女騎士レベッカ(2)
レベッカの紹介で宿を取り、俺たちはそこを拠点として、砦攻略作戦の準備を始めることとした。
「砦の警備は厳重なんでしょ? ヒデオ、どうやって攻め込むつもり?」
「レベッカ、守りを固めているのは、アバン団のメンバーなのか?」
「ああ。それは確認済みだ」
「だとしたら、答えはもう出ているな」
「私が奴らのバンダナを切り裂き、気絶させている間に侵入する……だな?」
「そうだ。奴らが呼び出した魔物は、俺たちが倒す!」
「マルケーノフを倒して、レベッカのお父さんも助け出さなくちゃね」
あのおぞましい『シニア・クライシス』のおかげで、砦攻略の糸口がつかめた。おそらく、あの時よりも敵は強いだろうが、俺たちにだって心強い仲間がいる。
「私は町の警備兵を集めておく。決行は、明日の朝だ!」
その後、いくつかの打合せを終え、レベッカは去って行った。
うん、本当に心強い仲間だ。
◇
「さてと……俺は、こっちの準備をしなくちゃな」
市場で買ってきた絵の具を水に溶き、革製の水筒に入れる……
これも、マルケーノフ対策のひとつだ。
そのとき――
ノックの音がして、アネモネが入ってきた。
「ヒデオ、何やってるの?」
「絵の具を、ちょっとな」
「絵でも描くつもり?」
「まぁ、それもいいかもね」
この先の詳しい計画を話してしまうと、またいろいろと説明しなくてはならなくなるから、誤魔化そうとしてこう言ったのだが、意外なことにアネモネが乗ってきた。
「あたし、モデルになってあげよっか?」
「え?」
「芸術のためなら、一肌脱いでもいいわよ?」
「え? ぬ、脱ぐって……?」
急にそんなこと言われて、ドキドキしてしまう。
「こ、言葉の綾でしょ!? 力を貸すって意味よ。ほんとに脱ぐわけないじゃない!」
アネモネも妙に動揺している。
「そ、そうだよな。あ、焦った……ははははは」
びっくりした。ちょっとエッチなイベントが始まるのかと思った。
俺は昔からモテなかったから、こんなとき……つい勘違いして、勝手に盛り上がってしまう。
そうだよな。言葉の綾。ほんとに脱ぐわけないもんな。
ほら、制服の可愛いカフェのチェーン店で、店員の女の子が飲み物にメッセージを書いてくれただけで、あの子俺のこと好きかも? とか勘違いしちゃうヤツだ。
……いかんいかん。自制しろ、俺の心の中に住むチェリーボーイ。
しかし、俺がこんなにも自制しているのに……なぜかアネモネは俯いたまま、耳まで真っ赤にしている。
「…………けど?」
「……え?」
「ど、どうしてもって言うなら……脱ぐけど?」
ちょ、ちょっと待て。
今アネモネ、胸元のボタンに手をかけてないか?
上からひとつひとつ……外してないか?
ま、まさか……本当に脱いでくれる……のか?
アネモネは無言のまま、さらに2つ目のボタンを外し……
すぐさま3つ目のボタンを外すと……
ぱっと上着を脱ぎ捨てた。
「あー! この部屋、暑いわよねー!」
……あ、そっちか。
ただ単に暑かったから、上着を脱いだだけだったのか。
顔が赤いのも、部屋が暑かったせいか。
びっくりした。
ついうっかり、勘違いすることだった。
「あ、ごめんごめん。今、窓を開けるよ」
俺がそう言って立ち上がると、アネモネが意外そうな顔になった。
「だってほら、暑いんだろ? 風通し良くすれば、少しは涼しくなると思ってさ」
「う、うん……」
「あ、何か冷たいもの飲む? ミネアを呼んで氷の魔法で……」
「………………ばか」
「え?」
そのあとなぜか気まずい空気になって、アネモネはすぐに部屋を出て行ってしまったけど……どうしてなんだろう?
やっぱり女の子の気持ちって、よくわからない。




