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デバッグアルバイトのおっさん、転生して勇者となる。(デバゆう)~デバッグ知識で、異世界の壊れた運命を書き換える~  作者: うずまき鳥


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王都、そして勇者の儀(6)

 その日の夜――。 宿に珍しいお客さんが現れた。


「ウィル王子! それにエリザ!」


「明日賜剣の儀なのに、大丈夫なの?」


 驚く俺達の顔を見ながら、ウィル王子は悪戯いたずらっ子っぽく笑っている。


「エリザが手伝ってくれたおかげで、準備はもう全部終わった。あとは、式典当日を迎えるばかりだ」


「こんな遅くにごめんなさい。ウィルがどうしても皆さんのところに顔を出したいって言って……」


「歓迎するよ」


「せっかくだから、みんなで前祝いでもしようと思ってね」


 そう言うとウィル王子は、高価そうなワインの瓶を見せた。


「さすが王子! 気前良いじゃん!」


「グラス用意しましたにゃん」


「あの……あんまり飲み過ぎないように……」


「ははは、大丈夫だって!」


「それじゃみんな、準備はいいか?」


 俺が音頭を取って、乾杯することとなった。


「勇者ウィルの誕生に……」


「「「乾杯!!!」」」


 俺はワインには詳しくない。 それでも思わず「うまい」と声を上げてしまうくらい芳醇な味わいの赤ワインだった。


 ……それにしても、不思議なものだ。

 異世界に飛ばされ、たった一人で野垂れ死んでもおかしくない状況だったのに……いつの間にか、こんなにもたくさんの仲間に囲まれている。


 上等なワインのせいか、この日のウィル王子は、いつになく饒舌だった。


「みんな聞いてくれ。明日は私が、勇者になる日だ」


「おめでとう王子!」


「ありがとう。確かに勇者の誕生はめでたい。明日は国を挙げての祝祭日となる。……しかし、これは単純に喜ばしいことだけではないんだ。勇者の誕生は、魔王が降誕する先触れでもあるのだから……」


 魔王――。


 その名を聞いて、賑やかだった部屋が一瞬でしんと静まりかえった。


「魔王って、魔王デオメットのこと?」


「おとぎ話で読みましたにゃん」


「そう、今ではもう神話になってしまうほど遠い昔の話だ」


 ウィル王子が目配せをすると、エリザが語り始めた。


「この地ハートランドは、創造の女神セレスティア様によって造られました。しかし、強い光には必ず影が生まれるように……天地創造と同時に、破壊の女神オブリビアが産み出されてしまったのです」


「その破壊の女神の使徒が、魔王デオメット。800年に一度現れ、この世界を滅ぼす『冥王の剣』をふるうと伝えられている」


 ウィル王子は真剣な表情で、俺達の目を一人一人見据えながらこう言った。


「みんな。私は勇者として、魔王デオメットを倒す! それが私の使命なんだ。だから……力を貸してくれ!」


 そうか……王子は俺たちにこれを伝えるために、わざわざ来てくれたのか……。 だとしたら、俺の答えはもう決まっている。


「もちろんだ。王子、俺にできることなら何でも言ってくれ」


「ありがとう、ヒデオ」


 がっしりと握手をする。 彼の手は力強く、でもほんの少し震えていた。


「あたしも力になるよ。王子」


「アネモネ。よろしく頼む!」


 ゲーム世界では敵同士だった二人が、今こうして握手をしている。 なかなか熱い展開だ。


「私もお手伝いしますにゃん」


「ミネア、心強いよ」


 長く冒険者をしているウィル王子は、俺達以上にミネアとの親交が深いようだ。


「今日は勇者パーティの結成式ですね」


「そうだな。エリザ、これからも私を支えてくれ」


「……はい!」


 エリザは少し涙ぐんでいるようにも見える。 幼なじみとして、ずっと隣にいたウィル王子の成長を誰よりも喜んでいるのだろう。


 魔王デオメット――。 その存在は、当然俺も知っている。

 というか、『セイクリッド・ハートランド4』のラスボスだ。 デバッグで何度も倒しているが、正直かなり凶悪な敵だ。


「それで? ウィルはどうやって、魔王を倒すつもりなんだ?」


「今のままじゃ到底叶わない。だからみんなでもっと強くなる。そして仲間を増やす! まずは王都を南下して港町アエリアに行き、女騎士レベッカを仲間にしようと思う」


 女騎士レベッカは、セイクリッド・セブンの一人だ。 素早さに特化した二刀流の騎士で、非常に優秀なアタッカーだ。


 黒髪ロングのクール系美女として、発売前人気投票でも常に上位に選出されている。


 ひとつ懸念があるとすれば……実は『女騎士』という言葉にも倫理的な問題がある。これもジェンダー的な配慮で、わざわざ『女』と付いているのは、『騎士は男』という決めつけが背景にあるからで……いや、ここは気にする必要ないか。


 ……とにかく! これで、いよいよゲーム世界のシナリオ通りになってきた。 これからは、俺がデバッグで培ったゲーム知識を存分に役立てることができる。


「でもその前に、王都で起こるスタンピードをなんとかしなくちゃな」


「ああ、もちろんだ」


 シュミット爺は死んだし、王都中を探しても魔香炉は見つからなかった。 しかし、俺には確信のようなものがあった。


 スタンピードは必ず起こる。 ウィル王子も、それを信じてくれたようだ。

 まぁ、勇者ウィルと俺達が力を合わせれば、どんな困難だって払いのけてみせるさ。


 スタンピードを収束させ、仲間を増やし……俺達は必ず、魔王デオメットを倒す!




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よろしくお願いいたします。

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