メスガキ蛇娘は無自覚過ぎるッッッ!!!
「す、凄い……!コレは超大物……!」
フォースは圧倒されていた。ティシーが影から出したアダマス・ドラゴンは長年アルコスのギルドや町を苦しめていた長寿の個体であり、普段アダマス王国やアダマス商店が扱う個体とは格が違っていた。
「でしょでしょでしょ〜〜〜♡♡♡
じゃ解体よろしくね〜〜〜♡♡♡」
「はっ!皆、急いで取り掛かるぞ!」
「「「「おぉぉぉぉおおおおおおお!!」」」」
フォースを含めたギルドの解体職人達が総出で取り掛かる。
ティシーは解体場を後にするとギルドはもぬけの殻。アイギスだけが独りで椅子に座っていた。
「ティシー、誰も居なーいっ!ギルドカードはーっ!?」
「皆解体と広場の片付けに回ってるからねーーー。明日エウと一緒に作れば〜〜〜???」
予想外の大物のアダマス・ドラゴンだった為人員がそちらへ割かれてしまっていたのだ。
「むぅ……お兄さんと一緒に行くもん!
そういえば……どうやってお兄さん達の宿屋を探すの?」
「ティシーが直接契約してるオニーサンとアイギス、間接的に契約してるエウの居場所は感知出来るからだいじょーーーぶ♡♡♡」
「…なんかすごくイヤっ」
「いくよーーー!!!」
二人はギルドを後に、ラグニア達の後を追う。
観光ついでか飛んだり駆けたりはせずゆっくりと歩き出した。
「……ごゆっくりと、おくつろぎ下さいませ」
何度も言うがラグニアには常識が欠如している。
フォースの金だからと遠慮もせず、一番立派なホテルへと入り、一番高い部屋を選んでいた。
更に常識が欠如している為、四人一部屋にしていた。女性への配慮をしていたラグニアは何処へ?
「おぉ!!凄いね〜!!アダマス鉱石で光り輝いてるよ!!」
豪華絢爛としか良いようのない部屋だった。
寝室には大きなベッドが一つだけ置いてあるが、その一つが規格外な程に大きい。
「エウはもう寝るの?」
「……フン。
あーしは別に寝る必要無いけど、寝た方がリフレッシュ出来るから……」
しかしベッドの前に立っても、エウはラグニアの背中から下りようとはしない。
「……えっと、下りないの?」
「……あーしが下りたら、ベッドが燃える。
つーかこのホテル自体燃えて消し炭になるッつーの。
……お……お兄ちゃんが平気なのは『危害を加えられない』制約のお陰」
「……成る程ね」
下 ろ せ な い !
「……あ。危害を加えられないなら、僕が先に寝ていたらベッド自体が燃えちゃう心配は無いんじゃ……?」
「……知らない」
――ぎゅ。
エウの抱き締める手に力が入る。
「……まぁ一応、ベッドに触れないようにしてみる?
取り敢えず試してみようよ。先ずは前に来て?」
「……ン」
床に足を付かずにラグニアの身体を器用に移動すると抱っこの体勢に。
至近距離で見詰め合う形になり、視線が絡まるとエウは頬を染めてラグニアの胸に頭突きかと思う程の勢いで顔を埋める。
危害を加えられない為痛くは無いが凄まじい衝撃だった。
「……早くしろよ」
「はいはい。じゃあ倒れるよ」
ゆっくりベッドに座ると横になる。ラグニアの上にエウが横になるようにすると、ベッドは燃えなかった。
「なんとかなったね……。」
「……あ」
エウは持ってきていたステンスノーの眼球を取り出す。メドゥーサーのもついでに、四つの眼球を持ってきていた。
ステンスノーの魔眼『凍土』で僅かに熱が抑えられていた。
「……ありがとう、お姉ちゃん」
アネキと呼んでいた強いエウでは無く、すっかり甘えん坊の妹と化していた。
魔眼『凍土』に加えて契約したラグニアが居る為、離れてベッドで寝ても何ら問題は無いのだが、二人は知らないのでそのまま眠ろうとしていた。
ステンスノーは恋愛をするのが夢だった。彼女は最期まで叶う事は無かったのだが、エウと同じく他人に触れられなかった彼女は『キスマーク』という物に強い憧れを抱いていた。
何十回何百回何千回何万回と話を聞いていく中で、ほんの僅かにもエウも『ソレ』に興味を抱いていた。
どれ程の時間が経過したのだろうか。エウはラグニアの温もりに心臓の鼓動が早くなっているのを自覚していた。
ふとラグニアを見ると瞼を閉じて寝息を立てている。
「……オイ。寝てンのか?オイ」
つんつん。つんつん。
指で頬を何度も優しく押すが反応は無い。
不老の身体になったとはいえ異世界転生して未だ日も浅く、数日前までは現実世界に居た普通の人間。
そんな彼は日々の疲れが蓄積し眠りに落ちるのが早かった。
「……フン」
自分よりさっさと先に寝てしまったラグニアを見るエウは不満そうに頬を膨らませていた。
じーッ。
両眼を瞑っているラグニアの寝顔をじっと眺めるエウ。
「……寝てンだよな……?
寝たフリしてやがッたら許さねェからな……
――ンッ」
ゆっくりとラグニアの首筋に顔を近付けると雄の匂いを感じながら瞳を閉じて――
――ちぅ♡
首筋に優しく吸い付く。
僅かな痛みを伴う行為だがエウには敵意も無く、ほんの僅かな痛みの為に制約は発動せず、ラグニアの首筋にはエウの唇の形が鮮やかに咲いていた。
「……こ、これが、キスマーク……。フーン……」
じーッ。
咲いたキスマークをまじまじと観察している。ステンスノーが言った通りだった。恥ずかしさと嬉しさ……それに、溢れてくる独占欲……。
――ペロッ♡
キスマークを見ていると愛おしそうな表情で舌先で舐めてみる。
スプリットタンのように裂けた舌先にはそれぞれに舌ピアスがしてあった。
ステンスノーが手作りでプレゼントしてくれた大切なピアス……。
丸いピアスはステンスノーの『凍土』の魔力が練り込まれていて、冷たい。熱い舌の中にひんやりとしたピアスの感触……ラグニアが起きるには充分過ぎた。
「……エウ、さっきから何して――」
「な――ッ!?なんにもしてねェだろーがッ!?」
ラグニアに気付かれ、至近距離で見詰め合い動揺したエウは、ラグニアを黙らせようとした結果――
――ちゅ♡
思いっ切り唇同士の口付けをしてしまっていた。
「――ッ!?
こ、このッ!!契約した魔物をその日の内に襲うなんてッ!?
お兄ちゃんの変態ッ!!」
「……いや、襲われてたの僕だよね……?」
「〜〜ッ!?」
恥ずかしさのあまりラグニアの頭をポカポカ殴り付けるが誓約で全く痛くない……。
『「ラグニア・エーリュニース」と「エウリュ=アーレ・ゴルゴンゾーラ・エーリュニース」。
両名の「エンゲージ」を確認。「エンゲージ契約」として認証完了。「エンゲージリング」を付与』
「はァ?」
「え?」
突如機械音声のような女性の声が二人の空間に響き渡る。すると二人の左手の薬指に指輪が顕現した。
ラグニアの薬指にはエウのように赤白く光り輝く蛇を模した指輪が。中央は魔眼がデザインされ、瞳やデザインの溝をマグマのような光が流動していた。まるで薬指にエウが巻き付いているかのような感覚を覚える。
エウの薬指には大きな瞳の女性らしいデザインの指輪が。瞳は透明で中にはレモンイエローとスカーレットの光が煌めき爆ぜていた。ティシーと同じ瞳だが、これがラグニアの瞳だとエウには分かっていた。
「……け、結婚指輪……?
でもエンゲージリングって……婚約……。
これが何かは分からないけど、そろそろ寝ようか……?
フロントの人にはティシー達の事も伝えておいたから鍵は開けなくても問題無いし……。
コレは明日ティシーに聞けば分かるかな……?
おやすみ、エウ」
「……ン。おやすみ……お兄ちゃん」
ラグニアの左胸に右耳をつける形になっていた。
――ドクン……ドクン……ドクン……ドクン……
ラグニアの心臓の鼓動が何故か心地好い。
「すぅ……すぅ……」
ラグニアは完全に寝てしまった……筈。
このエンゲージリングが何なのか。この世界に住んでいるエウには当然何か分かっていたのだが、自分の口からは伝えられなかった。
暫しラグニアの顔をじっと見詰める……。
「……ン。はむッ」
ちぅ……♡
ちぅ……♡
ちぅ……♡
ラグニアが完全に眠りに落ちたのを見るとキスマークを気に入ったのか、更に付けていく。
幾つか付けると満足そうに胸に顔を埋める。安心感と温もりでいつの間にかエウも眠りに落ちていた。
「…なんなのこれっ」
「………随分と仲良くなったみたいだね、オニーサン???」
一つの巨大なベッドで寝ている二人。
ラグニアの首筋に留まらず、身体中に付けられていたキスマークを見るとティシーとアイギスは嫉妬で内心ブチギレだった。
それでも二人を起こさないようにと、ティシーは念の為に能力でエウの体温を人肌まで下げるとそっとベッドに入り、ラグニアの左側に寄り添って眠りについた。
アイギスは音が出ないように空中を歩いて反対側へと回り込むとラグニアの右腕にしがみついて眠りにつく。
この二人がエンゲージリングに気付くのは数時間後の事だった。
設定
ラグニアのエンゲージリング
現実世界のエンゲージリングとは全くの別物。
見た目は蛇のシルバーリングにサーモンピンクのメッキがされていて、眼や溝にマグマが流れているような感じ。蛇の瞳は魔眼になっていてエウの魔眼と同じデザイン。蛇なのだがエウを感じる。
エウのエンゲージリング
ラグニアのとは違い女性的なデザイン。透明な瞳が中央にデザインされ、レモンイエローやスカーレットに光り輝いている。エウにはラグニアの瞳だと分かったが、他の者が見ても誰の瞳か判断は出来ない。




