カラクリ師アヴィ
「……すき」
アヴィの言葉は、俺以外の全員を驚かせた。
「どどど、どういうことですかにゃん?」
「で、出会って3秒で告白!?」
「はっはっは。なかなか情熱的じゃないか」
「あの……どういったお知り合いで……」
……まずいぞ。
ここはきちんと、誤解を解かなければならない。
「みんな、落ち着いて聞いてくれ。彼女、アヴィゲイルはとても内気な性格なんだ。極端な口下手だから、会話のほとんどは『念話』で行っている。こうして手を触れている者だけが、意思疎通できるという仕組みだ」
この元ネタって、ガ○ダムだろうか? ゲーム業界って、なぜかガ○ダム好きが多い。『ガンダムは共通言語』とまで言われているので、俺は詳しくないがきっとこれもガ○ダムネタなのだろう。
「さっき彼女は、『こんなに私好みの道具を集めて、ひょっとして私の腕を試す気?』と念話した。そして最後の『すき』だけが、言葉として外に漏れたんだろう」
「い、意味わかんないし」
戸惑うアネモネに向かって、アヴィはこう言い放った。
「……しね」
「な、なによ! ひどくないこの子?」
「うわぁ! それも誤解だ。彼女は今、『先にちゃんと説明しておくべきだったですしね』って言ったんだ」
「ま、紛らわしいですにゃん!」
「……ださい」
「ど、どこがダサいんですかにゃん?」
「いや、『どうか誤解しないでください』って言ったんだ」
「あぁ! もう、何なの? その『ばけらった』みたいなの……じゃあ、みんなで手を繋いで話せば良いでしょ?」
「……あんです」
「え? なんで急に山脈の話?」
「いや、『それは名案です』って言ったんだ」
……もう、わけがわからない。
アネモネの提案通り、全員で手を繋ぎ以下のような意思疎通ができた。
・アヴィは、俺たちの集めた物を『センスが良い』と評価している。
・レベッカの義手について相談すると、『可能だがお金がかかる』とのこと。
・『今日はもう遅いので、私の研究室に来ればいい』
俺たちは喜んで研究室へと向かった。
◇
アヴィの研究室は、ガラクタが散乱していた。
無数の歯車に、ラバライト? って言うのかな? 色つきのワックスの玉が、ガラス管の中で浮遊するインテリアや、なんかわけのわからないペット風の機械などが、ごちゃごちゃと動き続け、光り続けている。
「……わって」
「え? 割るんですか?」
「いや、『好きなところに座って』と言っている」
足の踏み場もないくらい散らかっているので、正直どこに座っていいのか迷うところではあるが、それでも各自ポジションを見つけて車座になった。
「……くりよ」
「『あなたたちの商品、調べれば調べるほど、すごい。特に義手を作るのにうってつけの材料がたくさん集まってるわ。伸びる定規は関節の素材に使えそうだし、罵倒人形はそのまま意思伝達回路として使える。沸騰しない鍋は、魔導エネルギーの熱から皮膚を守れるし、引けない弓の剛性は、義手の外装にうってつけ! もうテンション上がりまくりよ』だそうだ」
「念話の情報量……すごいですね……」
「あの……私が買ってきた、まずい飴は……やっぱり、使えませんかにゃん?」
「……べきね」
「『悪いけど、あのまずい飴は使いようがないから、買った人が責任を持って食べるべきね』だそうだ」
「うぅ……そうしますにゃん……」
涙目になっているミネアを、エリザが優しくなでている。
「だいじょうぶです。我慢して食べ続けていれば、ミネアさんだっていつかあの味に慣れますよ」
「や、優しい顔して……ひどいこと言ってますにゃん」
「……え?」
つまり『全部自分で食べろ』と念を押していることに、エリザは気付いていない。
「ほら、言っただろ? この女、可愛い顔して、ナチュラルに口が悪いんだよ!」
たまたまスイッチが入っていた罵倒人形が、そんなエリザにとどめを刺した。
◇
「そう言えばアヴィ、義手を作るのはお金がかかるって言ってたけど、具体的にいくらあれば良いんだ?」
「……くらいね」
「『そうね。前金に6万ゴールド、完成後に6万ゴールド。お友達価格にしても、このくらいね』だそうだ」
「そ、そんなにするの?」
「悪いが……持ち合わせがないな」
俯いてしまうレベッカ。
「いや、大丈夫だ。とりあえず、6万5535ゴールドを渡しておこう」
「そ、その中途半端な数字……何なんですかにゃん?」
「ん? キリがいい数字だと思うけど……」
なんかこのやり取り、前にもあった気がする。
「ヒデオ殿、そのような大金、いったいどこで?」
「これは……まぁ、守秘義務があって言えないんだ」
「出た! ひさしぶりの守秘義務!」
これもまぁ、デバッグコマンド【ADD_GOLD】で手に入れたものだ。
正直、多用するとインフレを起こしそうなので封印していたのだが、レベッカの義手のためなら使わざるを得ないだろう。
「……たわ」
「『あなた、ただ者じゃないわね。ちょっと興味がわいてきたわ』……だそうだ。いや、そう言われると……」
「自分で通訳して、自分で照れてるし……」
とのとき――
部屋の明かり急に薄暗くなり、街中にアナウンスが響いた。
「B地区、計画停電を始めます」
「なんか、不便よね。これ……」
「……きるわ」
「『最近、魔物のせいで魔導エネルギーの供給が不安定なの。北の洞窟に行って退治してくれたら私も義手開発に専念できるわ』だそうだ」
「わかりました。行きましょう」
「あ、うん……」
エリザがものすごい乗り気だが……困ったぞ。




