↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デバッグアルバイトのおっさん、転生して勇者となる。(デバゆう)~デバッグ知識で、異世界の壊れた運命を書き換える~  作者: うずまき鳥


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/96

王都、そして勇者の儀(2)

 三日後、教会の大聖堂で『賜剣の儀(しけんのぎ)』が執り行われることとなった。

 これは、国王からウィル王子に家宝である『ブレイブソード』が授けられるという儀式で、この儀式によってウィル王子は正式に勇者となるのだ。


 ウィル王子とエリザは、その準備に忙しくなるため、俺はしばらくの間アネモネと二人で行動することになった。


「まず最初にするべきなのは、アネモネが貯めた魔石の換金だな」


「でも今、冒険者ギルドは閉鎖されてるんじゃない?」


「いや、換金だけは、ミネア嬢が窓口を開いてくれてるらしい」


「わぁ、それすっごく助かるね」


 ◇


 早速、冒険者ギルドへと向かう。 建物の中は、がらんとしていた。


「あ、タケベさんにアネモネさん、いらっしゃいませにゃん!」


「こんにちは〜」


「ミネアは元気そうだな」


「お客さん、全然来なくて退屈でしたにゃん」


「じゃあ、これを換金してくれ」


 俺はアイテムボックスから、大量の魔石を取り出し、受付の机に積み上げてゆく。


「ええええ!? こんなにたくさんの魔石、初めて見ましたにゃん」


「アネモネが何年もかけて集めたんだ」


「すごいですにゃん! でも……こんなにあったら、金庫のお金が無くなっちゃいますにゃん」


「じゃあ、限度額ギリギリで」


「ふぇ〜! タケべさん、猫使いが荒いですにゃん!」


 持っていた魔石の2割ぐらいを換金し、アネモネは結構な大金を手に入れた。

 しかし、金庫が空になってしまったことで、ギルド閉鎖中に唯一行われていた換金サービスも、あっという間に中止となってしまった。


「お仕事、無くなっちゃいましたにゃん」


「じゃあ、このお金使って、みんなでぱーっと豪遊しようよ!」


「いや、それはさすがに……」


「いいのいいの。ほら、ミネアも行こう、あたし案内するわ」


「にゃにゃ、尻尾を引っ張らないでくださいにゃん!」


 ◇


 アネモネが案内してくれたのは、フルーツバイキングのお店だった。

 入り口でお金を払った後は、テーブルに山積みされた果物が食べ放題! ……夢のようなお店だ。


「す、すごいですにゃん!」


「うわー! 美味しそう! あたし、一度ここに来てみたかったんだー」


 色とりどりのフルーツ。 しかし、日本のスーパーに並んでいる果物とは、ちょっと違う感じだ。


 オレンジに似た赤い果実や、リンゴに似た白い果実、トゲ付きのバナナに、やたら縦に長いイチゴ……。 確かに美味しそうではあるけど、味が想像できない。


「「いっただきまーす!」」


 うん。女の子が美味しそうにフルーツを食べる姿って、すごく絵になる。 俺も長ヒョロいイチゴを手に取り、一口齧ってみた。


 ……こ、これはちょっと酸っぱいのではないか?


 甘味は確かにあるのだが、それ以上に酸味が強すぎて耳の下辺りが「キュッ」と痛くなる。 不味くはない。よく言えば爽やかな味だ。でも悪く言えば……梅干しにお酢をかけたくらいすっぱい。


 次にトゲ付きのバナナを食べてみる。 怪我をしないように慎重に皮を剥いて、口に運ぶが……これは妙にぼやけた味がする。

 バナナと言うより、蒸したサトイモ寄りの何かだ。あるいは、臭いの無いドリアン?


「ヒデオさん、それすっごく美味しいですよね? 私、大好きですにゃん!」


「う、うん。うまいよ」


 猫耳幼女に同意を求められ、肯定せざるを得なかったが……正直、全部微妙な味だ。

 おそらく、この世界の果物には品種改良という概念がないのだと思う。 全部、原種って味がする。 ……まぁ、別に植物について詳しいわけではないので、あくまでイメージだけど。


「店主、厨房を貸してくれないか?」


 気がつくと俺は立ち上がり、思わずグルメ漫画の主人公のようなセリフを口にしていた。


「い、いいですけど……何を?」


「まぁ、見ててくれ」


 皮を剥いたフルーツを一口大に切り、鍋に水と赤ワインを入れ砂糖を投入。 砂糖が溶けたらフルーツを入れて10分ほど煮る。


「ゴクリ、いい匂いがしてきましたにゃん」


「すごい。ヒデオって料理もできるんだね」


「まぁ、一人暮らしが長かったからね。さぁ、できた! ほんとは冷やしたほうが美味しいのだけど、氷なんてないよね?」


 しかしここで、ミネア嬢が意外なことを言い出した。


「あ! 私、氷魔法が使えますにゃん!」


「じゃあこの鍋を軽く冷やしてくれ」


「わかりましたにゃん!」


 こうして、冷え冷えの『フルーツコンポート』が完成した。


「うわっ! 何これ、冷たくて甘くて……最高!」


「私、こんな美味しいもの初めて食べましたにゃん!」


 酸っぱすぎた果物や、ぼんやりとした味の果物が……なんと言うことでしょう! 一緒にシロップで煮ることで、それぞれの欠点を補い合った最高のデザートとなったのです!

 ……俺の脳内で、某サザエさん声優の声が鳴り響いている。


「うまい! うますぎる!」


「うん、十万石まんじゅうを超えてるよ」


 ……いや、だからなぜそれが通じるんだ?


 俺たちが大騒ぎしながら食べていると、他のお客さんたちも興味深そうに集まってきた。


「よかったら皆さんでどうぞ」


「ヒデオさん特製の新デザートですにゃん!」


「いや、果物を煮て、冷やした食い物なんて……」


「うん。そんなもの美味うまいわけが……わけ……が……あれ? う、美味いぞーーーー!!!!」


 最初は恐る恐る口に運んでいたお客さんたちが、いつの間にか争うようにがっつき始め、俺たちの作ったフルーツコンポートは、あっという間になくなってしまった。


「もっと食わせてくれ」


「いや、でもお店の人に許可をもらわないと……」


「許可します! いえ、お願いします!! 店にあるありったけの果物を、煮て煮て煮まくってください!!!」


 それからはまるで、戦場のような大忙しだった。 みんなで果物の皮を剥き、大鍋で煮込み、ミネア嬢が氷魔法で冷やす。


「ふにゃぁ……もう、魔力が尽きましたにゃん」


「安心しろ。マジックポーションがある」


「ふぇぇ……ヒデオさんやっぱり、猫使いが荒いですにゃん!」


 俺たちのフルーツコンポート作りは、深夜まで続いた。


 ◇


 夕方ぐらいから持ち帰りのカウンターを設置したのだが、口コミの評判があっという間に広まり、いつの間にか長蛇の列ができていた。


「いらっしゃい、いらっしゃい! 冷たくて甘い新デザート! ヒデオスペシャル絶賛販売中ですよー!」


 売り子をしていたアネモネが、勝手に『ヒデオスペシャル』なんていうプロレス技のような名前を付けたせいで、王都ではすっかりこの名前が定着してしまった。


 それからしばらくして――このデザート『ヒデオスペシャル』は店の名物となり、店主は巨万の富を得たという。


 店には今でも俺をモデルにした等身大の人形が『ケンタッキーの白い人』みたいに立っている。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。