機械都市ヴァルカニア(1)
港町アエリアから定期連絡船に乗り、ようやく機械都市ヴァルカニアへと到着した。
ゲームの船移動は、行き先に関わらず10秒足らずで到着する。
でも実際には、3日かかった。まぁ、文句言っても仕方ないのだが……
「うぅ、まだ地面が動いてる感じするぅ……」
船を下りたあとも、みんな足下をふらふらさせている。
「でも見てみろ。すごいぞ」
機械都市ヴァルカニアは、壮観だった。
高くそびえる塔。派手なネオン。スチームパンクな世界。
いや、スチームパンクは蒸気だけど、この街は魔導エネルギーで動いている。
中世ヨーロッパ的世界観という意味では、だいぶ無理のある見た目の機械都市だが、設定的には一応、古代文明の遺跡を、原理もわからずに使っているということになっているらしい。
でも、ゲームで見た時より活気がない感じだぞ。
人通りも少ないし……
高い建物を見上げながら進む。……なんか、首が痛くなってきた。
「わっ! この道、勝手に動き出した!」
「ああ、これは動く歩道だ。転ばないようにな」
「すごい! 便利ですにゃん」
「そお? 歩いたほうが速いんじゃない?」
「だから危ないって!」
俺の警告も聞かず、アネモネが動く歩道の途切れた場所でつんのめって転んだ。
「きゃー!」
「ほら、言わんこっちゃない」
「パンツ丸見えですにゃん」
「み、見ないでよぉー」
……ごめん。
バッチリと見てしまった。
エリザの回復魔法を受けながらも、アネモネは超不機嫌だ。
「あたし、これ嫌い。普通に歩けば良いでしょ。何よ、横着しちゃって。自分の足で歩きなさいよ。だからこの街の人、みんなデブなのよ」
直後――
通行人たちが立ち止まり、わらわらと寄ってくる。
「デブじゃない。ふくよかって言え!」
「太ってるんじゃない。おっきいんだ!」
「ヘイトスピーチ反対! 体重差は個性だ! 分断を煽るな!」
「あああっ! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
平謝りするアネモネ。
そうだな。デブ差別は良くない。
小太りな原作者・山田疾風怒濤の魂の声が聞こえた気がして、俺も深く同意した。
住民たちの怒りがようやく収まった直後、街中にアナウンスが響き渡った。
「D地区、計画停電を始めます」
ネオンが消え、動く歩道も止まる。
どうやらこの機械の街は今、エネルギー不足で困っているらしい。
俺たちを取り囲んでいたデブたちも、わらわらと家へと帰っていった。
「あぁ、怖かったぁー」
老人軍団の次は、デブ軍団か……
この先が思いやられる。
◇
デブ騒動が落ち着いた後、俺は真っ先に道具屋へと向かった。
ゲームではこの街で、死者復活アイテムである『奇跡の果実』が売られているのだ。
これさえ使えば、ウィル王子を生き返らせることができるかも……
そんな一縷の望みをかけて訪れたのだが……やはり無駄足だった。
ゲームでは、主人公が死んだらゲームオーバーだが、仲間の死亡は教会で祈れば復活できる。
しかし、そんな仕様はリアルの教会では存在しなかった。
……やはり、アイテムでも同じだったか。
どうやら、死者復活なんてゲームだけのお約束らしい。
「ご来店サービスです。こちらをどうぞ」
がっくりと気落ちした俺を気遣ってくれたのか、店員さんがお菓子をくれた。
サ○ミアッキというゴムタイヤみたいな色をした飴だ。
北欧旅行のお土産として、俺も食べたことがあるが、ものすごくまずい。
見た目もゴムタイヤだが、味も香りもゴムタイヤっぽい。
正直、ゴムタイヤそのものなのではないかという気さえするお菓子だ。
俺が苦い顔をしていると、ミネアが興味を持ち始めた。
「どのくらいまずいのか、試してみたいですにゃん」
「いや、やめたほうが良いと思うけど……」
俺の反対を押し切り、サ○ミアッキを口に放り込むミネア。直後……
「ぎにゃーー!」
全身の毛が逆立つほどまずいことを、身をもって証明してくれた。
それと、『勇気と無謀は違う』ということも……




