楯の乙女エマ(1)
ようやく出会うことができた、楯の乙女エマ。
しかし彼女は、俺のことを魔族だと疑い、武器を構えている。
……これは、困ったぞ。
そのとき――
空から無数の矢が降ってきた。
ガキッ、ガキーン!!
エマは左手に持った巨大な盾で、その全てを跳ね返す。
「敵襲! 敵襲ーーっ!!」
グラニットの守備兵が叫ぶ。
見ると……巨大な魔物たちが迫っていた。
その背には、王都の兵士たちが乗り、こちらに向かって矢を放っている。
「あたしたちの力になりたい……さっきそう言ったね? だったら、あの敵を蹴散らしてみな」
「望むところだ」
「へぇ、今なかなか……いい顔になったじゃないか。これは頼もしい」
これはピンチではない。
エマを味方に付けるチャンスだ。
……だとしたら、勝たなければ。
「ミネア! 敵の状況は?」
「象みたいな魔物が20頭。すごい速さで迫ってますにゃん。乗ってるのは王都の兵士……あ! 首に赤いバンダナを巻いてますにゃん!」
「くっ! アエリアも……オブリ教の手に落ちたか……」
歯噛みするレベッカ。
おそらく、その推測は間違っていない。
「レベッカは奴らのバンダナを斬ってくれ!」
「承知! ロケット・パァンチ!」
右手が空を切り裂き、兵たちが次々と気絶してゆく。
それと同時に、統率を失った魔物たちが暴れ始めた。
「ミネア! 足止めを!」
「はいですにゃん。アブソリュート・ゼロ!」
巨大な象の魔物たちが、一斉に氷漬けになる。
これで大勢は決した……と思ったのだが……
「ヒデオさん、危ない!」
巨大な火球が、俺めがけて飛んできた。
「プロテクション!」
しかし、エリザの防御魔法で無効化される。
「助かった、エリザ」
「いえ、でも誰が……?」
火球が放たれた先を見ると、空を飛ぶ人影……
青い肌と、悪魔のような翼を持った人物が、こちらを睨んでいる。
「あれが魔族……なのか?」
「言ったはずだぞ。兵たちは、魔族に率いられていると」
エマは後方で腕組みをしたまま、俺たちの戦いを見ている。
「アヴィ、飛んでヤツの背中を取れ!」
「ま゛」
いつの間にか変身していたアヴィが、魔族の背後へと回り込む。
「アネモネ! ヤツの周囲に矢を!」
「わかったわ。必殺、MNC!! 」
背後を取られ、周囲を矢で攻撃された魔族は……そう、こちらに向かって攻めてくる。
「くらえ! 破邪の剣!!」
実戦で使うのは初めてだったが、切れ味は抜群だ。
俺は……いや、俺たちは魔族を一刀両断した。
「なかなか見事だったぞ!」
魔族の死体を確認していると、エマがやって来た。
「躊躇なく魔族を倒したということは……タケベヒデオ、あんたは味方ってことで、いいのかもね」
「よかった。それじゃ俺たちの……」
「いや、だからって、簡単に仲間になるとは思わないほうがいいよ。そう、大食い対決であたしに勝ったら、何でも言うことを聞いてやるさ」
「うぉーー! ひさしぶりの大食い対決だぁ!」
「宴だ! 宴の用意をしろぉーー!」
「わぁ、なんか楽しそう!」
兵士たちが盛り上がっているし、アネモネたちも上機嫌だが……俺だけが憂鬱だ。
エマと大食い対決なんて、勝てるわけがない。
原作のゲームでは、ウィル王子がこの大食い対決に敗北し、三日三晩寝込む。
ウィルが勝てない相手に、俺が勝てるわけがない。
自慢じゃないが、○郎系の大盛りラーメンだって食べきれる自信がないほどの大食い弱者だ。
あぁ、気が重い……




