ヒデオの秘密(1)
こうして、レベッカの義手は完成した。
「普段使いの義手としては完璧だ。できればこのあと……戦闘能力も試したいところだな」
「よし! 魔物退治に行こう」
「……しね」
「『私もついてくわ。メンテナンスとかしたいしね』だそうだ」
「あの……やっぱりその、いきなり『死ね』と言われるのは……慣れないのですが……」
エリザが申し訳なさそうな顔をして、アヴィに頭を下げる。
「……けるわ」
「『ごめんなさい。以後気を付けるわ』だそうだ」
「……なめる?」
「『お詫びの印に、例のまずい飴なめる?』だそうだ」
「あ、いえ……遠慮させていただきます」
「あうぅー、なぜ私ばっかり、あのまずい飴担当なんですかにゃん?」
流れ弾を喰らって、ミネアがダメージを受けていた。
◇
蛇の道の手前にある、俺が【ENTRY_OFF】を使った高台――
ここが、義手の試運転をする場所だ。
「この場所は、ワイバーンが多く出る。ヤツら魔法耐性が強いから気をつけてくれ」
「承知した。腕が鳴るな。……おっと、今のは洒落じゃないぞ」
ヴィィィィン……
レベッカの声に反応して、義手が振動を始めた。
「はっはっは。まさか、本当に腕がなるとはな」
「……たいね」
「『それ、自動的に汚れを落とす機能。音声認識に反応したみたいね』」
……なんか、無駄に高機能だ。
そしてやはり、話をしているとお約束通りワイバーンが現れた。
「話の途中悪いがワイバーンだ!」
おぉ、『一生のうち一度は言いたい台詞』が言えて、俺の満足感がすごい。
「なぁにドヤ顔になってるのよ。戦うわよ!」
「お、おう」
……アネモネに怒られてしまった。
そうこうしている間にも、レベッカは大地を蹴って跳躍し、ワイバーンたちを次々と屠ってゆく……
「すごいぞ! 以前と同じ……いや、それ以上に素早く剣を振れる!
「……んで!」
「『レベッカさん、“ロケットパンチ”って叫んで!』だそうだ」
「承知! ロケットパンチ!!」
叫び声と同時に、レベッカの義手が射出される。
剣を持ったまま……猛スピードで空を切り裂き、気が付くと30匹ぐらいいたワイバーンはすべて斬り殺されていた。
「す、すごいですにゃん!」
「ああ、脱帽……いや、兜を脱いで感服するよ」
「あ、今言い換えたのって、マ○ンガーZネタ?」
通じてしまうアネモネが怖い。
「アヴィ、素晴らしい義手をありがとう。これは完成後に約束したゴールドだ」
俺は【ADD_GOLD】で入手した6万5535ゴールドをアヴィに渡した。
「……くない?」
「『ありがとう。でもちょっと多くない?』か……いや、余った分は今後のメンテナンス料というか……アヴィ、もしよかったら俺たちの旅に同行してくれないか? 君のその力が必要なんだ」
俺がそう言うと、アヴィはエリザの手を取ってこう言った。
「……ないわ」
「『あなたはいい人っぽけど、何か隠してる。……隠し事をしてる人に、命は預けられないわ』……とのことです」
「隠し事か……」
「あたしたちも、ずっと気になってたの。今までは『守秘義務』って言われて、それ以上は聞かなかった……ううん、聞けなかったけど……」
「ヒデオさんのお名前が、魔王デオメットに似てるから……そのすごい力は、何か悪い力なんじゃないかって……心配なんですにゃん」
アネモネもミネアも、すごく真剣な表情だ。
「私だってそうだ。この義手のために、あんな大金をぽんと出して……『気にするな』と言われても、どうしても気になってしまうではないか」
「ヒデオさん、みんなあなたに感謝しているんです。でも、だからこそ……知りたいのです。共にこれから旅を続けてゆく仲間として……」
そうだな。確かに、ごまかし続けているのは良くない。
「わかった。ちゃんと話すよ。俺の秘密を……」




