鉱山都市グラニット
王都から差し向けられた兵士たちによって、天空の町ボルテは襲撃され、町の人々と……セイクリッドセブンのひとり、雷剣のサラも連行されてしまった。
ヤツらの狙いは間違いなく、セイクリッドセブンだ。
そうなると……次は、鉱山都市グラニットが危ない。
「バレット爺さん、鉱山都市グラニットへ急いでくれ」
「がってん承知じゃぞぃ!」
鉱山都市グラニットは、今いる天空の町ボルテからだいぶ離れている。
陸路だと、どんなに急いでも半月はかかったことだろう。
飛空艇を手に入れていて、本当に良かった。
俺は、山田疾風怒濤に感謝した。
◇
鉱山都市グラニットは、良質な月晶銀が採れることで有名だ。
月晶銀とは、この世界で最も希少で硬い金属だ。決して曇ることのない輝きと、鋼を遙かに超える強さを併せ持っていて、RPG的にはどう考えてもミ○リルなのだが、おそらくそう言ってはいけない大人の事情があるのだろう。
町は鉱山の中にある。
地下都市での暮らしが、どのようなものなのか?
ゲームでしか遊んでないので、実際に訪れるのは楽しみだ。
楯の乙女エマに会うのも楽しみだ。
俺たち『勇者亡き勇者パーティ』……おっと、この名称は使っちゃいけないんだった。
もとい、俺たちのパーティは壁役がいなかったから、もし仲間にできるならこれほど心強いことはない。
……いや、『もし』ではなく、なんとしてでも仲間にしよう。
雷剣のサラが王都に連行されてしまった今、ひとりでも多くセイクリッドセブンを仲間にし、偽勇者モルテディオに対抗する力を得なければ……
しかし、鉱山都市グラニットの門は、固く閉ざされていた。
◇
鉱山都市グラニットの住民たちは、最大級の警戒態勢を取っていた。
門を厳重に閉ざし、屈強な兵士たちが守りを固めている。
「俺たちは、勇者ウィルの遺志を継いで戦っている。楯の乙女エマに会わせてくれ」
「勇者ウィル? 王都の関係者か! だったら通すわけにはいかねーな!」
おそらく、天空の町ボルテの状況を耳にしているのだろう。その判断も無理のないことだ。
「聞いてくれ。勇者ウィルは敬虔なセレス教徒だった。しかし今、王都では国教がオブリ教に変わり……」
俺の話を遮って、兵士が怒鳴った。
「あぁ! ごちゃごちゃ、うるせーんだよ。そんなめんどくせー話、どうでもいい。話が長いヤツは、なんか隠し事をしてるヤツだって、姐さんがよく言ってるぜ。だから、ここは遠さねぇ」
「俺たちは味方だ。エマに会わせてくれ」
今度は短く言ってみたが……
「だから、素性のわからねぇヤツには会わせねぇって言ってるだろ?」
と、拒絶されてしまう。
これは困ったぞ……?
そのとき――
門の通用口を開けて、2メートル近い大女が現れた。
「あん? なぁに揉めてるんだい?」
「姐さん!」
間違いない。
彼女が、楯の乙女エマだ。
「エマ、俺は竹部秀夫。この町は王都の連中に狙われている。だから力になりたいんだ」
エマは黙ったまま、じろりと俺たちを見る。
……すごい威圧感だ。
「エリザベス=ウィッシュハートに、レベッカ=ウィンドハート……それに、これは珍しい。アヴィゲイル=ダークハートか……あんたらの噂は聞いてるよ」
「光栄です」
「初めまして……だな」
「……たわわ」
場が和んだ……? と思った次の瞬間、エマはまた厳しい表情になる。
「だが……タケベヒデオとか言ったね? あんたは何者なんだい?」
「お、俺は……」
困ったぞ。身分を証明するようなものが何もない。
異世界から来たデバッグアルバイトですなんて正直に答えても、余計怪しまれそうだし……
困ったいると、エリザが助け船を出してくれた。
「ヒデオさんは、エピン大渓谷の向こうからいらしたそうです。決して怪しいお方では……」
しかし……エマの表情は、さらに厳しくなった。
「やっぱりね。嬢ちゃんは知らないみたいだから教えておくが……大渓谷の向こうには、魔族の国があるんだ。そして、天空の町ボルテを襲った王都の兵たちも、魔族に率いられていたと聞く。タケベヒデオ……あんたのことだね?」
「ち、違う!」
……しかし、それを証明するものは何もない。
「魔族ってのは、人間に化けるのが得意だって聞く。おかしいと思ったんだよ。ボルテは、あの雷剣のサラが守っていた、なのに、あっさり連行されちまうなんてね。……タケベヒデオ、あんたがサラたちを騙したんだろ?」
「そ、それは違います!」
「外野は黙ってな!」
エマに一喝され、エリザも黙ってしまう。
「あたしたちの力になりたいって? 笑わせるんじゃないよ。本当の敵ってのは、まるで味方みたいな顔をして近づいてくるもんさ。そうだろ? タケベヒデオ」
エマが武器を構えた。今にも襲いかかってきそうな雰囲気だ。
戦っても勝てる気がしないし、そもそも彼女とは戦いたくない。
……これは、困ったぞ。




