リアラの魔道鏡(3)
王都の外れにある小さなログハウス。 それがウィル王子の隠れ家だった。
こんな建物、ゲーム世界では登場していなかった。 内装も、王族が住んでいるとは思えないほど質素なものだった。
「ようこそ我が城へ」
その声は弾んでいて、王子がこの部屋を気に入っていることがすぐにわかった。
「いい部屋だな」
「ああ、ここが一番落ち着くんだ」
「事情を聞いても?」
「知っているかどうかわからないが、俺は五年前に亡くなった第一王妃の息子だ。そして今、王宮は第三王妃が取り仕切っている。そこから先は察してくれ」
ゲーム世界では決して語られなかったが、王子は王子で、色々と難しい立場らしい。
ふと壁を見ると、見慣れた少女の肖像画が飾られていた。
「この絵は……エリザか?」
「まぁな。俺は子供の頃からずっと、彼女に片思いしてるんだ」
実はもうちょっとすれば、二人は恋人同士になるのだが……せっかくのお楽しみをネタバレするのは悪いと思い、黙っていることにした。
「告白とか、しなかったのか?」
「10回告白して、11回振られた」
「か、数が合ってないぞ?」
「俺が10歳の誕生日……エリザに初めての告白をしたんだ。その時、彼女にこう言われて振られたよ。『私はもっと痩せてる人が好き』って……あの頃は、肥満児だったからな」
「へぇ、意外だな」
「それで、一年かけてダイエットに成功して、11歳の誕生日にもう一回告白したら、今度は『私はもっと強い人が好き』って言われて……それで俺は剣を習うことにした。そんな感じで、彼女の理想像に近づくために、勉強したり特訓したり……それが10年続いたんだ」
――意外だった。
生まれついての完璧超人だと思い込んでいたウィル王子が、実は努力の人で、好きな女の子に振られるたびに、自分の弱点を克服していったなんて……。
「で、11回目に振られたって話は?」
「俺が21歳の誕生日の前日……つい最近の話だが、『今はまだ、付き合うとかよくわからないから、告白しないで』って言って振られたんだ……でもこれって、大きな進歩だよな。10年かけて、俺はようやく彼女から欠点を指摘されなくなったんだぞ?」
――も、ものすごく前向きな考え方だ。
でも、そのくらいメンタルが強くないと、主人公なんてやってられないのかもしれない。
「それで? ヒデオはどうなんだ? 好きな女性は?」
「いや、俺はもういい歳だし……」
「恋に年齢など関係ないぞ?」
「まぁ、そうかもしれないけど……」
「恋は人を強くし、人生を豊かにする! ヒデオも恋をすべきだ!」
……ウィル王子、酒が入るとちょっとめんどくさくなるな。
でも、『恋が人を強くする』って言葉は、さっきの実体験を聞いた後のせいか、ものすごく説得力があった。




