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デバッグアルバイトのおっさん、転生して勇者となる。(デバゆう)~デバッグ知識で、異世界の壊れた運命を書き換える~  作者: うずまき鳥


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港町アエリア(1)

 翌日――

 俺たちはついに、目的地である『港町アエリア』に到着した。


「すっごい賑やかな町ね」


「おっきな船が、たくさん停まってますにゃん」


 日本でもよく見る港町……アエリアの第一印象としては、そんな感じだ。

 漁師だの荷揚人足だのが忙しく働いている。これも見慣れた光景だ。


 違いがあるとすれば、水が日本の海より、ずっと綺麗なこと。

 それと……なんだろう? この妙な違和感は……


 見慣れた港町。でも、どこか引っかかる。

 嗅ぎなれた潮風の香り。でも、どこか妙な違和感がある。


「ねぇ、ヒデオ。あれは何?」


「ん? あれか……あれは……え? えええ!?」


「ま、魔物ですにゃん!」


 港町は、たくさんの魔物であふれていた。

 そうか……違和感の正体は、この魔物たち……

 感じた異臭も、魔物の発する匂いだったのか!


「魔物、やっつけますにゃん!」


 とっさに身構え、魔法で攻撃しようとするミネアを慌てて止める。


「いや、待て! よく見てみろ! あれは……どうやら悪い魔物じゃないみたいだぞ?」


 驚いたことに魔物たちは、重い積荷の上げ下ろしや運搬を行っていた。

 象のような魔物が荷物を吊り上げ、サイのような魔物が馬車……いや、魔物車を引いている。


「港の人たちが、魔物に仕事を手伝わせている……?」


「皆さん、魔物使いのスキルをお持ちのようですね」


 こんな設定……ゲームには無かったはずだ。

 俺がデバッグでプレイした港町アエリアは……人間だけが働く、ごく普通の港町だった。

 そもそもこんな、魔物と人間の共存なんてこと、ゲーム全体を通してありえなかった。

 魔物はあくまで倒すべき敵として登場したはずだったのに……


 ……いったい、なぜだ?

 主人公である勇者ウィルが死んでしまったことで、世界そのものが大きく変わってしまったのだろうか?


 ◇


「ヒデオ、そろそろ町で聞き込みをしようよ」


 アネモネに言われて、ようやく我に返った。

 ……そうだった。この町での目的は、二つある。

 二刀流の女騎士レベッカを仲間にすること。

 そして、ウィル王子の仇・魔物使いのマルケーノフを探し出すことだ。


 いや、もうひとつ。

 謎の警告文をくれた『伝書屋マッケンジー』にも会って詳しい話を聞いておかないとな。


 ◇


 ここで、セイクリッド・セブンについておさらいしておこう。

 セイクリッド・セブンは、『セイクリッド・ハートランド4』に登場する7人の主人公のことだ。


 ウィリアム=ブレイブハート勇者ウィル

 エリザベス=ウィッシュハート 聖女エリザ

 レベッカ=ウィンドハート 女騎士レベッカ

 アリア=フロストハート 氷姫アリア

 アヴィゲイル=ダークハート カラクリ師アヴィ


 このレベッカが、今回この町で仲間にしようと思っている女騎士だ。

 いっぺんに7人の固有名詞を出しても覚えられないだろうから、残りの2人については、また別の機会に説明することにする。


 ◇


「さぁ、聞き込み開始だ」


 そこにタイミング良く、よぼよぼの老人が歩いてきた。

 年齢は……80過ぎだろうか? ひたいの中心に、大きなほくろがある優しそうなお爺さんだ。

 重そうな箱を両手に抱え、ふらふらと歩いている。


「ぜぃ、ぜぃ……はぁ、はぁ……」


 なんか、見ているだけで気の毒になってきた。


「おじいさん、お手伝いしま……しょう……か?」


 声をかけてすぐに気付いた。

 お爺さんの首には、赤いバンダナが巻かれているのだ。

 そう、あの謎の警告文に書かれていた赤いバンダナだ。


「おお、親切なお方。ありがとう。お礼に案内してやろう……」


 直後、優しそうだったお爺さんの目が、怪しく光った。


「そう、地獄にね。ふぉーっふぉっふぉっ!」


 持っていた箱がはじけ飛び、中から魔物が現れた。


「うわっ! び、びっくりしたぁ!」


 驚いた俺をあざ笑うかのように、お爺さんが説明してくれる。


「ふぉっふぉっふぉっ! これがワシのスキル『邪悪・インザ・ボックス』じゃ! ここで死ねぃ!」


 ……なんでRPGの敵はいつも「死ねぃ」って言うんだ? しかも必ず『い』が小さい『ぃ』になってる……元ネタは……鬼平犯科帳? 昭和のドラマじゃないか!

 これも原作者である山田疾風怒濤のセンスなのだろうか?


 あと、『邪悪・インザ・ボックス』っていうスキル名も、びっくり箱の英語『ジャック・インザ・ボックス』そのまんまで、ちょっと頭がクラクラしてくる。


 ……あ、いや、真面目に戦わなければ。

 幸いなことに、箱から出てきた魔物は弱いゴブリンが4体だけだったので、俺が長いツッコミをしている間にアネモネとミネアが倒してくれていた。


 しかし、気が付くと、お爺さんは逃げ去ってしまった。


「一応、追いかけてみるか……」


「そうね。また襲ってくるかもしれないし……」


 ……この町での目的が、さらに増えてしまった。




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