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デバッグアルバイトのおっさん、転生して勇者となる。(デバゆう)~デバッグ知識で、異世界の壊れた運命を書き換える~  作者: うずまき鳥


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勇者誕生の日(1)

 この世界では、ほとんどの人々が創造の女神セレスティアを信奉する『セレス教徒』だ。

 王都には立派な大聖堂がそびえ立ち、街のシンボルとなっている。


 勇者は女神セレスティアの使徒という位置付けなので、賜剣の儀も国王立ち会いの下、この大聖堂で教皇が式を執り行うこととなっている。


 俺たちは昨日買った服に着替え、みんなで大聖堂へと向かった。


 ◇


「ヒデオさん、その礼服とてもよく似合ってますよ」


「お、おう」


 今日はエリザも同行している。 純白のドレスを身に纏った姿は、まるで白百合のように清楚だ。

 そんな綺麗な女の子から急に服を褒められ、妙にドキドキしてしまう。


「でも本当に不思議……泣き虫だったウィルが、勇者になるなんて……今日は忘れられない一日になりそうですね」


 以前からなんとなく感じていたのだが、エリザにとってウィル王子は、可愛い弟的な存在なのかもしれない。


 そう考えると以前王子から聞いた『10回告白して、11回振られた』という話にも納得がいく。


 年齢的にも、ウィル王子は23歳でエリザが24歳。 年の差は1歳だけだが、子供の頃の1歳差は特に男女だとすごく大きい。


 ……ちょっと二人の恋の行く末が心配になってきたが、ゲーム世界のシナリオ通りなら、スタンピードがきっかけで仲が深まるはずだから、きっと大丈夫だ。


 ◇


 みんなでガヤガヤと話しながら大聖堂に入る――。 すると、空気が一変した。

 そこは荘厳な空間だった。 高い天井から光の帯が伸び、正面にある女神像を照らしている。


 神聖で厳かな時間が流れる場所……。

 他のみんなは、通い慣れているせいか普段通りの様子で大聖堂の中に入ってゆく。 しかし、さっきまでのお喋りはピタッと止まり、真剣な表情になっている。


 俺もこの大聖堂は、ゲームで何度も出入りしている。 しかし、実際にリアルで入った印象は全然違っていた。


 ……なんか、圧倒される。

 この大聖堂自体が、人々の信仰心を高めるための装置として設計されているような……そんな気さえしてくる。


 ウィル王子の関係者ということで、俺たちは比較的前の方の席に案内された。 ここからだと、女神像がさらに神々しく見える。


 そのとき――。 聞き慣れた音楽が流れてきた。

『セイクリッド・ハートランド』のテーマ曲『女神に祝福されし大陸』だ。 クラシック風の威風堂々とした楽曲で、俺も大好きな名曲だ。

 天才作曲家ジャスティス・タナカの代表作とも言われている。


 見ると大聖堂右奥に楽団が座っている。 10人ぐらいの編成だが、聞こえてくる音はものすごく重厚だ。


 この曲を生演奏で聴けるなんて……最高だ。


「まさに、リアル・オケコン(オーケストラ・コンサート)だな」


「え? 今何て言ったの?」


「あ、いや……ただの独り言だ」


 ◇


 名曲『女神に祝福されし大陸』の演奏が終了すると、祭壇に国王が立った。

 ハートランド国王・ブライアン=ブレイブハート……ウィルの父親だ。 この国の礎を築き上げた賢王として名高い。


 軽くウェーブのかかった金髪と、立派な口髭、そして鋭い眼光。 まさに王の風格を漂わせている。


「これより、賜剣の儀を執り行う!」


 よく通る低音が響いた直後、楽団がファンファーレを奏で始めた。

 同時に教皇が聖剣『ブレイブソード』を恭しく掲げ、入場してくる。

 教皇は最近、体調面に不安があるとの噂だ。 実際、今日も時々、小さく咳をしている。


「……ごほん、王子ウィリアム=ブレイブハートよ。こちらへ」


「ははっ!」


 教皇の前にウィル王子が立つ。 いよいよ勇者誕生の瞬間だ。


「創造の女神オブ……ごほん、女神セレスティアの名の下に、汝にこの聖なる剣を授ける!」


 王子がブレイブソードを掲げると、剣から光が溢れ出した。

 光はやがて王子の右手に収束してゆき……やがて紋章を形作る。 翼を広げた竜の姿の紋章だ。


「おお! これぞ勇者の証!」


 大聖堂に集まった人々が、一斉にどよめく。 王子の右手甲に刻まれた竜の紋章は、離れた位置からもはっきりと見えた。


「勇者誕生だ!」


「勇者ウィル万歳!!」


 ハートランド王国を救う勇者が、今ここに誕生したのだった。


「今、俺たちは歴史的な瞬間に立ち会っているのかもしれないな」


「はい!」


 エリザの瞳に浮かんだ涙が、宝石のようにキラリと輝いた。

 



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