡」
クインが飛んできた方角に大きな蜂の巣を発見したティシーは嬉しそうな、好戦的な笑みを浮かべる。
「なにっ?あっ!」
手に体え……蜂蜜をべったり付けて、未だにペロペロと舌先で舐めながらアイギスも『ソレ』を見ると目を輝かせる。
「えぇっと……あの……クイン・ワスプルギスよりも遥かに大きいのって……?」
クイン・ワスプルギスの巣は今まさに雀蜂のような魔物に壊されていた。
真っ赤な身体は鎧を纏っているかのよう。
「さて、やるよ♡♡♡」
此処からが本番だった。
設定
受付嬢のお姉さん
茶髪、大きな垂れ目で瞳は赤。20代半ば程。
Eランク昇級クエスト
Eランク冒険者推奨のクエストの中でも比較的簡単な物が選ばれる。
ワスプルギス
低級魔物。ルリモンハナバチと同様の見た目で蜜蜂の生態をしている人間より大きな蜂。特殊な攻撃方法は持たず、噛み付きと毒針攻撃しかしてこない。毒性も弱く攻撃性も弱いが力の持たない民には充分驚異。巣に気付かずに近付いてしまうと問答無用で刺される為駆除は必要。現実世界とは違い植物の繁栄に組み込まれてはいない。これは世界の魔力が植物の成長を促進させ、受粉等は行われずに種が生成される為。体液は蜂蜜だがクインと違い重宝はされず汚い体液扱いされる。
クイン・ワスプルギス
ワスプルギスの女王。低級魔物。ワスプルギスより遥かに大きいが、その分動きが緩慢であり弱い。体液の蜂蜜は兵隊よりも甘いローヤル。




