死の真相(1)
ウィル王子が死んだ……。
おそらく、何者かの手によって殺されたのだろう。 ……でもいったいなぜ?
結局、この事件では20人の怪我人が出た。 しかし、死亡者は奇跡的にウィル王子ただ一人だった。
爆発した女神像から一番近い位置にいた国王と教皇は軽い怪我ですんだ。
……と言うより、危険をいち早く察知したウィル王子が国王と教皇を庇い、自らの命を賭して二人を救ったことが側近の証言によって明らかになった。
「ウィル王子らしい……最期だったんだな……」
口ではそう言いながらも……俺の心の中には、複雑な気持ちが交錯していた。
確かに国王も教皇も、この国にとって大切な存在だ。
しかしこの国の未来にとって、本当に大切なのは……ウィル王子だったはず。
いや、命の価値を比べるのは傲慢なのかもしれない。 実際ウィル王子は、そんな打算など一切無く、目の前の命を救おうとしたのだと思う。
◇
しかしこの国にとって……いや、この世界にとって……彼の死はあまりにも大きすぎる。
そしてそれは、俺自身にとっても同じだった。
この世界に来て、最初の友。 尊敬し、信頼する仲間を失い、心の中に大きな穴が空いてしまった。
そして、俺たち以上にショックを受けているのはエリザだった。 彼女はウィル王子の死体に回復魔法をかけ続け、やがて魔力切れで気絶した。
意識を取り戻した後も、心ここにあらずといった様子で、見舞いに来た俺たちの顔を見ても無反応だった。
子供の頃から、ずっと同じ時間を一緒に過ごしてきた相手の死……俺には想像ができない。
「ねぇ、ヒデオ……あたしたち、エリザに何ができるかな?」
見舞いの後、アネモネが心配そうに聞いてきた。 俺には、こう答えることしかできなかった。
「……今は……時間が必要なんだと思う」
どんな悲しみも、時が経てば少しずつ癒えてゆく……。 32歳の俺は、それを経験として知っている。
例え今立ち止まっていても……生きている俺たちは、必ず前を向いて歩き出さなければならない。 そのためにも、今は時間が必要だ。
◇
しかし……そんな時間なんて、あるのだろうか?
ゲームのハートランド王国では、王都でスタンピードが起きた。
そして、そのとき大活躍をした二人……ウィル王子は死亡し、エリザも戦える状態にない。
「アネモネ、ミネア……つらいだろうけど、今は俺たちの力でこの状況をなんとかしなくちゃいけない」
「そうね。エリザと……ウィル王子のためにも……今あたしたちが頑張らなくちゃ!」
「まかせてくださいにゃん!」
……そう。今は無理矢理でも前を向き、一歩ずつでいいから足を動かす! 王子の死を悲しむのは、そのあとでいい。
「ひとつだけ……ずっと引っかかってることがあるんだ。もう一度、あの鉱山に行く。みんな付き合ってくれ」
「はいですにゃん!」
「ええ。わかったわ」
そう。俺には、どうしても確かめなければならないことがあった。
◇
タルカスの村にある鉱山に【FAST_TRAVEL】で移動する。 『この先、火気厳禁!!』と書かれた看板がある地点だ。
「アネモネ、この鉱山はもともと何が採れたんだ?」
「あれ? そう言われれば……何の鉱山だったんだろ? 石炭? 金属? 子供の頃に閉鎖されちゃったから、あんまり覚えてないのかも……」
「覚えてないというより、もともと知らされていなかったという可能性は無いか? 例えば、何か危険な物が採れるとかで秘密にされていたり……」
「そ、そうかな?」
「ミネア、光魔法の明かりを、もう少し強めてくれ」
「はいですにゃん!」
そのまま瓦礫で塞がれた場所まで歩く。
前回、ここを『行き止まり』と決めつけてしまったが、俺の予想ではどこかに通路があるはずだ。
「壁を叩いたり、岩を押したりして、抜け道を探してくれ」
「あれ? ここは……?」
見ると、大岩の向こうに狭い隙間がある。 人一人なら入れそうな隙間だ。
身をかがめて進むと、広い場所に出た。 ミネアの到着を待って光魔法で照らすと……。
「うわぁ!」
「す、すごい……」
タルカス鉱山の最奥部――。 そこは、壁のあちこちに深紅の宝石が埋まっていた。
「これは……煌炎石ですにゃん」
「煌炎石の鉱山なら、秘密にされていたのも納得だな」
強力な火魔法の力が込められた石。それが煌炎石だ。 これを使えば、誰でも魔法の力を発動できる。
これまで炎の力を持つ煌炎石と、氷の力を持つ煌氷石が見つかっていて、いずれも道具屋で買うことができる。
効果はそれなりに大きいが、使い切りだし、値段も高いので、ここぞという時に使うアイテムだ。
「綺麗ですにゃん」
「……確かにな。でも、とんでもなく危険な石だ」
そのとき――。 アネモネが何かに気付いて泣き出した。




