リアラの魔道鏡(5)
「ここがウィル王子の隠れ家かぁ……」
着替えが終わった頃を見計らって、俺たちは部屋に戻った。
気が付くと壁に飾られていたはずのエリザの肖像画が外されている。 どうやら、本人に見られるのは気恥ずかしいらしい。
「あれ? あそこに絵がかかってなかった?」
「え? そ、そうだったか?」
空気を読めないアネモネの質問に、明らかに動揺するウィル王子。
「そんなことより、今日の段取りを話し合おう」
俺が助け舟を出すと、ウィル王子は明らかにホッとした表情になった。
「そ、そうだな。まずは私が一人でギルドに行き、ギルドマスター殿に会う。タルカスの村で見つけた魔香炉の話を匂わせれば、奴は私がどこまで知っているかを把握したがるはずだ」
「相談を持ちかけるという体で、例の闇酒場に行ってくれ。そこでシュミット爺と長話してもらって、その隙に俺たちがギルドに行き、ミネア嬢に会って『リアラの魔道鏡』を使ってもらう」
「これでようやく、あたしの身の潔白が証明されるってわけね」
「はい。私が立会人となります」
「できれば、シュミット爺にも魔道鏡を使って、奴が黒ってことを証明したいところだが……」
「では、タイミングを見計らって、ギルドマスター殿を連れて戻ろう」
◇
夕方になるまで、俺たちは隠れ家で過ごした。
「さすが王族。ちゃんと味がする紅茶を出してくるわね」
「アネモネさんのお家で頂いた紅茶も、温かくて心がホッとしましたよ」
「お、温度しか褒めてないじゃん!」
「うふふ。バレちゃいました?」
昨日の夜一緒に過ごしたせいか、エリザとアネモネもだいぶ仲良くなっているようだ。
「男の人の部屋に来たのって、あたし初めてかも」
「実は私もです」
「男の子ってさ、ベッドの下に、エッチな本とか隠してるんだよね?」
「え? そうなんですか?」
「確かめてみようか?」
「や、やめてあげてくれ」
多分、ベッドの下にはエリザの肖像画が隠されているはずだ。 それが見つかったらだいぶ気まずいので、俺は二人を全力で止めた。
……っていうか、この時代にエロ本ってあるのか? 印刷技術は発達していないはずだから、写本のエロ本? エロ写本? ……なんかすごく好奇心を刺激される題材だ。
夕方になって、ウィル王子はひと足先に隠れ家を出て行った。 しばらく時間を潰した後、俺たちもギルドへと向かう。
念の為、お尋ね者のアネモネにはフード付きの服を着せてある。 ウィル王子の私服なので、だいぶサイズが大きいが、それはそれで彼シャツ? いや彼パーカー? みたいで可愛らし……いや、これから大事なミッションがあるのだから、もう少し真剣に取り組もう。




