表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デバッグアルバイトのおっさん、転生して勇者となる。(デバゆう)~デバッグ知識で、異世界の壊れた運命を書き換える~  作者: うずまき鳥


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/94

絶望のスタンピード(4)

 魔物を蹴散らしながら大聖堂へと向かう。 見上げると、その上部から紫色の煙がもくもくと上がっていた。


「ヒデオ、この匂いは……」


「ああ。タルカスの村で見つけた魔香炉と同じだ」


「まさか……教会の連中があたしたちの村を?」


「それも確かめないとな」


 人々を救うはずの教会が、組織的にスタンピードを起こしていたとしたら……これはとんでもないスキャンダルだ。


「魔香炉は最上階だ。急ごう!」


「わかったわ!」


 大聖堂の扉を開けると、わらわらと魔物が出てくる。 しかし、今日一日で大幅にレベルを上げた俺たちの敵ではなかった。


「けほっ、けほっ! 中は煙がすごいね」


「窓を破壊しながら進もう」


「りょーかい!」


 精緻なステンドグラスを破壊するのは気が咎めたが、換気のためには致し方がない。 というか……不謹慎だけど、ちょっとこれ楽しいかも。


 様々な意匠を凝らしたステンドグラスが、俺たちの攻撃であっという間に砕け散る。 そして飛び散った破片が陽の光を浴びてキラキラと輝く……それがすごく綺麗で、ちょっとクセになりそうだ。


「ねぇ、ヒデオはセレス教徒じゃないの?」


「ああ。ウチは代々仏教だ」


「そっか、だからそんな楽しそうに大聖堂を壊せるのね……」


「あ、いや……俺はあくまで換気が目的で……」


「まぁいいわ。急ぎましょ」


 ――どうやら、楽しんでいるのがバレてしまっていたらしい。


 ◇


 大聖堂の最上階。 フロアの中心には、巨大な香炉が作り付けられていて、そこから紫色の煙がもうもうと吐き出されていた。


「大聖堂そのものが……巨大な魔香炉として設計されている……エリザの言葉、どうやら本当だったみたいだな」


「そ、そんな……」


 それはつまり、教会が組織ぐるみでスタンピードを起こしたということを意味する。 敬虔なセレス教徒であるアネモネにとって、それは信じたくないことだった。


「こいつを破壊するぞ」


「うん」


 しかし、それを阻む者がいた。


「おやめなさい」


「あなたは……?」


「教皇聖下!」


 大聖堂に教皇がいるのは、別に不思議なことではない。 しかし、これだけ魔物だらけの場所に、セレス教最高位の人物がいるのは、だいぶ違和感がある。


「なぁ、いつから教皇に化けていた?」


 俺はカマをかけてみることにした。


「ん? どういう意味ですかな?」


「この世界には、『ディセプター』という魔物がいる。そいつは擬態が得意なんだ。この魔物自体はそれほど強くないし、知能も低いから大した害はないんだが……魔物使いのスキルを持ったヤツに利用されると、ちょっと厄介なことになる。教皇、あんたはディセプターの化けた姿なんじゃないか?」


 もちろんこれも、デバッグで得た知識だ。 しかし、教皇は一切表情を変えない。


「女神よ……この者をお許しください……」


 そう言って目を瞑り、祈り始めた。 俺は構わずに続ける。


「この半年、教皇は公の場に姿を現す機会がめっきり減ったと聞いている。たまに顔を出しても、賜剣の儀の時のように必要最低限の言葉で済ましていた……それは、正体がバレることを恐れたためじゃないのか?」


「な、何を言っておられるのやら?」


「そしてこの半年の間に、大聖堂の改修工事が行われた。表向きは賜剣の儀に備えて……という名目だったが、果たしてどうなのかな?」


「だ、黙りなさい!」


「確か港町アエリアに、名の知れた魔物使いがいたな……名前は確か、マヌケーノフ?」


「し、失礼な! マヌケじゃありません! マルケーノフです! マ・ル・ケー・ノ・フ!」


急に甲高い声になって否定してくる。


「ふっ、わざわざ名乗ってくれてありがとう。マヌケーノフ」


「……あぐっ!」


「つまり、ここにいる教皇は、ディセプターが化けた偽物で、魔物使いのマヌケーノフが遠隔操作してるってわけだな?」


「な、何を言っておられるのやら?」


 また急に教皇風の口調になって誤魔化しようとしているが、もう手遅れだ。 名前通り(?)、こいつが間抜けで助かった。


「この期に及んで、まだシラを切る気か? だったら仕方ない。ディセプターが化けているかどうかは、こいつを使えばすぐにわかるからな」


 俺はアイテムボックスから塩を取り出し、教皇に振りかけた。


「ぷはっ! な、なにを……うごべばがはっ!!!」


 教皇の顔が、みるみる歪んでゆく。


 ディセプターはスライム系の魔物だ。 だから塩をかけると水分が奪われ、変身状態が保てなくなるのだ。


 あっという間に緑色のゲロ状になった“元教皇”を見下ろして、アネモネが冷たく言い放った。


「ヒデオ、こいつ倒しちゃっていい?」


「ああ、任せる」


 セレス教徒であるアネモネにとって、教皇に化けるというのは許しがたいことなのだろう。 握った短剣にいつも以上の力を込めて突き刺す。


「ぐげぎゃーーー!!」


 ディセプターは、一瞬で砕け散った。


「あたし、こんな魔物がいるなんて知らなかった。でもヒデオは正体の暴き方も知ってて……何でそんなに詳しいの? あ、これもやっぱり、守秘義務があるから言えない?」


「ああ。すまないな」


 いつかちゃんと、話さなきゃいけないだろうな……。 そう思いながら、俺はアネモネに声をかけた。


「さぁ! 魔香炉を破壊するぞ!」


「うん!!」


 こうして俺たちは、王都のスタンピードを鎮圧した。 ただ……そのために失った犠牲は、あまりにも多かった。



面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価をいただけると、とても励みになります。


よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ