表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デバッグアルバイトのおっさん、転生して勇者となる。(デバゆう)~デバッグ知識で、異世界の壊れた運命を書き換える~  作者: うずまき鳥


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/92

国葬

 王都でスタンピードが起きてから3日……。


 街はようやく、落ち着きを取り戻しつつあった。

 俺たちは今、宿のリビングに集まり、今後のことについて話し合っている。


「明日、国葬が行われます。ウィル王子と教皇聖下……そして、犠牲になったたくさんの方々を弔うために……」


 あくまでも事務的に伝えようとしているエリザ。

 しかし、その瞳は悲しみの色に染まったままだ。 無理もない。俺たちはこの一件で、あまりにも多くのものを失った。


 亡くなった兵士たちは約200人。市民は約50人。 子供たちに被害がなかったのは不幸中の幸いだった。


 ◇


 その後、大聖堂の一室から本物の教皇の遺体が発見された。

 遺体は腐敗が進んでいて、亡くなってからだいぶ時間が経っているようだった。

 やはり俺が想像したとおり、この半年間は偽物の教皇が教会を仕切っていたのだろう。


「ヒデオはいつから教皇のこと疑ってたの?」


「賜剣の儀の時だ。咳で誤魔化してたけど、あの時明らかに女神の名前を言い間違えた。そんなミス、本物の教皇だったらありえないだろ?」


「破壊の女神オブリビア……偽の教皇は、その名を言いそうになり、慌てて訂正したのだと思います」


 ハートランド王国の国教であるセレス教は、創造の女神セレスティアを信奉している。

 しかし、ごく一部の反セレス教徒たちは、自らを『オブリ教徒』と名乗り、破壊の女神オブリビアを唯一神として崇めているのだという。


「つまり、女神像に煌炎石を仕込んだのも、教皇に化けて大聖堂を魔香炉に変え、王都でスタンピードを起こしたのも……全部オブリ教徒たちの仕業ってことか……」


「ヒデオさん、偽教皇を操っていた者の名前……聞き出してくださったんですよね?」


「ああ。魔物使いのマルケーロフだ」


「その者が……ウィルの仇です!」


「明日の国葬が終わったら……俺は旅に出るつもりだ。港町アエリアへ……。マルケーノフは、そこにいる」


「ヒデオ、港町アエリアって……確か……」


「そうだ。アエリアには、ウィルが仲間にしたがっていた女剣士レベッカもいる」


「私も……お供させてください……」


「いや、でも……」


「お願いします!」


 青白い顔、そして痩せこけた頬……しかし、その目には決意の炎が燃えていた。


「断っても、付いてくる気だろ?」


「もちろんです」


「でもエリザ、旅に出る前にもう少し体調を整えておいてね」


「わかりました……」


 ウィル王子を失い、ずっと塞ぎ込んでいるより……こうやって立ち上がり、前に進もうとするエリザの方がずっといい。


 ……例えそれが、復讐という目的のためであっても……。


 ◇


 次の日――。


 王都の外れにある墓地で、国葬が執り行われた。 楽団が物憂いメロディを奏でる中、ウィル王子たちの棺が運ばれてくる。


「ウィル……」


 喪服に身を包んだエリザの碧い瞳から、止めどなく涙が流れている。 それを見て、俺もついもらい泣きをしてしまった。


 知り合ってからの時間自体は短かったけど……本当にいい奴だった。

 この異世界に迷い込んで、初めて出会った友……親友と言っても過言ではない。

 勇者ウィリアム=ブレイブハート……。 もっと長い時間を一緒に過ごしたかった。


 新しく任命された教皇は、若くてちょっと頼りない感じの男性だった。 しかし、それでも一生懸命、鎮魂の言葉を墓前に捧げている。


 その言葉を遠くで聞きながら……俺は心に誓った。

 涙を流すのは、今だけだ。 俺はこれから、勇者ウィルの代わりに『主人公』になる。


 もちろん、あいつの代わりが簡単にできるとは思っていない。

 でも、俺には勇者ウィルの『記憶』がある。 彼がこの先……どんな敵と、どのようにして戦ってきたのか……。


『セイクリッド・ハートランド』というゲームを、デバッグという仕事を通して、誰よりもプレイしてきた俺が全部覚えている。


 ウィル王子の遺志を継ぎ、俺は必ず魔王デオメットを倒す!


 ◇


 旅立ちを明日に控えた朝――


 ウィル王子の墓前に花を供えていると、背後に人の気配を感じた。

 静かに振り向くと、そこには……ウィルの父・ハートランド国王が立っていた。


「へ、陛下……」


「タケベ・ヒデオ殿だな?」


「な、なぜ私の名を?」


「生前、息子が嬉しそうに話してくれたものだ。『父上、私は良き友を得ました』とな……」


 ……こらえていた涙が……溢れてきて、止まらなくなった。

 良き友……そう、ウィルは俺にとっても、かけがえのない親友だった。


「ありがとう」


「……え?」


「王都を救ってくれたこと、この国の王として、心からの感謝を伝えたい……」


 そう言うとハートランド国王は、深々と頭を下げた。


「そんな、陛下……頭を上げてください」


「今は……王ではなく、一人の父親だ。ヒデオ殿……最後まで息子の友でいてくれて……本当にありがとう……!」


 言い終えて顔を上げた国王は、真っ黒に焼け焦げた金属塊を、俺に手渡した。

 それは間違いなく……賜剣の儀で見た勇者の剣の破片だった。


「陛下……これは……」


「旅に出るのであろう? 息子も一緒に、連れて行ってくれ」


「……わかりました」


 ……そうだな。

 勇者パーティには、やっぱり勇者ウィルが一緒じゃなきゃダメだよな。


「さぁ、行こう。港町アエリアへ……ウィル、お前が一緒なら心強いよ」


 勇者の剣の破片に、そう語りかけると……

 ウィル王子の人懐っこい笑顔が見えたような気がした。




面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価をいただけると、とても励みになります。


よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ