異世界?転生?(2)
王都までの道すがら、俺はウィルたちから質問攻めにあった。
「旅人と聞いたが、どちらから?」
「すみません。どうも記憶を失ってしまったようで……」
「……友を亡くしたのだ。無理もないことだ」
勝手に納得してくれたが……正直、二階堂主任は友と呼べるような間柄ではなかった。
それなりにショックは受けているが、心底悲しいのかと聞かれると、実はそれほどでもないような気がする。 ……俺は案外、薄情な人間なのかもしれない。
そんなことを考えていると、エリザがすっと近寄ってきた。 金色の髪がふわっと揺れて、なんとも言えない良い香りが漂ってくる。
俺のドギマギした気持ちが伝染したのかもしれない。 エリザも頬を赤く染めて話しかけてきた。
「……あ、ごめんなさい。とても珍しい素材のお召し物ですわね、と思って……」
そう言われて自分の格好を確認する。 会社で着ていた服そのまま……上はフリース、下はGパンという普段着だ。
お洒落に気を使わない30男の典型的なファストファッションという感じなのだが、でも確かにこの中世ヨーロッパ風異世界にはふさわしくない格好だった。
「確かに高価そうな服だ。タケベ殿はおそらく、貴族の生まれではないか?」
「そうですね。苗字もお持ちでしたし……何より手を見ればわかります。スベスベとして、とても綺麗……羨ましいくらいです」
32年間肉体労働をせず、スポーツとも無縁で、ある意味だらしなく生きていた俺の手が、こんな褒められ方をするとは思ってもみなかった。
それにしてもエリザさん……ごく自然に俺の手に触れてきて照れるというか……。 あと、この位置からだと胸の谷間が見えて、非常に目の毒なんですけど……。
「?」
「いや……そ、その……」
「ひょっとして……谷間ですか?」
「え!?」
一瞬、俺の心が読まれたのかと思った。 しかし、エリザはすぐにこう続けた。
「あの森の奥に、エピン大渓谷という深い谷間があり、その向こうの土地は未探索です。タケベ様はひょっとして、谷の向こうから来られたのではないでしょうか?」
「なるほど。それなら文化が違うのも納得だな」
「そ、そうなのかも……しれませんね……」
なんかすごい誤解されてるような気がするけど、記憶喪失という設定だから否定もできず、曖昧に頷くしかない俺だった。
しばらく歩くと、遠くに王都が見えてきた。
「タケベ殿、街はもうすぐですよ! ……キャッ!」
はしゃいで走り出したエリザが、石に躓いて転びそうになる。
「危ない!!」
俺は咄嗟に手を伸ばし、エリザの体を抱え込んだ。 おかげで転倒を防ぐことができたのだが……。
たゆんっ!
必死で手を伸ばした結果、俺の右手は意図せずエリザの巨乳を鷲掴みしていた。 温かくて、信じられないくらい柔らかい。
「あ、あの……た、タケベ様?」
「わぁ! す、すみません! わざとじゃないんです!」
慌てて手を離す。俺もエリザも顔が真っ赤だった。 ひとり能天気なウィルが……。
「いやぁ、エリザ。転ばなくてラッキーだったな。まさに、ラッキータケベだ! はっはっは!」
……いや、これは本当の意味での、まごうことなきラッキースケベだ。
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